第174回(7月1日)原油高騰で一斉休漁 NATOや産油国視察
 原油高騰が日本漁業を直撃し、6月中旬にイカ釣り漁船が一斉休漁したのに続き、7月はマグロなど12漁協団体も一斉休漁に入る予定である。1回の出漁で昨年の2倍以上の燃料費がかさみ、出漁の度に赤字を出して元が取れないためだ。休漁で供給量が減ると、魚が値上がりし消費者の魚離れが懸念される。私が事務局長を務める東海・黄海沖合漁業問題議員懇談会(座長・山崎拓前副総裁)は6月10日、日本遠洋施網漁業協同組合などの要請を受けて3者(政官業)懇談会を開き、①燃料価格高騰分の補てん ②価格上昇分を漁価に転嫁する調整保管制度の充実 ③漁労経費削減のための水揚げ容器の改善・普及  ④A重油免税措置の改善――など燃油高騰の支援策について意見を交換した。この結果、政府は同26日、原油高騰緊急対策関係閣僚会議を開き、➀非常事態対応の抜本的対策を導入 ➁水産業燃油高騰緊急対策基金を積極的に活用し省エネルギー型漁業等への転換支援を強化〔平成19年度補正102億円〕 ➂漁獲から出荷までの生産体制を改革し省エネルギー等で収益性を向上する漁船漁業改革推進集中プロジェクトについて支援対象を拡充〔50億円〕 ④緊急に資源回復を図る魚種の減船、休業等への経費支援を拡充〔14億円〕―――を決めた。 英ブラウン首相は「第3次石油ショックが再来しかねない」として、洞爺湖サミットの中心テーマに原油対策を据えるべきだと提唱しているが、予備会議として開いた主要8カ国(G8)のエネルギー相会合(6月初旬)、財務相会合(同中旬)でも具体策は見出せなかった。原油高騰が「投機的側面」にあるのか、単に「需給関係」にあるのか不透明であるからだ。幸い私は6月末から、「国連平和協力調査議員団」に参加し、ベルギーのNATO本部やクウェートでの航空自衛隊のイラク空輸活動など平和協力の現状を視察するが、日本が原油を輸入する第2位の国・アラブ首長国連邦(UAE)やカタール、シリアなど中東諸国も訪問するので、原油高騰の背景など産油国の実態について見聞を広めてきたいと考えている。

昨年の2倍以上に燃料費高騰
 全国いか釣漁業協議会(東京都)は、20道府県の小型イカ釣り漁船(5~30トン)約3000隻に呼びかけ、17~19日にかけて一斉休漁した。北海道の函館いか釣漁業協議会(約70隻)、新潟県小型いか釣漁業協議会(約60隻)、長崎県・壱岐周辺を主な漁場とする佐賀県玄海漁連(13漁協加盟=約270隻)などだ。全漁連によると、A重油の標準的な小売価格は、03年の平均で、1キロリットル当たり約3万9000円だったのが、07年は約6万9000円と約1・8倍に上昇。08年に入ってからも値上げは加速して半年間で約3割上昇し、6月は約10万5000円になった。13万円になると全国約12万5000ある漁業経営者(個人や法人、任意組合)のうち18~36%が廃業に追い込まれ、約570万トンの国内漁業生産量の32~48%が減少すると全漁連は試算している。イカ量は集魚灯に重湯を消費するので、1回の出漁で消費する燃料は1200リットル。船の速度を落として燃料を節約しても、昨年の2倍以上の1万2000円~1万5000円の燃料費がかかるとされる。それに箱代、氷代を入れると2万円は必要で、仮に9万円程度の水揚げがあって7万円で卸せても、2万円程度は赤字になるという。イカが捕れない時はさらに厳しい。

