第184回(12月1日)民営化見直しの対立再燃 郵研究会が総会
与野党内で郵政民営化見直し論議がにわかに高まってきた。首相が日本郵政グループの株式売却を凍結すべきだとの考えを示し、「民間会社が儲かる制度にもう1度考え直す必要がある」と述べたからだ。これは衆院選を睨み、郵政造反組の復権を認めた首相が郵政票を取り込みたい思惑から発言したものとみられるが、自民党内では議連の「郵政研究会」が総会を開き、保利耕輔政調会長が郵政事業の見直し期限である来年3月に向けてプロジェクトチーム(PT)を設置するなど活発に動き出した。これに対し、小泉元首相側近の中川秀直元幹事長らは「見直し法案が出れば断固反対する」と反発するなど党内では「積極派」と「慎重派」の対立が再燃しつつある。国民新党などは、野党3党が共同提出し衆院で継続審議中の「郵政民営化見直し法案」の審議促進を求めているが、自民党の大島理森国対委員長は同法案の修正協議に応じる姿勢を示しながらも、協議不調の場合は否決し、民営化法の見直し規定に基づき、次期通常国会に自民党独自の見直し案を提出する構えだ。

株価低迷時に売るのは阿呆
「こんなに株が下がっている時に、遮二無二売らなくてはいけないと言う、そんなあほな話があるか。株は高くなった時に売るの。それが当たり前」――。株式市況が低迷するさなか、首相は11月19日夜、官邸で記者団の質問に答え、郵政株の売却凍結に踏み切る方針を明らかにした。その上で、「民間になった会社が儲かるような制度にもう1回考え直す必要がある」と指摘したが、すかさず、「また国営化すると言う人がいるが、それは違う」と逆戻りを否定した。政府の民営化計画では、同グループの「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命保険」の金融2社の株式を2010年度にも上場し、17年9月末までに全株を売却する予定だが、首相の発言は全面的な売却凍結を明言したものではなく、株価低迷が続く中では、世界的な株安や日本郵政の収益動向を当面見極める必要があると判断したようだ。「日本郵政」の西川善文社長も同日、自民党「郵政研」の会合に出席し、郵政グループの株式上場について、「今のような状況下では難しい」との考えを述べている。

造反組多数出席、民営失敗論
首相は民営化法案が策定された05年当時の総務相で、持ち株会社日本郵政によるゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式一部保有の継続を求め、完全売却を主張する竹中平蔵郵政民営化担当相(当時)と張り合ったが、小泉首相の裁断で敗れ去った経緯がある。このため、経営の一体性確保を重視し、当面の凍結に加え、民営化各社を資本的につなぎ止めるなどの抜本的見直しを視野に入れているとの見方も党内にはある。いずれにしても、郵政民営化の核心部分である株式売却を当面凍結するとの首相表明は、党内に波紋を描いた。慎重派の議連「郵政研究会」(代表・山口俊一首相補佐官)は19日、党本部で約70人が出席して総会を開いたが、会合には山口氏をはじめ、野田聖子消費者相、古屋圭司党広報本部長ら「郵政造反組」多数が顔を揃えた。同研では「郵政事業を4つの会社に分割したことはサービス低下を招いている」「配達が遅くなった。窓口(郵便局会社)と郵便(郵便事業会社)が別れているのは弊害が多い。二つの会社は合併すべきだ」「株価が暴落している状況で上場すべきではない」など民営化失敗論が渦をまき、野党の民営化見直し法案に同調する声すら起きた。

見直し断固反対と改革積極派
これに対し、小泉構造改革の継承を掲げる中川氏ら郵政改革積極派は「民営化の見直しは小泉改革の全否定に繋がる。絶対に許さない」と反発、「郵政見直しを党議決定しても本会議場で(法案に)反対する」と述べている。津島派の中堅幹部は「小泉チルドレンは衆院選公認を巡る冷遇で不満のマグマが溜まっており、党内に大変な騒動を引き起こす」と物騒な予言をしている。積極派は安倍政権で造反組の復党を認めたことが政権の失速と07年参院選惨敗の原因になったと見ており、組閣人事で造反組を復権させた首相がさらに民営化を見直せば世論の強い反発を招き総選挙に響くと心配している。小泉氏に近い武部勤元幹事長も25日の役員連絡会で「政府・自民の方針が誤解されている」と発言、「造反・復党組」の動きに釘を刺している。このように両派の意見が対立する中で、郵政民営化法に基づく3年ごとの郵政事業の見直し期限である来年3月に向けて、保利政調会長が仕切るプロジェクトチーム(PT、座長=中谷元・元防衛長官)は26日、初会合を開いた。PTは今後民営化維持を前提に、4事業会社の経営実態を検証し、経営強化策などを検討する。党政調幹部は「法改正に繋がる議論にはしない。問題点を政府の郵政民営化委員会に指摘するのがPTの役割」と慎重だが、党内調整は難航するものと見られる。私は民営化1年余の姿を入念に検証し、全国くまなく行き渡る郵政の「ユニバーサルサービス」の本旨に基づく見直しであれば、当然改善しなければならないと考えている。