第165回(2月16日)諫早―長崎早期着工へ 建設費調達が難関
 政府・与党が昨年末、整備新幹線の「諫早―長崎」など3区間について早期着工を目指す方針で合意したことから、各地元では建設への期待感が盛り上がっている。しかし、総額2兆円超の建設費は、新幹線を運行するJRではなく、国と地方の自治体が2対1の割合で負担し、「無借金」で整備する厳しいルールだ。このため、自民党の整備新幹線等鉄道調査会(会長・久間章生元防衛相)と整備新幹線建設促進議連(会長・森喜朗元首相)は1月29日、合同会議を開き、整備区間の延伸に伴う財源の確保策を協議した。会合ではJRの「応益負担」を望む声が相次いだ。私は@新幹線が在来線を走る肥前山口―武雄温泉間は複線化すべきだAフリーゲージトレインの実証実験は佐世保で実施してほしい――などを要望した。財源確保策では2012年度以降に順次開業する路線の施設貸付料の前払いをJR各社に求める案が浮上しているが、久間会長は「JRは受益に応じたバランスを取ることが必要だ。成案と行かないまでも、年度末(3月末)までにめどは付けたい」と記者団に語った。私も何とか難関をクリアして着工にこぎ着けたいと鋭意努力している。

財源確保など5条件が前提
 政府・与党は昨年12月14日、整備新幹線検討委員会を首相官邸で開き、「新函館―札幌」(北海道)、「金沢―敦賀」(北陸)、「諫早―長崎」(九州・長崎ルート)の3区間について、早期着工を目指す方針で合意した。ただし、新規着工には@財源が確保できているA採算が合うBJRが同意しているC並行在来線をJRから経営分離することに沿線自治体が同意しているD投資効果が確認できている――の5条件を満たしていることが前提となっている。この中で最もハードルが高いのが財源確保で、国と地元自治体が2対1の割合で負担し、「無借金」で整備する建て前。公共事業費が毎年3%削減され、平成20年(08年)度は6.7兆円に減少している中で、整備新幹線の整備財源は同17年度以降、毎年706億円が維持、継続されており、20年度も同額が計上されている。線区別では22年度完成の「八戸―新青森間」と「博多−新八代間」、26年度完成の「長野―金沢間」、27年度完成の「新青森―新函館間」が目下建設中だ。

JR賃貸料は北陸の借金返済
 建設は国の独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が行い、完成後は機構が線路などの施設を保有する。JRは同機構に線路などの賃貸料を払って新幹線を運行する。当初はJRからの賃貸料を新しい整備新幹線の建設などに活用するはずだったが、98年開催の長野五輪に間に合わせ開業するため、財源が確保できなかった「高崎―長野」(北陸)は例外的に2800億円の借金をして建設した。整備新幹線は、1973年に計画したもので、@「新青森―札幌」(北海道)A「盛岡―新青森」(東北)B「東京―長野―金沢―新大阪」(北陸)=「東京―高崎」は上越新幹線と共用=C「博多―鹿児島中央」(九州・鹿児島ルート)D「博多―長崎」(九州・長崎ルート)――の5路線。このうち、東北の「盛岡―八戸」、北陸の「高崎―長野」、九州の「新八代―鹿児島」の3区間が既に開業している。開業3区間でJRが払っている年275億円の賃貸料は、すべて「高崎―長野」建設の借金返済に充てられ、新たな建設には活用されていない。

根強いJRの一部応益負担論
 政府・与党内では、現在建設中の「八戸―新青森」などの区間が開業したら、JRが機構に支払う賃貸料を担保に、機構が債券を発行して建設資金を調達する案が浮上している。将来支払われる賃貸料を前借りして整備費に活用する仕組みだ。しかし、貸付料は年200億〜300億円と見込まれ、10年分を前借りしても、事業費総額の1割程度にしかならない。そこで、与党内には、「整備新幹線が遠くまでつながれば、既存の新幹線も乗客が増える」ことを理由に、JRにも建設費の1部負担を求める意見が強い。自民党が1月29日に開いた整備新幹線等鉄道調査会(久間会長)と整備新幹線建設促進議連(森会長)の合同会議では、久間会長が「政府は財源のめどが立っていない段階で、未着工の整備に言及することに躊躇している。財源問題は政府と党が一体となって検討していく必要がある。貸付料は今のように一律の算定方法でよいのか、売り上げに応じた額など今後の検討が必要だ」と挨拶。大口清一国土交通省鉄道局長らの説明に対し、出席者からは、今後開業する区間の施設貸付料の前払いや既開業区間の貸付料の再算定などで、JR側に負担を求めるべきとの意見が相次ぎ、2月中にも新規着工を認可するよう求める声が続出した。