マグロなども中・下旬に休漁
 これが遠洋マグロ船になると、1隻当たり年間1000キロリットルの燃料を使い、全経費に占める燃料費の割合は20%強から40%近くに跳ね上がる。大日本水産会、全漁連など漁業12団体は、ほぼ全ての漁業者を対象に全国的な一斉休漁を7月中・下旬に1~2日間実施するよう呼びかけている。マグロ資源の枯渇を救済するため、遠洋マグロ漁の漁業者で作る「日本かつお・まぐろ漁業協同組合」(日かつ漁協)は5月末、マグロ延縄漁船の一部休漁を行うことを早々と明らかにした。この2年で2倍に高騰した燃料高とマグロの資源状態が悪化し採算割れが続いているため、組合外の船を含む約380隻の2割以上が数ヶ月に渡って休漁することを検討したものだ。休漁の主な対象は、大衆マグロのメバチやキハダが捕れる太平洋、インド洋などを漁場とする漁船。日本の遠洋マグロ漁で組織的に休漁するのは初めてのケース。日かつ漁協は約2650隻の会員に加え、任意団体の全国遠洋かつお・まぐろ漁協者協会など、他の団体にも協力を呼びかける。

漁船減・魚価上がり魚離れ拍車
 休漁の規模や期間は今後詰めるが、資源回復の効果や既に4ヶ月間の一部休漁に入っている台湾の例を参考に決める。共同歩調で資源回復を図るため、中国や韓国にも休漁を呼びかける考えだ。ただし、高級魚のクロマグロとミナミマグロは既に国際的なマグロ資源管理機関が漁獲枠の削減などを打ち出しているため、今回の休漁対象には考えていない。休漁すれば国際競争力の低下が懸念されるし、乗組員が他業種に移ったり船が減って、魚貝類の供給量が維持できず、日本の漁村が崩壊する恐れもある。東京・築地市場は直ちに釣りイカに1・5倍の高値をつけたが、供給量の減少は今後、食卓で親しまれた大衆マグロやイカ刺しの値上がりに響き、消費者は肉食に切り替えるなど魚離れに拍車が掛かると見られる。重油高騰は、マイカーのレギュラーガソリン価格を170円の大台に乗せ、漁船の洋上燃料価格を1キロリットル当たり約12万円に迫るほどべらぼうに引き上げ、我が国の漁業に深刻な影響を与えている。私は原油高騰の恩恵に湧くアラブ諸国を回り、先物取引など高騰メカニズム、不透明な需給システムなどをじっくり勉強して来るつもりだ。
<国連平和協力調査議員団(嘉数知賢団長)の日程と主な訪問国の概要は次の通り>
  【日程】
 6月30日23:15 関西空港発=JL<所用10時間30分>       機内泊
 7月 1日             04:45ドバイ(アラブ首長国連邦)着 
  07:15 ドバイ発   09:30ダマスカス(シリア)着    同泊
    2日12:25 ダマスカス発 14:35クウェート着         同泊
    3日09:45 クウェート発 11:00ドーハ(カタール)着 
     13:00 ドーハ発   16:40ハルツーム(スーダン)着   同泊
    4日19:20 ハルツーム発 <所用3時間55分>         機内泊
    5日             00:15ドバイ着
      02:05ドバイ発    06:10ウイーン(オーストリア)着  同泊
    6日13:50ウイーン発   15:45ブリュッセル(ベルギー)着  同泊
    7日18;10ブリュッセル発 19:10フランクフルト(ドイツ)着
     21:05フランクフルト発=JL<所用11時間15分>     機内泊
    8日              15:20成田空港着

