第186回(1月元旦)給油法成立・イラク撤収 防衛に明るい成果
 昨年の臨時国会で新テロ対策特措改正法が成立、インド洋上の給油活動は1月15日から1年間再延長される。また、政府が11月末の安全保障会議で決定した撤収計画に基づき、イラク・クウエート間の空輸活動は終了、航空自衛隊は昨年末に隊員150人の撤収を完了した。防衛省には明るい成果だ。自衛隊による国際貢献は、陸自が04年1月から06年7月までイラク南部サマワでの給水など人道復興支援活動に従事、空自が04年3月からクウエートとイラクの首都バグダットを結び国連や多国籍軍の人員や物資を輸送してきた。1回の事故、1人の犠牲者も出さず無事任務を完了したことは誇るべき大変な成果であり、国際社会で高く評価された。砂嵐が舞う気温50度以上の過酷な、しかも危険地帯で、イラク復興に貢献してきた派遣隊員諸君の多年のご努力に対し、防衛副大臣として深く感謝したい。さらに今後、給油活動の交代に向かう佐世保基地の海自隊員諸君のご苦労にも敬意を表したい。米国のオバマ次期政権はイラクからアフガニスタンへ比重を移す構えだが、早くもアフガン復興支援では軍事ばかりでなく非軍事、民生面での日本の貢献を求めてきている。アフリカ・ソマリア沖の海賊対策も重要だ。私は首相が意欲を示す自衛隊派遣の恒久法や海賊対策の特措法の整備に向け、大いに努力したいと考えている。

酷暑・危険地帯の活動に感謝
 防衛省は昨年12月中旬、70人の撤収業務隊をイラクに派遣し現地の隊員210人のうち60人と共同で、梱包や輸送、隊舎の引き渡しなど撤収業務を始め、同月23日までに150人が帰国した。業務隊と残りの60人も3月までに帰国する。自衛隊派遣の根拠となるイラク復興支援特別措置法の期限は7月までだが、多国籍軍の活動根拠となっている国連決議が08年末で切れたため、政府は「イラクの治安は安定に向かっている」との判断から、空自を撤退させた。空自のC130輸送機による空輸は、多国籍空軍司令部の要請で04年3月から土日を除く毎日、3機体制で開始された。クウエートを拠点にアリ・アル・サーレム空軍基地からバグダッド、北部のアルビル、南部のアリ飛行場まで医療器材などを輸送、06年7月からは同基地とバグダッド空港間で多国籍軍などの人員・物資を輸送、同年9月からはアリ・アル・サーレム基地とバグダッド空港、アルビル飛行場を結び、国連の人員・物資を輸送してきた。輸送回数は821回、輸送人員は約4万6500人、輸送物資重量は約673トンに上り、派遣の空自隊員は延べ約3600人に達した。

1度の事故・犠牲出さず大成功
 陸自による人道復興支援活動は、医療支援がサマワ総合病院など4病院で診療・医療技術の指導、簡易診療所29カ所を整備。給水支援が運河の水を浄水し給水車に配水(実績は約5万3500トン=約1189万人分)、浄水場の整備。公共施設の復旧・整備が学校補修36校、道路補修31カ所のほか体育館や養護施設の補修66カ所――などだ。陸自はロケット弾攻撃の危険にさらされ、空自も地上からSA7対空ミサイルで狙われる恐れがあったが、1度も事故、犠牲者を出さず、目立ったトラブルもなく完璧に近い形で任務を終了した。空自撤収で国際平和協力活動に従事している自衛官は、約600人から400人以下に減り、給油活動の330人と、国連平和維持活動協力のゴラン高原、ネパール、スーダンの計50人強になる。こうした中で11月26日には、インド・ムンバイで同時テロ事件が発生、日本人ビジネスマンを含む多数の犠牲者が出た。「テロとの戦い」で日本のさらなる国際貢献を求める声は高まっている。

