第185回(12月16日)クロマグロ3割削減 完全養殖に努力
クロマグロは3年後、漁獲枠を35%削減される。松方弘樹が275センチ、300キロの巨大クロマグロを下関沖の釣り大会でゲットし、東京のセリで200万円の高値を付けたという11月24日、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)は、モロッコでの年次会合で、乱獲が続く地中海と東太平洋のクロマグロ(ホンマグロ)の2011年漁獲量を08年より35%減らし、1万8500トンとすることを決めた。09,10年についても、既に決まっている漁獲量をそれぞれ約2割削減することで合意した。このため、日本の10年の漁獲量は、08年より約3割減って、1697トンになる。クロマグロは最高級魚で、日本の消費量の約6割は地中海で捕れる。水産庁によると、冷凍クロマグロの国内在庫が豊富なため、急激な値上がりは避けられる見通しだが中期的には上がる。正月に向けて価格が徐々に吊り上がることも予想され、庶民には厳しい年の瀬になりそうだ。クロマグロの養殖は長崎県以外でも年々盛んになっているが、私は自民党の前水産部会長として、種苗生産技術の開発など完全養殖の達成に向け、予算獲得の努力をする考えだ。

地中海「蓄養」で乱獲続く
合意によると、東大西洋クロマグロの09年の漁獲枠は2万7500トンから2万2000トン(日本1871)に、10年は2万5500トンから1万9950トン(同1697)にそれぞれ減る。11年はさらに18500トンに削減するが、国別割り当ては決まらず、10年に検討する。禁漁期は、延縄が現行と同じ6月1日から12月31日(ただし、西経10度以西、北緯42度以北は2月1日~月31日)、巻き網は現行の7月1日~12月31日が6月15日~4月15日に変更される。ほかのマグロ類についても漁獲制限の動きが強まっている。太平洋・地中海のマグロ資源管理機構であるICCATの科学委員会は10月、年間の漁獲枠を1万5000トン以下にすることを求める報告書を出していた。ICCAT科学委の推計によると、同地域のクロマグロは、2007年の漁獲枠2万9500トンに対し、実際は6万1000トンの漁獲量で乱獲状態にあったからだ。日米は今回の会合で委員会報告に従うべきだと主張したのに対し、欧州連合(EU)や地中海沿岸国が小規模な削減を求めていた。クロマグロはかつて高級寿司店だけのメニュー。それが回転寿司店などで1皿数百円で食べられるようになったのは、小さなマグロを捕り、生け簀で囲んで半年程度餌を与えて太らせ、トロ部分を増やす「蓄養」のおかげ。日本の大手商社が、地中海沿岸の蓄養業者に技術指導して90年代後半から盛んになった。

2年半で卸値6割以上高騰
水産庁の調べだと、日本の地中海産蓄養クロマグロの輸入量は98年に5700トンだったが、2006年には2万2600トンと約4倍に増えている。このまま乱獲が続けば、絶滅の恐れがあるとして、クロマグロがワシントン条約の対象となり、輸入が一切禁止になる可能性があると同庁は見ている。また、自然保護団体などは、蓄養が水産資源としての稚魚・養魚の枯渇を加速すると批判し、漁獲禁止を求める声を高めている。東京・築地市場での冷凍クロマグロの卸売価格は、06年1月に1キロ2500円だったものが、今年8月には4171円に6割以上も上がるなど上昇傾向が続いている。ちなみに俳優・松方弘樹が釣ったクロマグロは1キロ約7000円のご祝儀相場がついた。日米が漁獲量の大幅削減に賛同したのは、国内流通量が減って価格が上がったとしても、「輸入できなくなるよりはまし」との判断があったからだ。これに対し、蓄養が盛んな地中海沿岸国やEUは、急激な規制強化に難色を示し、削減幅を狭めるよう求めた。