【訪問国概要】
        <中東の産油国UAE、シリア>
 ①アラブ首長国連邦(UAE)のドバイはアフリカ、アラブ諸国訪問の中継点で、私も過去2回のアフリカ外遊の往復に立ち寄った。潤沢な石油収入で近代的な高層ビルが建ち並び、欧米の保養地としても有名。UAEはアラビア半島の南東部、ペルシャ湾の出口、7つの首長国で構成。大部分は砂漠で高温多湿。サウジアラビアに次ぐ原油輸入元で対日輸出は石油など183億ドル(04年)。最大の輸入相手国だったが02年に中国に抜かれた。中東・アフリカの販売拠点として日本の進出企業は140社で在留邦人1615人。
 ②シリアは国土が日本の約半分で大半が砂漠。「肥沃な三日月地帯」と言われ、地中海に面しイラク、トルコとは隣り合わせ。西部は平野、東部から北部のユーフラテス川周辺は草原だ。ゴラン高原に接したダマスカスは海岸部で地中海性気候という。イラク軍のクウェート侵攻後、地上部隊約2万人をサウジアラビアに派遣して多国籍軍に参加し反イラク・アラブ陣営の中核となったが、イラク領での戦闘参加は拒否した。ブッシュ米政権は、イラン、北朝鮮、シリア、スーダン、キューバの5カ国を「テロ支援国」に指定し「ならず者国家」と非難してきた。イスラエルが2007年9月、北朝鮮支援の原子炉があるとして空爆したが、(北朝鮮の指定解除に当たり)国際原子力機関(IAEA)の調査団が6月22~24日まで空爆現場の疑惑施設を調査した。産油国で在留邦人236人。
        <400万人難民のスーダン>
 ③クウェートはイラクとサウジアラビアに挟まれたペルシャ湾最奧の石油・天然ガス産出国。イラクはこの資源を奪おうと90年8月2日に「併合する」と宣言して侵攻し、91年1月からの湾岸戦争の発端となった。03年3月開戦のイラク戦争では米軍などに出撃基地を提供。航空自衛隊はC130輸送機を使ってサマワの陸自へ物資を補給、現在もなお、特別措置法によってクウェートからイラク駐留米軍などへの物資輸送に従事している。
 ④カタールはペルシャ湾に突き出た石油産出の半島国。大部分が平坦(最高地が海抜100メートル)な砂漠地帯で高温多湿だが雨量は少ない。輸出入とも日本が主要な貿易相手国。原油輸入79億ドル(04年)輸出は自動車など約6億ドル。在留邦人は279人。
 ⑤北アフリカ・スーダン共和国のハルツームは南部沼沢地帯を貫通した白ナイル川と青ナイル川が合流する地点。スーダンは1983~05年にかけ、内戦でアラブ系民兵が組織的に黒人住民を殺害し続け、米国などがジュノサイド(民族大量虐殺)と主張したが、長く続いた内戦と干ばつで約400万人の国内避難民などで経済再建上の難問を抱える。
首相は6月30日、アフリカの平和構築に積極姿勢を示すため、来日中の潘基文国連事務総長に国連平和維持活動(PKO) 部隊の「国連スーダン派遣団(UNMIS)」司令部の要員として自衛隊員数人を派遣する方針を表明した。

<NATO、EUの中枢機構>
 ⑥ベルギーの首都ブリュッセルには、大西洋条約機構(NATO)の本部事務局、欧州連合(EU)の閣僚理事会事務局と欧州委員会本部、南部モンス近郊カストーに欧州連合軍最高司令部(SHAPE)がある。フランスはドゴール大統領当時の1966年にNATOの統合軍事機構から脱退したが、サルコジ現大統領は14年ぶりに改定する国防白書で「独自核の保有・運用継続とEUの防衛力強化」を条件に、全面復帰する方針を掲げた。NATOは米国の核の傘を前提に大西洋国家の集団安保体制として出発したが、冷戦構造の崩壊とEU加盟国の増加でNATOの役割は大きく変化してきた。その中で、NATOを道具に世界の軍事戦略を進めようとする米国に対し、NATO発足時からの中核加盟国であったフランスは、統合軍事機構に復帰した後、欧州防衛力の強化に向けて主導権を握ろうとしている。 また、EU外相理事会は6月17日、アイルランドの国民投票でEUの新たな基本条約「リスボン条約」批准が否決されたのを受けて、善後策を協議した結果、EUとしては引き続き同条約の発効を目指す方針を確認した。このように、我々議員団(嘉数団長)の視察は、NATOとEUの中枢機関があるブリュッセル、空自輸送活動のクウェート、国連難民活動のハルツームなど文字通り「国連平和協力調査」に重点が置かれる