第181回(10月16日)郵政研で民営化見直しへ 雪崩現象防止
 自民、民主両党が互角で戦う総選挙は、まさに政権を賭けた決戦場。私は「激戦区での郵政、共産党の票の行方が勝敗を左右する」と、ここ数回の北村HPで解説してきた。蟹工船ブームで党員増加が目立つ共産党の自主投票がどこに流れるか不気味だ。全国郵便局長会の基礎票20万票が国民新、民主両党に流れ、共産党が小選挙区の候補者を半分の138議席に絞り込み、自民党に対する公明党の選挙協力が停滞するとなれば、激戦区では民主党への雪崩現象が起きかねない。福田前首相、麻生首相がともに小泉改革路線と決別、「郵政造反組」を取り込む人事や民営化見直しの姿勢を表明した理由はそこにある。自民党の有志はこのほど議連「郵政研究会」を結成、私も参加し党のマニフェスト(政権公約)に「郵政3事業のサービス維持」を盛り込むよう動き出した。郵政造反派だった保利耕輔元文相が政調会長に就任して以来、自民党内では「郵政民営化三年後見直し規定」に沿って改善策の検討が進んでいる。今回はその概要と郵政票の影響力などを分析してみたい。

造反立役者の中曽根外相抜擢
 福田改造内閣では「郵政造反組の復党に尽力した笹川堯元党規委員長を総務会長に、造反組の保利元文相を政調会長に、野田聖子元郵政相を消費者相に抜擢して小泉構造改革路線と決別した」と9月のHPに書いた。麻生政権でも目立つのは首相が「郵政造反組」を大幅起用、さらに小泉色を薄めた点だ。党三役の骨格は変えず、野田氏を留任させ、新たに参院での郵政法案否決の立役者・中曽根弘文元文相を外相に抜擢、総裁選で小泉路線の後継者を唱えた小池氏を組閣の圏外に置いた。小泉政権は橋本行革の財金分離に基づき竹中平蔵金融相に不良債権処理などをやらせたが、麻生首相はリーマン・ブラザーズ破綻の危機で財金一体化を重視し、財務相兼金融相に盟友の中川昭一元政調会長を起用した。また、いずれも造反派の鴻池祥肇元防災担当相を官房副長官に、山口俊一元郵政政務次官を地方再生担当の首相補佐官に据えた。狙いは福田前首相と同様、民主党に流れそうな全国郵便局長会とそのOB・家族の「郵政政策研究会」の20万票獲得にある。「アンシャンレジューム(旧体制)の復活だ」と竹中氏が嘆いたことは前号でも触れたが、小泉元首相のまさかの政界引退は、こうした郵政への傾倒人事に嫌気がさしたことも一因だろう。

一体的経営を政権公約に決議
 自民党の有志議員約90人は2日、議員連盟「郵政研究会」(代表=山口首相補佐官)の設立総会を開き、郵政3事業のサービス水準維持や安定経営確保のために党の衆院選政権公約(マニフェスト)に①郵便局会社と郵便事業会社の一体的な経営確保②事業会社の株式持ち合いによる連携強化――などを入れるよう求める決議を採択、党4役や首相官邸に申し入れた。あくまでも民営化を前提とした見直しだが、郵政研は緊急決議の中で、資本市場の動向を勘案した株式上場の弾力化や、事業会社の株式持ち合いによる連携強化を求めている。同議連の中核を担うのは、いずれも郵政民営化に反対して一度離党した「造反組」だ。古屋圭司党広報本部長を幹事長、森山裕前財務副大臣を事務局長、野田消費者相、藤井孝男元運輸相を顧問に決めた。来年3月に郵政民営化法に基づく見直し時期を迎えることもあるが、郵政研には苦戦予想の次期衆院選で「郵政票」を確保したい思惑がある。国民新党の綿貫民輔代表はこの議連発足について「甘いことを言って、選挙対策をやっているんじゃないか」と批判しながらも「ぜひ踏み絵を踏んでもらいたい」と述べ、国民新党などが提出した「郵政株売却当面凍結」の郵政民営化見直し法案への賛同を求めた。