米がアフガン支援拡大を要請
 読売新聞によると、シーファー米駐日大使は昨年末のシンポジウム「日本の国際安全保障活動」で、「オバマ新政権で『ジャパン・パッシング』(日本無視)は起きない。日本との関係を強固にすることが米国の国益だから」と述べ、アフガンへ比重を移すオバマ新政権との関係強化に日本のアフガン支援拡大は欠かせない、との見方を示し、「なぜ、日本の文民がPRT(アフガン復興支援の地方復興チーム)に参加できないのか」と問いかけたという。アフガンでは現在、40余の国々が支援に貢献している。日本が現在実施しているインド洋上の給油活動は、多国籍軍がその洋上で行っているパトロール活動の支援だ。アフガンからソマリアに麻薬が運ばれ、ソマリアからその見返りにアフガンに武器が密輸されているが、多国籍艦隊はその交通路を遮断している。そのインド洋上のソマリア沖に出没するのが武装した海賊だ。2カ月前のHPで詳細に取り上げたので重複は避けるが、昨年ソマリア沖やアデン湾などで発生した海賊事件は約100件で1昨年の2倍を超した。

身代金30億円海賊ビジネス
 内乱が多発したソマリアは無政府状態で取り締まれず、乗っ取り船や乗員の身代金を要求する「海賊ビジネス」によって、昨年の身代金総額は30億円近くが支払われたと推定されている。今なお、17隻が捕らえられ、約250人が人質になっているといわれる。日本関係の船も多大な被害を受け、4月には大型タンカー「高山」が襲撃された。救ってくれたのは、海自から給油を受け、多国籍艦隊に所属するドイツ海軍だった。自衛隊の海外派遣で一番大きな問題は武器使用の権限が「正当防衛」に限られるなど極めて制約され、サモアの場合でも陸自が多国籍軍の参加国に警備して貰わなければならなかった。サモアで住民とトラブルを起こさず、武器も一切使用しないで済んだのは、部隊長が現地の部族長に礼を尽くすなど、自衛隊の運用がうまくいった成果によるものだ。

海賊対策に海保との連携必要
 「テロとの戦い」で日本は貢献拡大を求められているが、自衛隊の部隊やヘリをアフガン本土に派遣するには根拠となる特別法や恒久法が必要となる。国連安保理事会は昨年6月と10月、ソマリア沖の海賊対策として各国に海軍や軍用機の派遣を求める決議を採択した。米英仏独露加など15カ国が既に艦船を派遣し、船舶の警備や海賊の取り締まりに当たっている。海賊対策の方も他国任せにしておくことは許されない。海自の艦船を派遣するための特措法の整備が必要だ。首相は昨年10月の衆院テロ対策特別委で、海賊対策に海自艦船を活用する法整備について検討すると表明した。与党内で検討を始めているが、とりあえず調査目的で海自艦船を派遣し、日本船舶が襲われたら自衛隊法の海上警備行動を発令して対処する方法も考えられる。だが、海賊は国際犯罪であり、取り締まるのは警察だ。海の場合は海上保安庁の仕事で、同庁は捜査や警察権の行使が出来る。海保の巡視船は北朝鮮工作船の日本領海侵犯事件でも銃撃戦による法執行を体験している。従って、海賊の追跡、捜査、逮捕、証拠品押収などで海自と海保の緊密な連携プレーが重要となる。

自衛隊派遣恒久法の早期制定を
 また、正当防衛」に限られている武器使用を、自衛隊員が個人と自己の管理下にある者を守る場合だけでなく、部隊全体として指揮官の命令で警告射撃や船体射撃などの行動が出来るよう、柔軟な運用体制に改めることが肝要だ。特に今後は国連決議などに基づいて、多国籍軍と共同で活動が出来るような集団的安全保障体制を確立する法整備が望まれる。読売は昨年11月末の社説で「アデン湾から紅海を経てスエズ運河を通行する船舶は年1万8000隻に上る。このうち日本関係の船舶は2000隻で1割を占める。<略>海賊対策は、貿易立国の日本の国益に直結する問題だ。真剣な取り組みが求められる」と指摘した。同感である。私は自衛隊派遣恒久法と海賊対策特措法の整備に意欲を燃やしている。