太平洋メバチも3割削減へ
読売新聞によると、遠洋マグロ漁業の基地、宮城県気仙沼港の船主らはICCATの漁獲枠削減で、「1隻当たり約5000万円前後の売り上げが消える」と深刻に受け止め、「クロマグロの減少分を、単価が安いメバチマグロやキハダマグロで補うのは難しい」とし、苦悩を深めているという。気仙沼のマグロ漁船は1990年度の160隻強から約4分の1に減っており、後継者不足や燃油高騰、船の老朽化などがこの「減船」傾向に拍車を掛けていると同紙は報じている。一方、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)も12月8日から12日まで韓国・釜山で年次総会を開き、太平洋のメバチマグロの漁獲規制を話し合った結果、今後3年間に3割削減で合意した。メバチはクロマグロより小振りで漁獲量が多いことから、これまでスーパーなどで刺し身用に比較的安い値段で売られていたが、漁場では巻き網漁船による幼魚の混獲などが原因で資源の枯渇が懸念されていた。WCPFCの科学委員会は03~06年の平均から3割削減を勧告、昨年の年次総会では25%削減が提案されたが、各国の意見集約は出来なかった。

在庫多く急激に上がらぬが
日本のクロマグロ年間消費量は約4・4万トンでその6割を地中海が供給しているが、水産庁によると、輸入冷凍クロマグロの国内在庫は9月末現在、例年の約1・2倍の1万8000トン程度と推測されるため、急激な値上がりはないという。スーパーなどは年末年始に向けて一定量を確保しており、客の支持を得るためにも値上げの予定はないようだが、築地市場の卸し筋は「供給量減は確実で、将来的には値上がりするかも知れない」と述べている。そこで注目されるのが国内の養殖事業だ。長崎県では1969年からクロマグロの幼魚を採捕して飼育する試験を開始した。高知湾などの曳き網釣りで捕れる全長20~30センチのマグロの稚魚・ヨコワ(100~500グラム)を約2年で25~30キロ、3年で50~60キロの大きさにまで育てている。クロマグロは水温、水質などの条件に恵まれた海域や養殖種苗の漁獲地近くで養殖されるため鹿児島県奄美大島に生産が集中している。

マグロ養殖の先駆・長崎県
クロマグロの養殖生産量は年々増えており、07年度は鹿児島2300トン、長崎800トン、三重600トン。沖縄300トン、和歌山200トン、その他200トン、計4400トンで、09年には8000トンを超えるとの見方もある。長崎県のマグロ養殖漁場は34経営体(個人20、法人14)・36漁場で、対馬21経営体・18漁場、五島8経営体・8漁場、県北6経営体・9漁場、県南1経営体・1漁場となっている。大量にマグロを輸入してきた大手商社を中心に養殖事業に参入する動きが最近、相次いでいる。マグロ輸入最大手の東洋冷蔵は長崎県対馬市の沖合で養殖事業に乗り出し、11年をメドに年間100トンを出荷する計画だ。ニチメン、日商岩井を母体とする双日(加瀬豊社長=東京都港区)は11月から長崎県松浦市で養殖事業を開始、海上に直径30メートルの生け簀を6基設けてヨコワを飼育している。10年末から年間180トンを出荷し、4年後に350~400トンに増やしたいとしている。

人工種苗、配合飼料が課題
しかし、稚魚・ヨコワを乱獲すれば、地中海の蓄養と同様、やがて資源は枯渇する。天然の資源に頼らず養殖を行うには、①人工種苗の量産技術②養殖用配合飼料の確保③海象条件の厳しい海域での養殖生け簀技術――の開発が喫緊の課題だ。水産庁は1970年、近畿大学にマグロ養殖研究事業を委託、同大は74年から本格的な親魚育成を開始、2002年に完全養殖を一応達成した。また、農水省は07年、独立法人の水産総合研究センターに人工種苗の量産技術開発事業を委託した。水産総合研は全身の日本栽培漁業協会当時の85年から、種苗生産技術の開発を初め、94年に奄美栽培事業場を開設している。だが、近畿大が完全養殖に成功したといっても、鮭のように採卵・孵化・稚魚育成を軌道に乗せるには、効率的な種苗生産・量産技術を開発しないと採算ベースには合わない。それには多額の研究開発費が要求され、予算編成では格段の努力が必要であると考えている。