「検証し必要な対応」と首相
 鳩山邦夫総務相は3日の閣議後記者会見で、「郵政研」の緊急決議に対し、「民営化自体は株式売却を含め方針を変更する考えはない」と述べたが、郵政民営化には「光と影の部分」があることも指摘、「影の部分をどれだけ消していくかが基本だ」と表明した。麻生首相も同日の参院本会議で、民営化から1年が経過した郵政事業の現状について、「地域住民からさまざまな指摘をいただいているのは事実だ」とした上で、「住民の指摘を含め、民営化後の状況を十分に検証し、必要な対応を取りたい」と述べ、改善に努める考えを明らかにした。これは国民新党の自見庄三郎副代表が「4百局超の郵便局が閉鎖された。郵政事業の現状をどう受け止めるか」と対応をただしたのに答えたものだ。首相はまた、公明党の浜四津敏子代表代行が質問した国の出先機関の統廃合や自治体への権限移譲について「多くには二重行政の無駄がある。住民に身近な行政は地方自治体に移して廃止・縮小し、効率化を進めなければならない」と述べ、積極的に推進する考えを表明。「霞が関(の中央省庁)には抵抗があるかもしれないが、私は決断させていただく」と強調した。

JP労組「郵政未来研」設立
 野田聖子消費者行政担当相も3日、自見国民新党副代表の代表質問に「郵政民営化に絡み郵便局などの業務に関して全国の消費生活センターなどに寄せられた苦情や相談が、2005―07年度の3年間で計8577件に上った」ことを明らかにした。この中で、郵便事業や郵便貯金、簡易保険に関する苦情や相談は「05年度が2665件、06年度が2793件、07年度が3119件と増加した」と答えたが、野田氏は具体的な改善策などは示さず「それぞれのセンターで適切に対応している」と述べるにとどめた。一方、国内最大の単一労組、日本郵政グループ労働組合(JP労組、組合員22万人)は9日、東京都内で第2回中央委員会を開催し、政治活動を自由に行えるようにするのを狙いとした政治団体「郵政未来研究会」を設立した。次期総選挙で組織内候補者への支援を強化する。山口義和委員長は開会のあいさつで、小泉元首相が進めた市場原理主義が格差社会や倫理観の欠如を引き起こしたと批判。「総選挙により政権交代し、誰もが安心して働き暮らせる公正な社会をつくらなければならない」と述べ、衆議院の早期解散を訴えた。

郵政研、民主155候補推薦
 「郵政民営化見直し法案は1丁目1番地」と主張してきたのが国民新党の綿貫代表。綿貫氏は改造前の7月16日、小沢一郎民主党代表、全特の浦野修会長と3者会談し、次期衆院選で民主党が政権公約(マニフェスト)に郵政民営化の抜本的見直しを盛り込むことに合意した。これで「郵政研」は国民新党の候補が立たない小選挙区では同党が推薦する民主党候補を支援する。旧郵政公社時代の郵便局長は、郵政民営化で国家公務員から民間人になったため、政治活動が解禁された。「郵政研」は郵便、郵貯、簡保の3事業を元の姿に戻すよう「3事業一体化」を要求して、政治活動を展開している。民主、国民新両党の執行部は8月20日、次期衆院選の選挙協力について協議した。民主党は党の公認内定者のうち、既に国民新党の推薦を得ている15人を除く224人の推薦を国民新党に要請、国民新党側は「郵政民営化見直しの具体案をさらに両党間で詰めるべきだ」と述べ、個々の公認候補内定者の取り組み姿勢を考慮しながら推薦の可否を決定する方針を示した。これに基づき国民新党は10月2日までに民主党の公認候補155人の推薦を発表した。

Uサービス徹底見直し改善を
 2005年の郵政選挙は閉塞感からの脱皮を求める国民が、郵政民営化というより、実体は劇場型の小泉政治に何らかの変革を期待して支持したといえる。自民党は首都圏、近畿圏の都市部の小選挙区で大勝利をおさめた。しかし、今回の総選挙は物価高、雇用不安など悪条件が重なる中で、自民党は近来希に見る厳しい戦いが予想される。共産党は小林多喜二の「蟹工船」ブームで昨年9月の第5回総会以降、38~40万人の党員が毎月連続1千人規模で計9千人増えた。「郵政研」もかつては長田裕二、西村尚治両参院議員を組織内候補に抱えていた頃の郵政票は百万票近くあった。何度も言うが、公明党の選挙非協力に加え、共産票と全特の郵政票が民主党支援に回ったら、相乗効果を生んで小選挙区で戦う自民党候補は大打撃を受けよう。我々は「郵政民営化3年後の見直し規定」に沿って、ユニバーサルサービスに生じた影の部分を徹底的に見直し、改善する決意を固めている。