肥前山口―武雄の複線化要求
 同会合で私は「今までは並行在来線問題の解決に支障を来すといけないので言及しなかったが、西九州ルートが開業した時、佐世保線は単線のため肥前山口―武雄温泉間を複線化しないと列車運行に支障を来す。是非複線化を新幹線計画に位置づけてほしい。また、フリーゲージトレイン(軌間可変電車)の実証実験は佐世保で実施してほしい」と2点に注文を付けた。冨岡勉議員は「西九州ルートの効果を最大限活かすには、長崎までの延伸が是非必要」と訴えた。久間会長は閉会後、「JRの応益負担」について記者団の質問に答え、「まだ、JRとの貸付料論議は始めていないが、JRは受ける受益との関係をよく考えないといけない。新幹線を札幌まで延ばした場合に、JR東日本も利益が増えるが、その費用をJR北海道にだけ負担させていいのかという議論がある。同じことが九州、北陸にも言える。九州新幹線でも整備後の利益はJR西日本の方が多い。こうしたことを念頭に議論しているが、そのやり方はJRが困らないように考えないと、JRが行う新規投資とのバランスもある」と慎重に応益負担の折衝を進める姿勢を示した。

長崎・佐賀県、JRが3者合意
 だが、国交省の幹部は「冬柴鐵三国交相は『JRから強制的に取るやり方はしない』と言っており、与党や政府が一方的に金額を算定してJRに払わせるようなやり方にはならない。貸付料は鉄道運輸機構とJRとの契約関係であり、JRと関係なく政府・与党で一方的に金額を決めて整備の前提とするのはリスクが大きい」と述べている。JRは賃貸料以外の追加負担に反発しており調整は難航気味だ。金子原二郎長崎県知事は、昨年12月14日の政府・与党整備新幹線検討委員会の合意事項を、「30数年来の県政最大の懸案事項であった西九州ルート着工に道筋をつけた」と喜びのコメントを発表したが、この後、長崎、佐賀両県と九州旅客鉄道(JR九州)の3者は同16日、検討委の合意事項を真摯に受け止め、早期着工に向けた具体案を検討した。その結果、@JR九州は肥前山口―諫早間の全区間を経営分離せず、上下分離方式で運行することとし、開業後20年間運行を維持するAJR九州は、これに伴う負担に対処するため、新幹線開業までに肥前山口―諫早間の路線等の設備修繕を集中的に行ったうえで、長崎、佐賀両県に有償で資産譲渡を行う。その対価(14億円)は両県がJR九州に一括して支払う――との基本合意に達した。

年度内着工目指しWGが会合
 政府・与党新幹線検討委の合意事項では未着工区間の財源確保、地方負担・償還が地方財政に過大な負担とならないようにする措置、並行在来線などの諸課題を検討するため、政府・与党ワーキンググループが設置された。メンバーは、与党整備新幹線建設促進プロジェクトチームの津島雄二座長(自民)、井上義久同座長代理(公明)、久間自民党整備新幹線等鉄道調査会長、大野松茂官房副長官、谷口隆義総務副大臣ら。第1回会議は1月23日に開催、「西九州ルート(武雄温泉―諫早間)は年度内着工ができるようにする、を共通認識とする」ことを申し合わせた。国交省はこの席で「武雄温泉―諫早間の投資効果とJRの収支採算性は現在計算中で、2月中旬頃には出せる」と報告した。WGの次回会合は2月中旬〜下旬に開催を予定し、国交省から投資効果とJR収支採算性の報告を受け、了解することにしている。整備新幹線が開通すれば観光客が増え、地域活性化につながる。

外人観光客誘致は世界32位
 フランスには年間7600万人の外人観光客が訪れるが、日本は733万人と10分の1以下で世界32位。アジアで比較しても中国、マレーシア、香港 の上位3位に水をあけられて7位である。政府は昨年12月「観光立国推進基本法」を制定、10月に国交省の外局として観光庁を設置する運びだ。観光の振興と人材育成、国際競争力のある観光地形成、史跡の観光資源化などを推進、2010年度までに1千万人、将来的には2千万人の外国人旅行者を誘致したい考えだ。外国人の観光旅行消費額は30兆円を目標にしている。政府もようやく観光行政に本腰を入れ始めたが、長崎県は出島が江戸時代にオランダなど欧州に開かれた日本唯一の玄関口であったことから史跡が多い。毎年2月に開催の長崎ランタンフェスティバルでは中国獅子舞や龍踊りが人気の演し物になっており、観光資源も豊富だ。しかし、県民所得は221万2千円で、東京都の477万8千円に比べ2分の1以下、残念ながら、最下位の沖縄から数えて、高知、青森、宮崎に次ぐワースト5番目だ。

新幹線佐世保駅は平成玄関口
 地域活性化には「観光立県」が手っ取り早い。昇竜の勢いの中国から観光客が増えている。敗戦後、旧満州からの同胞が何十万人となく胡廬島(中国)から佐世保、博多の港に引き揚げてきた。山東半島の威海衛や大連、上海など中国大陸の港と佐世保港を高速艇で結び、航空路よりも安全・安価な船便で、今後増大する中国の富裕層を長崎へ運べば、整備新幹線の佐世保駅は全日本の観光地に外人客を送り出す「平成の玄関口」となる。そのためにも、西九州ルートの早期着工は喫緊の課題。私も大いに力を注いでいるところだ。