第177回(8月16日)給油継続法で攻防激化 防衛省改革に本腰
 改造内閣で防衛副大臣を拝命し、政務官以来2年半ぶりに防衛省に帰ってきた。その間、昨年秋には守屋武昌前事務次官の収賄事件とイージス艦の情報漏洩、今年2月に海自のイージス艦「あたご」と漁船の衝突事故、7月に「日米平和・文化交流協会」の秋山直紀専務理事の脱税事件など、防衛省関連の不祥事が多発、防衛省の改革が大きな課題となっている。我が佐世保基地では米原潜の放射性物質の漏出事故があり、沖縄の普天間飛行場移設問題も大詰めを迎えている。一方、日中関係は福田首相の努力で改善されたものの中国は軍事力増強を続けている。6カ国協議も進展せず、北朝鮮の核の保有は北東アジアの大きな脅威だ。首相は「安心実現内閣」の看板を掲げたが、国民の生命・財産を守り、安全・安心を保障することが防衛省の使命である。臨時国会では新テロ特措法延長法案を巡る与野党攻防の激化が予想されるが、私は国会答弁で大臣を補佐し、防衛省改革では規律を正し国民の信頼を回復すことに全力を挙げたいと考えている。宜しくご支援下さい。

防衛調達の不透明性が暴露
 防衛省に4年間君臨した守屋武昌前事務次官は、防衛商社「「山田洋行」から8年間に300回・1500万円のゴルフ接待を受けたほか、現金授受などの収賄容疑で逮捕された。防衛分野で日米の政官業界を結ぶパイプ役と呼ばれた社団法人「日米平和・文化交流協会」の秋山直紀専務理事も、贈収賄事件で脚光を浴びた「山田洋行」など複数の関連企業から、コンサルタント料名目で提供された約2億3200万円の資金を、実体のないダミー会社の米国3法人の口座に振り込ませて隠し、所得税約7400万円を脱税した容疑で逮捕された。防衛官僚・組織とは直接関係がなくとも、守屋疑惑との関連で「防衛調達の不透明性」を国民に深く印象づける結果になった。海自のイージス艦「あたご」と漁船が房総沖で衝突した事故は、間もなく海難審判が開始されるが、当直士官の前航海長は、事故の27分前に漁船群を視認したが、停船中と誤認し継続的監視の指示を怠り、前水雷長への引き継ぎでも「危険なし」と伝えたという。海難審判では隊員に対する組織的な指導や教育に問題があったと指摘されよう。20年前に起きた海自潜水艦「なだしお」の衝突事故の反省と教訓は、すっかり風化してしまった。読売は社説で「自衛官には厳格性、組織としての注意力が必要」と指摘した。その通りで、安全運行に対する隊員全体の緊張感の欠如があったことは否めないし、人為ミスの連鎖を絶てなかったことは許されまい。

制服・背広組の混合組織化
 政府の防衛省改革会議(座長・南直哉東京電力顧問)は7月16日、内閣官房(背広組)と自衛官(制服組)のポストの混合などを柱とする報告書を首相に提出した。柱は①首相官邸に防衛力整備検討の常設機関を設置②防衛参事官制度を廃止し、防衛相補佐官を導入③防衛会議を防衛省の最高審査機関と位置づける④運用企画局を廃止し、自衛隊の部隊運用機能を統合幕僚監部に一元化⑤統合幕僚監部と防衛政策局を制服・背広組の混合組織化――の5項目。前防衛次官の汚職事件やイージス艦情報漏洩事件など、一連の不祥事の原因を分析した上で、「現行の組織を基本的に存続しつつも、大胆な改革が必要だ」として背広・制服組の縦割り組織を排する改革を提案している。防衛省はこれを受けて7月21日、全国5分割の各方面隊を指揮する各「方面総監部」の制度を廃止し、指揮・命令系統を簡素に一元化する「陸上総隊」を創設する検討に入った。

