第189回(2月16日)沿岸捕鯨再開・調査は縮小 鯨巡る2課題
 捕鯨をめぐる2つ問題が国民的関心を集めている。1つは国際捕鯨委(IWC)の作業部会が、調査捕鯨の規模を縮小する代わりに、日本での沿岸捕鯨を容認する議長提案を発表したこと。もう1つは南極海で操業中の日本調査捕鯨船に、反捕鯨団体シー・シェパードが2日、妨害活動を再開したことだ。沿岸捕鯨はIWCが規制対象としているミンク鯨など本格的な鯨類の捕獲を日本沿岸の4地域で認めようとするものだが、調査捕鯨ではザトウ鯨とナガス鯨の捕獲を全面的に禁止するなどの交換条件をつけており、石破茂農林水産相は「調査捕鯨の継続が出来なくなるような提案は受け入れ難い」と反論している。だが、水産庁は捕鯨交渉が膠着状態にある中で、検討対象に「沿岸捕鯨が入ったことは評価できる」とやや好意的に受け止めている。IWCは議長提案を「あくまで議論のたたき台」と位置づけ、3月のローマ会合を経て、6月のポルトガルで開催するIWC総会で結論を出す方針だ。私は自民党の前水産部会長として、調査捕鯨の継続はもとより、前進した部分の沿岸捕鯨再開についても、双方が両立できるように支援していきたいと考えている。SSの妨害活動は今年度4回目で激しくなっているが、この方もソマリア沖の海賊対策と同様、水産、海保、警視の3庁が協力して防止活動を徹底するよう、働きかける考えだ。

太地、網走、石巻、南房総でミンク
 IWC(事務局・英国ケンブリッジ)の作業部会は2日、日本が南極海で実施している調査捕鯨の規模を縮小する代わりに、日本での限定的な範囲で沿岸捕鯨を認める米国のホーガス議長の提案を発表した。作業部会は、日本など捕鯨推進国と豪州など反捕鯨国が対立して実質的な議論が進まず、機能不全に陥っているため、議論を打開するために設置されたもので、昨年は2回開かれている。議長提案は、日本が再開を求めていた、和歌山県太地町、北海道網走市、宮城県石巻市鮎川、千葉県南房総市和田の4捕鯨基地で、IWCが規制対象としているミンク鯨などの捕獲を容認するもの。小型捕鯨船(総トン数48トン未満)5隻以下の日帰りに限り、捕った肉は地元で消費されることを義務づけている。具体的な頭数は示されていないが、科学的な根拠に基づく持続可能な頭数を設定し、捕獲数や捕獲状況を毎年IWCに報告させる。6年目以降については、完全に禁止するか、一定数に限って継続を認めるかの両案が併記されている。4捕鯨基地では昔から規制対象でないツチクジラやマゴンドウなどの捕獲が行われ、「小型捕鯨」と呼ばれてきた。今回は調査捕鯨の一環ではないため、水産庁は「商業捕鯨再開への一歩になる」と受け止めている。

IWC、調査捕鯨では2案
 一方、IWCは82年、乱獲によるクジラの減少を受けて、86年からの商業捕鯨のモラトリアム(一時中止)を決め、日本は科学的調査の名目で87年から南極海で「調査捕鯨」を開始している。現在は700トンクラスの大型捕鯨船などで、北西太平洋を含めて、ミンク、ナガス、ザトウ鯨など年間1300頭の捕獲枠があり、捕獲した鯨肉は売却されて調査費用に充てられている。議長提案では、南極海での日本の調査捕鯨について2案が提示された。1案は、5年間でミンク鯨の捕獲頭数を徐々に減らして段階的に廃止する案で、ザトウ鯨とナガス鯨については全面的に禁止する。これは反捕鯨の最強硬派である豪州などが捕獲数をゼロにすることを求めているからだ。2つ目の案は、今後5年間、IWC作業部会などの助言を受けて年間の捕獲頭数枠を定め、それを継続するとの内容だ。沿岸小型捕鯨は88年に中止されていたが、 再開すれば豪州など反捕鯨国の強い反発が予想される。従って、小型捕鯨の再開条件として調査捕鯨の縮小が焦点になる可能性が高い。各国の意向を反映した合意案を6月のIWC年次総会までに作ることが昨年決まったが、IWCは今後5年間を暫定期間とし、この間に長期的な解決策の合意を目指す考えだ。

