第161回(12月16日)税制改正(中)揮発油暫定税率で攻防 総選挙の大争点に浮上
 自民、公明両党は12月13日、08年度予算編成の中核となる与党税制改正大綱をまとめた。来年3月末で期限が切れる揮発油税などの暫定税率の維持、消費税増税への布石、都市と地方の財政力格差是正のための地方法人2税の配分見直し、「金持ち優遇」との批判がある証券優遇税の条件付き2年間延長、中小企業の事業承継税制の拡充などだ。このうち、道路特定財源は@暫定税率の来年度以降10年間の維持A道路整備費を国土交通省素案の65兆円から6兆円減額――などを決めた。消費税は増大する社会保障費の「主要財源」と明記し、09年度の基礎年金国庫負担を2分の1に引き上げるのに備えたが、引き上げ幅や時期は示さず抜本的改革は先送りした。地方法人2税の税収は東京都と長崎県で6.1倍の格差があるため、東京などから法人事業税の一部を財源難の自治体に回すことを決めた。私は自民党税制調査会の審議には毎回出席してきたが、道路特定財源、地方法人2税はともに地方活性化のために重要と考え、税制大綱作りに向けて努力してきた。だが、民主党が暫定税率の廃止を打ち出したため、通常国会は冒頭から波乱含みとなろう。

30年間維持した暫定税率
 道路特定財源の暫定税率は、「列島改造論」を出した田中角栄元首相が高度成長期の74年に導入した。揮発油税(ガソリン税)は1リットルあたり約54円。本来の税金約29円に加えて、約25円が上乗せされている。これが暫定税率だ。30数年間維持してきたため日本の幹線道路網は著しく整備された。
 道路公団改革を断行した小泉純一郎元首相は、道路特定財源の「一般財源化」を打ち出し、安倍政権は昨年末、道路整備で余った時だけ同財源を道路以外に使うことを決めた。しかし、原油高により、レギュラーガソリン価格は2年前より1リットルあたり20円超の約155円に値上がりした。暫定税率を廃止すればガソリンは2年前の価格に値下げできる。元々受益者負担が原則である道路特定財源を一般財源化することにユーザー、メーカーともに反対している。朝日の世論調査でも暫定税率の維持に賛成は21%で「辞めるべきだ」が68%を占めた。

中期計画で死守図る国交省
 道路特定財源の上乗せ部分である暫定税率の期限は来年3月末だが、期限が切れて上乗せの暫定税率が廃止されれば、特定財源はほぼ半減する。特定財源を死守しようとする国土交通省は11月13日、08年度から10年間の道路整備中期計画素案を発表した。素案は「真に必要な道路」の事業量を示すもので、地方自治体の負担などを含めた事業費として「地域の自立と活力を強化」(33兆円)や「国際競争力の確保」(24兆円)など道路整備に65兆円を計上した。これは5カ年計画(03年度〜07年度)の実績である年6.5兆円をベースにした。高速道路料金値下げなど道路関連事業3兆円を含め、計68兆円の事業費を見込んでいる。国費はこの道路関連事業3兆円を含め35兆5千億円で、道路特定財源の収入31兆〜34兆円を使い切る計算。「余剰分」を生じさせないように特定財源を使い切る収支トントンの「逆算」を行っている。7月の参院選では公共事業費削減が地方での敗北に繋がったとの党側の意向もあり、「地域の自立と活力を強化」では、市町村の中心部から病院や観光施設などを結ぶ生活幹線道路17万キロを抽出。約5千区間(1万3千キロ)に、7.6兆円で道路拡張などを実施する計画だ。