防衛相補佐官導入、防衛会議も
 現在の陸上自衛隊は、必要最小限の防衛力を保有するという「基盤的防衛力構想」を背景に、全国を北部、東北、東部、中部、西部の5方面隊に分け、トップである「方面総監」が、それぞれの陸将が務めている。このような着上陸侵攻を想定した冷戦時代の体制を、テロやゲリラ攻撃などに備えて一本化し、機動的に対応するのが狙い。既に海上自衛隊は自衛艦隊司令官、航空自衛隊は航空総隊司令官にそれぞれ指揮・命令系統が一本化されている。この組織改革を09年度に見直す「防衛計画の大綱」に盛り込む考えだ。新体制では、ゲリラ攻撃に対応するため、07年3月に発足した専門部隊の「中央即応集団」を格上げして直接、陸上総隊に組み入れることも検討している。また、内局官房が防衛相を補佐してきた防衛参事官制度の廃止や防衛相補佐官の導入、防衛相や背広(内閣官房)、制服組(自衛官)の幹部らで構成する「防衛会議」設置を、09年度中に行う方針を決めた。これは防衛省改革会議の報告書が「現場部隊と中央組織との間に存在する多くの中間司令部の在り方について見直しを行い、組織のフラット化を図るべきだ」と求めているからだ。

防衛計画大綱までに曲折予想
  しかし、この報告書をまとめる過程では、防衛省改革を政権浮揚に繋げたいとする首相、
一連の不祥事を根絶するため内局(背広組)と統幕・陸海空各幕僚監部(制服組)を3機能に統合・再編するという組織再編案を提唱した石破茂前防衛相、これを「急進的改革だ」と反発する防衛官僚が3すくみに絡まって、予定より約5ヶ月も遅れたという。結局、首相の外交ブレーンで改革会議メンバーでもある五百旗頭真・防衛大学校長が「現行組織を維持しつつ背広・制服組の人事交流を行う」という石破案より穏健な私案を提案、これをたたき台にしてようやく報告書はまとめ上げられた。このように曲折を辿った改革案だけに、「防衛計画大綱」に至るまでにはさらに政府与党内で論議を煮詰める必要がありそうだ。

佐世保で米原潜の放射性漏出
 米海軍所属の巡航ミサイル「トマホーク」を搭載した原潜ヒューストンが3月末に約1週間、佐世保基地に停泊した際、艦内から微量の放射性物質を含む水を漏出した可能性が明らかになった。米海軍の艦船では、横須賀基地に配備予定の原子力空母ジョージ・ワシントンの艦内で規律に反した喫煙が原因の火災が発生し、艦長が更迭されたばかり。首相は「微量といえども、漏れたことは重大に受け止めなければいけない。米国には当然、原因調査をして貰う」と述べ、外務省にしっかりした対応を指示した。政府は在日米軍再編で負担を増す自治体に対する再編交付金を39自治体の全てに支給する方針を固めているが、米原潜の不注意な放射性物質の漏出や沖縄県の米海兵隊員女子中学生暴行事件などにより、基地住民の反対運動が再燃する恐れがある。山口県岩国市では米海兵隊岩国基地への空母艦載機移駐容認派の福田良彦氏(前自民党衆院議員)が2月の市長選で当選、政府は交付金の凍結を解除した。米陸軍第1軍団前方司令部のキャンプ座間への移転に反対してきた座間市も国との協議機関設置したのを受けて、政府は交付金の支給を決め、沖縄県名護市など39自治体の全てに支給する方針を固めていた。漏出事故は折角好転の兆しにある沖縄県普天場飛行場移設問題にも悪影響が出るだろう。米側の誠実な対応を望みたい。

タンカー護衛法案の検討準備
  さて臨時国会では、新テロ特措法改正案を巡り、野党は先のガソリン国会で「油出すより、(防衛省の)膿を出せ」と攻めたように、今度はガソリン高騰を背景に「油をただでやるなら、国民に配れ」と迫ることになりそうだ。麻生太郎幹事長は給油活動の延長が難しい場合、インド洋で日本のタンカーを護衛するため自衛隊の派遣を検討すべきだとの考えを表明した。高村正彦外相も「アフガニスタンには自衛隊を送れないが、インド洋を通って運ばれる原油は日本が一番多い」と述べ、「テロとの戦い」への貢献は給油活動の継続で果たしたい考えを示している。石油の9割を中東に依存する日本は、何としてでも改正法案を成立させたいところだ。話し合いで民主党の協力も模索しているが、成立できない場合は自衛隊による「タンカー護衛法案」を次期通常国会に提出しなければならず、防衛省としても「根拠法はどこにあるか」の検討など、法案整備で忙しくなりそうだ。