農水相は調査捕鯨継続が条件
 議長提案は、捕鯨推進派と反捕鯨派が歩み寄れる妥協案を示したものだが、石破農水相は3日、閣議後の記者会見で、「調査捕鯨はもうやめてくれと言う話なら『はいそうですか』ということにはならない」と直ちに反論し、調査捕鯨の継続が、議長提案受け入れの条件であることを強調している。このため、6月のポルトガルでの総会で最終的な合意に達すかどうかは不透明で、早くも先送りされる可能性が強いとの見方が強まっている。こうした最中に、水産庁に入った連絡によると、日本時間の2日午前5時頃、南極海を航行中の調査捕鯨船団が、米国の環境保護団体シー・シェパード(SS)の抗議船に接近され、SS活動家から薬品入りの瓶を投げつけられたり、スクリューに絡ませるロープを流されたりする妨害活動を受けた。続いて6日午後4時頃、捕鯨船第3勇新丸の後方からSSの船が衝突、乗組員のけが人はなかったがデッキの板を損傷した。SSによる妨害活動は今年度の調査捕鯨が始まってから4回目。同庁によると、SS抗議船「スティーブ・アーウィン号」から降ろされたゴムボート2隻が2日、調査母船の日新丸や勇新丸、第3勇新丸の3隻に接近。SSメンバーは5時間にわたってロープを発射し自船と船団の船を連結しようとしたり、スクリューを止める浮き付きのロープを海中に流したり、染料や腐ったバターの酪酸と見られる薬品の入った瓶を投げ込み、瓶4~5個が捕鯨船に命中したという。

染料、酢酸、ロープを投げ込み
 捕鯨船団は散水装置や警告音で対抗したが、AFP通信によると、SS側は「メンバー1人が発射された水の高水圧で倒れ、打撲傷を負ったほか、もう1人は捕鯨船が投げた金属球で顔を負傷した」と述べ、警告音については、「捕鯨船団には新型音響装置や長距離音響装置を搭載。この装置は人間の感覚を失わせ、時には機能を奪うために中高域の周波数の音波を発射する軍用レベルの対人兵器システムだった」との批判声明を発表。S・アーウィン号のポール・ワトソン船長は「彼ら(捕鯨船)を追い立て続け、鯨から遠ざけることが我々の目的の全てだ」とAFP記者に語っている。妨害活動は昨年12月26日に海幸丸が体当たり攻撃を受け、1月6日には行方不明の乗組員捜索を妨害され、今回が3回目。昨年1月には、SS活動家が捕鯨船に乗り込んだほか、3月に薬品入り瓶を投げつけ、捕鯨船乗組員ら3人を負傷させている。日本鯨類研究所の森本稔理事長は「乗組員の安全を脅かす妨害活動は許されない。国際捕鯨取締条約(ICRW)第8条はIWCの規則が科学的根拠に基づくべきと義務づけているため、鯨類資源の科学的調査を行うことは重要だ」と述べ、政府と関係各国に適切な措置を講じるよう強く求めた。

外務省、駐日大使に防止措置要請
 日本側は、警視庁がSS活動家4人を国際手配したほか、捕鯨船へ再度乗り込みを受けた場合は国内へ移送して、捜査当局に逮捕させる方針を水産庁が示すなど、強硬姿勢を示しているが、SS側は妨害活動の続行を公言している。御法川信英外務政務官は6日、SSの抗議船が船籍を置いているオランダのドウ・ヘーア駐日大使を外務省に呼び、妨害行為を中止させ、再発防止の措置を取るよう申し入れた。