北村の政治活動

 (平成13年10月1日) 同時多発テロの脅威 法整備に全力投球

 さながら映画の特撮シーン。ニュースの時間帯に航空機自爆テロと摩天楼が崩壊する大惨事がリアルタイムで映し出された。爆発性の高いジェット燃料を満載した民間航空機を奪って、時速300キロで激突する凄まじい破壊力。一瞬にして6千人以上の罪のない乗客、市民を犠牲にしたこの無法、悪逆非道の新たなテロは、世界を震撼させた。ブッシュ米大統領は「21世紀の新たな戦争」であると報復を誓い、各国首脳もこれに同意、世界の平和を脅かす国際テロ組織を包囲する広範な国際社会の共同戦線が急速に構築された。

 佐世保の艦船も派遣

 小泉首相はすかさず7項目にわたる同時多発テロの対応策をまとめ、9月25日の日米首脳会談で米大統領に「日米連帯でテロを根絶する」との協力・支援を申し入れた。この対応策に沿って、海上自衛隊佐世保地方総監部は所属艦船をインド洋に派遣する準備に入った。臨時国会にはテロ対応に限定した新法と自衛隊法改正案が上程されるが、米軍の後方支援に絡め共同作戦行動、集団自衛権などを巡る論争が与野党間で活発に展開されそうだ。

 主体的に取り組む7骨子

 政府のテロ対応措置は@米軍等への医療、輸送・補給などを目的に自衛隊を派遣するために諸要措置を講じるA国内の米軍施設や、わが国の重要施設の警備強化B情報収集のため自衛隊艦艇の派遣C出入国管理で国際的な情報交換の強化Dパキスタンやインドへの緊急経済支援E自衛隊による人道支援を含めた避難民支援F経済システムの混乱を生じさせないための各国との強調――の7つが骨子。日本は湾岸戦争当時、130億ドル(当時の1兆7千億円)の巨額資金を支援したが、憲法の制約で人的貢献ができなかったため、各国からは「ツーレート、ツーリトル(遅く少なすぎる)」と批判された。今回はその轍を踏まないよう早急、主体的に取り組む対応措置を決め、日米同盟の信頼関係を強く訴えたものだ。米国は「ショー・ザ・フラッグ(日の丸を見せろ)」と、暗に自衛隊の派遣を迫っている。

 周辺事態法に準拠

 7項目では、情報収集のため海上自衛隊佐世保基地からのイージス艦派遣や、首相が米大統領に約束したパキスタンへの47億円の経済支援など、現行法で可能な措置も多い。しかし@の後方支援、つまりテロ組織に対して軍事行動を起こす米軍への自衛隊の支援・協力については新法の制定が必要。新法は自衛隊の支援活動として医療、補給、輸送、修理・整備、通信などが盛り込まれ、日本周辺有事の際の米軍への支援を定めた「周辺事態法」に準じた内容が検討されている。事態の緊急性から当初は議員立法で早期成立を図ることも検討されたが、集団自衛権の憲法解釈など政府答弁が不可避なことから、政府提案に落ち着いた。

 集団自衛権に絡む

 現行の周辺事態法は「持っているが、行使できない」とする集団自衛権に関する政府の憲法解釈により、「武力行使と一体化する支援は出来ない」「地球の裏側まで周辺地域とはいえない」など色々な制約があり、現実に対応できない部分が多い。新法ではテロ解決までの時限立法とするか、支援活動に現行法で禁止の武器・弾薬輸送、空中給油も含めるかなどが焦点とされるが、集団自衛権や共同作戦行動に絡むだけに国会では大きな論議を呼びそうだ。

 自衛隊法も改正へ

 Aの重要施設の警備強化は、自衛隊法の改正が必要。現行法では平時の国内警備は警察が担当、自衛官には平時に武器を持って警戒・監視に当たる「領域警備」の任務はない。99年3月の北朝鮮工作船による領海侵犯事件でも自衛隊は有効に対応できなかった。自衛隊法によると、首相は緊急事態に治安出動を命令できるが、命じた日から20日以内に国会の承認を受けるなど、治安出動のハードルは高い。そこで防衛庁は今国会に@治安出動を命じられた自衛隊が、従来は多人数の相手しか使えなかった武器を、少数の相手でも使用できるA治安出動前でも、自衛隊が情報収集の目的で武器を携行し出動できるーーなどを柱とする自衛隊法改正案を準備していた。それが米国の多発テロで同法改正の機運は高まった。

