第168回(4月1日)捕鯨妨害がエスカレート 警告投擲弾で応戦
 日本調査捕鯨船団を襲う米国環境保護団体「シー・シェパード(SS)」船の妨害が凶暴にエスカレートしてきた。英ヒースローで3月6日から開いた国際捕鯨委員会(IWC)の中間会合は8日、日本政府代表が提案したSSの過激な抗議活動を非難する声明を全会一致で採択した。SSの「スティーブアーウィン」号に対しては母船「日新丸」に乗船している海上保安官が7日、警告弾(音響投擲弾)7発を投げ込んだ。SS船は燃料切れを理由に豪州へ向かったが、給油後は「抗議船を2隻に増やして南極海に戻る」と広言している。自民党の中川昭一元政調会長(元農水相)は9日、テレビの報道番組で「海賊行為だ。正当防衛として、きちんとした武力行使をやるべきだ」と述べ、威嚇や“撃沈”もやむを得ないとの考えを示した。IWCは2007年5月の米アンカレッジでの年次総会から捕鯨支持国と反捕鯨国の対立が解けず、機能不全の状態が続いている。6月にチリのサンチャゴで開く年次総会でも、調査捕鯨と過激なSS抗議活動の規制措置が話し合われよう。私は党の前水産部会長として出来れば年次総会に出席したいと検討中だが、中川氏同様、早急に妨害行為を防ぐための国内法整備に取り組みたいと考えている。

酪酸液体飛び散り3人軽傷
 水産庁に入った報告によると、3日朝、南極海を航行していた日本調査捕鯨船団の母船「日新丸」が「シー・シェパード」船「スティーブアーウィン」号から液体入りの瓶や白い粉の入った袋を計100個以上投げつけられた。一部の瓶が割れて液体が飛び散り、甲板の乗組員1人と海上保安官2人の計3人が目の痛みを訴えた。米環境保護団体のSS船は2日午前中から日新丸の追跡を開始。日新丸は安全確保のため離れるよう警告したり放水したが、約10メートルまで近づかれ、約1時間にわたり妨害行為を受けた。投げつけられた液体は激しい臭気を放っており、酪酸(腐敗チーズ製)と見られる。酪酸は弱酸性の油状の液体で、原液が目にはいると失明の恐れもあるが、3人は目を洗浄して回復した。環境保護団体の妨害活動は今年早くも4回目。最初は1月15日で、SSに所属する豪州と英国の活動家2人が調査捕鯨船の「第2勇新丸」に無断で乗り込み、同18日には「第3勇新丸」に液体の入った瓶が10個ほど投げつけられた。同22日には国際的な環境保護団体「グリンピース」の船が「日新丸」の燃料補給を妨げるなどの行動を行っている。

警視庁、威力業務妨害で捜査
 日新丸は昨年2月9日にも同団体の船から発煙弾を発射されたり、スクリューに向けてロープを投げ入れられたりして、乗組員2人が瓶に入った薬品を顔などに浴びて軽傷を負っている。同団体の抗議行動は発煙筒やゴミだけでなく酪酸を瓶詰めして投げつけるなどここ数年エスカレートしている。このため、日新丸に乗船している海上保安庁の海上保安官は7日午後、再び日新丸に接近し、悪臭を放つ液体入り瓶6、7個と粉入り袋10個を投げ込んだSSに対し警告弾7発を投げ、うち1発は抗議船の甲板上に落ちた。警告弾は密漁の取り締まりなどで警告を発するために使われてきたが、人に危害を加えるものではなく、武器には該当しない。海保を所管する冬柴鉄三国土交通相は「再三の警告を無視しており、警告弾の使用は正当な行為」とするコメントを発表。町村信孝官房長官も妨害活動を厳しく批判し、対抗措置を講じる考えを示した。警視庁公安部も昨年2月来、傷害や威力業務妨害容疑で捜査を進めている。水産庁は「調査捕鯨は国際条約に基づく正当な行為」としており、SSの活動拠点がある豪州政府などに対し再発防止を求めている。

IWC中間会合で非難声明
 SSのポール・ワトソン代表は「ライフルの銃撃を受け、3人がケガをした。弾が残っている」などとホームページで主張しているが、海保では「甲板上に落ちた警告弾の付近に人はいなかった。弾は火薬を紙で固めたものなので残ることはあり得ず、当たってケガをすることもない」と述べている。英ヒースローで開かれたIWCの中間会合は8日、日新丸がSSから薬品入り瓶などを投げ入れられたことに対し、「IWCと締約国は、人命と財産に危険を及ぼすすべての活動は受け入れられない」と、SSの過激な抗議活動を非難する声明を発表して閉幕した。日本政府代表の提案だが、IWCが特定の団体を名指しで非難するのは初めて。声明は、IWCと締約国が国際法と国内法規に沿って、海上での人命と財産に危険を及ぼす活動の防止と抑制、攻撃者への対処について、協力することを強く要請するもので、全会一致で採択された。声明には「SSが受け入れがたい振る舞いと行動をとったことから87年以降、IWCへのオブザーバー登録を拒否していることを想起した」と明記された。調査捕鯨に反対している豪州のスミス外相も前日、「豪州政府は負傷や失明に繋がる危険な行為をしないよう強く求める」との声明を発表していた。