6兆円削減し高速料金下げ
 しかし、国交省の「税収を全てつぎ込んで道路をつくる。道路以外には使わせない」とする省益優先の態度に国民の反発は強く、暫定税率の廃止によるガソリン価格の値下げに期待するユーザーの方が多い。そこで、政府与党は6日、道路特定財源に関する協議会を開き、暫定税率の10年間維持を決める一方で、一般財源化される税収の使途に、環境目的を盛り込むことで合意、道路整備中期計画は国交省素案で示した65兆円の道路整備費を6兆円減額、59兆円にした。これで、地方の道路整備のため自治体に対する無利子貸付制度(5年間、総額5千億円規模)を創設するほか、@自治体への補助率を現行の55%から最大70%まで嵩上げA道路特定財源から10年間で2.5兆円を高速道路料金の引き下げやインターチェンジ増設などに回す――などを決めた。中期計画の削減で、07年度の1800億円を上回る額を一般財源化でき、地方への無利子貸付制度から返済される年1千億円分を国債の返済資金に充てることが可能になった。また、公明党が自動車重量税の引き下げを主張したことに配慮し、「道路の整備状況、環境への影響、厳しい財政状況も踏まえつつ、暫定税率を含め自動車関連諸税を総合的に見直す」ことを盛り込んだ。

民主は暫定税率廃止で対決
 民主党は近く発表する税制改革大綱で
@道路特定財源は一般財源化し、揮発油税と自動車重量税の暫定税率を撤廃する
A両税とも将来は廃止し、揮発油税は「地球温暖化対策税」に振り替え、自動車重量税は自動車税と統合する
B自動車取得税は消費税との二重価税に問題があるので廃止する
C消費税は5%の税率を維持し全額を年金財源(基礎部分)に充てる
D証券優遇税制は譲渡益課税を本来の20%に戻し、配当課税は軽減措置を維持する
E創業初期の中小企業への法人税を軽減し、事業承認税制の負担軽減を検討する――を打ち出す。
 元大蔵官僚で税専門家の藤井裕久同党税制調査会長がまとめたもので、通常国会に道路特定財源の廃止と「地球温暖化対策税」の関連の法案を提出する方針だ。同党はこれまで揮発油税の暫定税率維持を主張し、党内でも意見が割れていたが、原油高騰でガソリン代引き下げを期待する世論を配慮して方針を転換した。政府与党と真っ向から対決し、解散・総選挙に追い込む戦略だが、暫定税率維持の国民新党との間に亀裂が走っている。

テロ対策法以上の紛糾要因
 問題なのは、民主党が暫定税率の廃止を唱えたことで、税制改正が新テロ対策特措法の成否以上に国会の紛糾要因となることだ。2月末〜3月上旬に衆院通過させれば30日後に自然成立する予算案と違って、60日ルールを念頭に置いて、3月末に期限が切れる暫定税率を維持するには、通常国会開幕直後の1月下旬に関連税制法案を衆院通過させて置かなければならない。来年は閏年で2,3月合わせてやっと60日だ。召集を早めて1月18日に開会し通年国会化しても、新テロ対策特措法の成立が年明けにもつれ、予算編成が越年化したら時間がない。施政方針演説や代表質問、補正予算案処理、予算委総括質疑に最低約10日間を考えれば、1月中の税制法案審議の日程はほとんどない。それを強行採決して衆院通過させれば、肝心の予算案審議どころか国会は全面ストップして麻痺状態。予算成立後に政策協議する「話し合い」解散も出来ず、冒頭解散以外に選択肢はなくなる。

ガソリン代値下げ望む国民
 民主党が戦術転換したのは、「原油高が進む中での暫定税率廃止はガソリン価格に直結し、国民の理解が得やすい」「都市に比べ地方は車の保有台数が多く、道路をつくるよりガソリン代引き下げの方が住民のメリットは大きい」と幹部が判断したからだという。確かに過疎化現象で路線バスの廃止が進み、地方の足は自家用車に頼らざるを得ないし、原油高騰でタクシー代、灯油代など物価全てが値上がり傾向にある中で、1リットル当たり上乗せ分約25円の揮発油税がなくなり、ガソリン価格に還元されるならユーザーにとって願ってもない善政。高速料金の値下げも地域住民へのプラスは少ない。早期解散なら道路特定財源は総選挙の大きな争点になろうし、各紙世論調査を見ても暫定税率が一旦、期限切れ廃止になれば、税制復活に国民の賛同は得られまい。この難局をどう切り抜けるか。政府与党は暮れから通常国会冒頭に掛けて、国会戦術の練り直しを迫られているが、党副幹事長の私としても打開策に腐心しているところだ。税制改正(下)の最終回は、石原都知事が11日、3千億円の移譲で首相と合意した地方法人2税の扱いなどを取り上げたい。