 国会、皇居は範囲外

 問題は自衛隊が警備する重要施設の範囲。当初案では政治中枢の首相官邸や国会、原発などが検討されたが、自民党の有力者までが「国会や皇居を自衛隊が守るようでは、平時の戒厳令発動と同じだ」「日本を防衛してもらう米軍施設を自衛隊が守るとは滑稽千万」などと反発した。結局、与党首脳会議では、国会、官邸、皇居、原発などを外し、米軍基地と自衛隊施設に限って警備することで一致した。だが、自衛隊が警備任務についた場合、自衛隊と警察の指揮・命令系統をどう一元化するか、など煮詰める点は多い。

 平和ボケの共、社

 Eの自衛隊の人道支援にしても、アフガニスタンからの難民は600万人が予想され、平和維持のPKO協力法を拡大するか、または後方支援の新法に自衛隊医務官の派遣や難民対策などを包摂するかがポイントになる。後方支援新法の制定、自衛隊法改正について野党側は、民主党が国連決議を前提に基本的に賛成の方向だが、自由党は集団自衛権に名分の立つ法整備を主張している。共産党はテロ根絶に国連憲章、国際法など“法にもとづく裁き”を唱え、新法制定などには反対、社民党も「犯人の証拠を上げるのが先、報復は連鎖テロを呼び泥沼化する」などと法整備に反対、中立で国を守ろうとする“平和ボケ”の姿勢である。

 「十字軍」対「聖戦」

 多発テロの首謀者と見られるイスラム過激派指導者のオサマ・ビンラディン氏は、唯一の
超大国となった米国の繁栄と総資本のシンボルであるニューヨークの国際貿易センターと、国威の象徴である国防省を同時攻撃した。イスラエルに加担する米国人は無差別殺戮せよとも唱えている。イスラム原理主義者は、中東、アフリカの貧困が先進国の資源収奪、市場独占に原因があると見る。従って次の標的は、世界第二の経済大国で、テロに無防備の日本が狙われるかも知れない。その場合、国連や国際道義だけが頼りの共、社両党はどう対応するのか。神学校を意味するアフガンのタリバーン政権は、米国が現代の「十字軍」として報復攻撃に踏み切る場合は「ジハード(聖戦)を発動する」と身構えている。モスクの地下の神学校には貧しい難民の子らを集めてイスラム社会の平等を説き「アラーのために自分を犠牲にするのは殉教者の誇り」と爆弾自爆テロの戦闘訓練まで行っているという。

 山岳の“雪豹”が相手

 ニューヨークのテロでは英国500人、ドイツ300人、中国ですら50人の近親者が犠牲に遭ったとされ、テロ撲滅の国際連帯は一気に強まった。だが、米国が対ベトナム戦で地下に潜むゲリラに悩まされたように、アフガンは旧ソ連軍が対ア戦で手を焼いた山岳地帯。
近代兵器も使えず、急峻な山陰に出没する“雪豹”を相手に戦うようなもの。また、国際テロ組織も世界には60ヶ所もあるといわれ、“見えない敵”がサリン事件のような生物・化学兵器を使ったり、冷戦後、中東に拡散した小型核弾頭で奇襲攻撃されたら市民の被害はニューヨーク以上になる。連鎖報復合戦は文明戦争にエスカレートし際限なく続きそうだ。

 テロの入国防止できるか

 まして日本は海岸線が延びきっていて、北朝鮮の拉致疑惑は未解決だし、各地の海岸に到着する近隣諸国の密航者は思うように逮捕できず、不法滞在者の犯罪が急増している。出入国管理の面で国際テロ組織の入国を防止できるのか。基地、原発、新幹線や重要施設の機能をテロから守れるのか。平和ボケの一部野党の反対を押し切って、危機管理の後方支援新法と自衛隊改正法は今国会で一刻も早く成立させなければならない。政府与党はそのタイムリミットを20日に置いている。選挙区に基地を抱える政治家として、私は有事即応の法整備と、国民の生命、財産を守る安保体制確立に一層力を尽くしたいと考えている。