人体に害与えぬ忠告の投擲弾
 日本捕鯨協会の中島会長は「海上保安官のとった行動は、乗組員の安全を守るための当然の措置である。投擲弾は空中で破裂する警告弾に過ぎず、人体に害をもたらすものではない。今まで何も反撃しなかった日新丸が反撃したのでよほど慌てたのだろう。虚偽の発言を通り越して滑稽ですらある」とSS側を非難。さらに、IWCの決議を歓迎して、「決議はSSに妨害行動の停止を求め、加盟各国にこうした犯罪者への対処に協力を求めている。SSの活動拠点である豪州には2度と寄港させないよう、船籍国のオランダには直ちに船籍を剥奪するよう、関係国には犯罪者の処罰など厳正な対処を求めたい」と発表した。(財)日本鯨類研究所の森本稔理事長も、「発砲弾が防弾チョッキで止められたとのワトソン談話は、豪州マスコミ向けの作り話に過ぎない」とし、@海上自衛官は、異常接近し酪酸入り瓶で繰り返し襲撃してきたSSに対し、2度大声で警告したA3回目の異常接近の際、威嚇のため4つの警告弾を上空に投擲したが、これは「サウンド・ボール」や「サンダーフラッシュ」装置と呼ばれる軍事訓練用の投擲弾だBSSの主張するスタングレネード(手榴弾)でも反動グレネードでもなく、上空で爆発する際に大きな音を出すが、人体には害をもたらさない忠告用の警告投擲弾だ――と解説している。(SS襲撃のビデオは同研究所のHPの :http://www.icrwhale.org/index.htm  で見ることが出来る)

豪州はカンガルー4百頭虐殺
 読売は3月14日朝刊に「カンガルー駆除はよいのか」という、皮肉たっぷりな記事を載せた。豪州のギャレット環境相が12日、首都キャンベラで、野生のカンガルーが過剰繁殖し環境に悪影響が出てきたとして、約400頭を薬物注射で安楽死させると発表したからだ。これに対し、豪州の動物愛護団体などは「カンガルーを他の地域に移送させるべきだ」と反発し、「人間の盾」などで実力阻止する構え、と報じている。ロイター通信によると、元ビートルズのポール・マッカートニー氏も、英国動物愛護団体のHPに「カンガルーを守るため行動を起こす時だ」と、豪政府非難のメッセージを寄せたという。ギャレット氏も政界入りする前はロック歌手として活躍、国内の環境保護団体の会長を務め、93〜94年は「グリンピース」の役員も務めた。同団体は前述の通り、今年1月に日本の調査捕鯨船に妨害行為を働いている。環境相は捕鯨問題も担当しており、カンガルー虐殺計画の自分の蛮行は棚に上げて、「捕鯨は野蛮だ」と日本批判の急先鋒に立っている。余談ながら、マッカートニー氏は17日、英裁判所から「別居中の妻ヘザーさんに離婚の慰謝料47億円(資産の約3%)を支払うよう」命令を受けた、とロイターは報じた。

南極捕鯨巡り日豪対立深まる
 前にもHPで特集したが、豪州のラッド政権は昨年11月の総選挙で親日家のハワード政権を倒して以来、南極海の捕鯨を巡って日豪対立を深め、アジアでは外交の重心を中国に移し変えつつある。ラッド首相は3月27日から4月13日にかけて、ワシントン、ブリュッセル、ブカレスト、ロンドン、北京を訪問するが日本には立ち寄らない。読売によると、豪州にとって長年、最大の貿易相手国は日本だったが、豪中貿易額が07年に豪日の貿易額を抜き、中国が最大の貿易相手国になったという。ラッド首相は中国大使館勤務の外交官出身で、中国語能力と中国人脈を誇り、娘が中国系豪州人と結婚し、息子が中国に留学するなど中国との縁も深い。豪州はザトウ鯨の「ホエール・ウオッチング」が盛んで、元々「反捕鯨」世論が強く、与野党ともに反捕鯨を掲げ、ハワード前政権も例外ではなかった。ラッド首相は1月、スミス外相を東京に派遣、高村正彦外相との間で捕鯨問題が両国関係に悪影響を及ぼさないよう努める点で一致したが、南極海に捕鯨監視船を派遣したり、国際法廷への提訴検討を表明したり、国民の支持取り付けに躍起になっていた。6月のサンチャゴIWC総会では、各国ともに農水相よりも環境相が主導権を握って「反捕鯨」活動を展開するが欧米豪の中では今回も豪州が旗振り役を演じることになりそうだ。