北村の政治活動

 (平成13年8月16日) 来年度予算の検討 ODA10%削減の波紋

 「30兆・5兆・2兆は予算編成のキーワード」――。小泉純一郎首相はこう胸を張った。国債の新規発行を公約通り30兆円に抑え、公共事業など従来型の歳出分野は思い切って5兆円削減、代わりに新規の重点7分野に2兆円配分する“メリハリの利いた”歳出改革案だ。これに沿って、首相を議長とする経済財政諮問会議は来年度予算の概算要求基準の基本方針をまとめ10日の臨時閣議で了解を得た。自民党はすかさず検討に入った。

 2%減の一般歳出

 一般歳出は、98年度以来4年ぶりに前年度予算を割り込むマイナス基準とし、総額を01年度予算より2%弱少ない47兆8000億円程度とした。「国債発行30兆円以下は小泉内閣の生命線」(塩川正十郎財務相)であり、公約を達成するため、過去最大の9000億円の歳出削減となる。方針は、公共投資関係費を前年度より10%減額するなど厳しく抑える一方、環境、科学技術振興など構造改革関連の重点7分野には手厚く配分している。

 ODAも10%削減

 私が関心を持つ外交・安保分野でも、防衛経費は聖域とならず圧縮、政府開発援助(ODA)を含む一般政策経費は前年度比10%削減したうえ、削減額の範囲内で、重点7分野を対象に『構造改革特別要求』を設定した。特に科学技術振興費に限っては、5%の上積みを認めている。ODAと特殊法人向けの財政支出は『特別要求』を認めず、スリム化を図る。

 万機公論に決す?

 問題の多い社会保障関係費は前年度予算(17兆4000億円)に比べ、7000億円増にとどめ、事実上3000億円が不足する。小泉首相は同10日の両院議員総会で自民党総裁に再選された。首相は政局運営に自信を深め、@8月初旬に基本方針A8月末に各省の概算要求額決定B9月末に特別要求枠決定C年末の来年度予算案編成――の工程表を推進する構えだ。しかし、党内には各論をめぐって“異論・反論”が多く、首相が言うように「万機公論に決する」ことができるかどうか。ODAは私の所属する衆院農水、厚生労働委などの行政分野にも絡む。そこで、ODAから来年度予算の問題点を逐次探ってみたい。

 ODAの支出効果に疑問

 「原爆を持って、ミサイルで日本を攻撃するかもしれない国に援助している。こんなアホなことあるか」――。塩川財務省は7月、参院選大阪地方区候補の演説会でこう述べ、ODAの見直しに言及した。中国の軍事力強化を懸念して自民党内に高まるODA削減要求を意識しての発言だ。演説の中で、塩川財務相は「今度の五輪(開催地決定)を見ても、たった6票しか応援してくれない。ODA が後で生きているのかどうか」と不満を述べた。2008年の五輪開催地争いで、地元大阪が北京に敗れた腹いせもあっての発言だろうが、塩川財務相と同様、ODAの支出効果について疑問を感じる党員は多い。

 対中国は2兆6千8百億円

 79年に始まった対中国のODAは、99年3月末までの累計で約2兆6800億円。99年,00年度は円借款だけで合計約3900億円に上った。円借款は対中援助の3分の2を占め、これまで5、6年分を一括供与してきた。しかも、中国の経済成長で不要になったプロジェクトにも従来どおりの借款が割り当てられるなど、硬直的な運用が目立っていた。

 98カ国が対象

 ここで注目されるのは、日本から多額の援助を受けながら、中国が建国以来一貫して対外援助を続けていることだ。朝日新聞によると、中国が実施した99年の援助対象国は、アフリカ、アジアを中心に98カ国にも上っているという。事業内容は道路、井戸掘り、住宅整備など土木建設が中心で、活発化する中国企業の投資と結びついているようだ。

 人の褌で相撲取る

 西側世界への対抗策として、第三世界のリーダーを意識する中国が、対外援助を外交の武器に活用したいとする気持ちは分からぬでもない。しかし、ODAは尊い日本国民の血税だ。「人の褌で相撲を取る」ような中国の姿勢に、わが国の納税者は納得できないだろう。財政難に悩む日本が、ODA予算の10%削減を決めるのは当然といえる。

 一括供与を改める

 6月4日の朝日は、「中国だけが聖域ではない」(田中真紀子外相)として、対中援助も例外なく減額し、これまでの数年分を一括供与する方式は改め、候補案件を毎年個別に審査し、必要な資金だけを配分することで、ムダを省き、全体額の削減を目指すーーと報道した。そして次の例を挙げた。対中ODAは、沿海部のインフラ整備を中心に協力してきたが、中国への海外からの直接投資は急増、市場からの資金調達が出来るようになった。

 内陸部が重点

 これらの援助を見直す一方、農産物セーフガード問題のような日中貿易摩擦に繋がる恐れのある援助についても日本産業への影響から再考する必要がある。この結果、貧困地域の多い内陸部への援助に重点を移し、沿海部は隣国日本に影響の大きい環境保全やWTO(世界貿易機関)加盟に関連した人材育成などの援助を強化するーーと朝日は報じている。

 靖国と取引か

 小泉首相の靖国神社参拝に中国が執拗な「外圧」を掛けたのは、ODA予算の減額を牽制する意向の表れともいえる。その意味で、参拝後のぎくしゃくした日中関係を修復するうえで、ODAは取引材料になる可能性を深めている。ともあれ、中国はインドネシアと並ぶ最大の被援助国だが、めざましい経済成長を遂げ、農業、繊維などで日本産業を圧迫している。また、援助を受けながら軍事予算につぎ込み、軍事大国化の懸念がつきまとう。

 党内に賛否両論

 自民党内でも、塩川財務相と同じく「中国脅威論」に絡め、対中ODAを見直す意見が強まっているが、外交関係合同会議で中山太郎外交調査会長は、ODA予算で「厳しい中でも、必要なものは取ってくる」と決意を述べたように、抵抗勢力もかなり多い。これは最近来日する途上国首脳らがODA削減に強く反発するため、友好関係維持の立場から主張するものだ。このようにODA一つとっても、予算案は党内で合意を得るのは難しい。

 回収含め約2兆円

 しかし、ODAが曲がり角にきたことも事実だ。朝日によると、ODA予算は2年連続で減少したが、回収分を含めると年額1兆8196億円(01年度事業予算)に上り、カンボジアなど42カ国にとって最大の援助国(98年)になっている。アジア諸国などのインフラ整備を中心に大型支援をしてきたが、援助の半分は円借款。これは、インドネシアへの戦後賠償の手法を踏襲したものだが、その後は貿易黒字削減を求める「外圧」や、国連安保理事会の常任理事国入りの支持集めもあって、急速に援助額が膨らんだ。

 人材派遣を重点に

 ODAは発展途上国の成長を後押ししてきたが、円借款は日本企業が受注する“ひも付き援助”が多く、相手国の政治家の利権に結びつくケースが多い。相手の国民が真に喜ぶ援助に切り替えるには、無償資金協力の比重を増やすとか、人材派遣や援助の質を向上させることが不可欠だ。日本の雇用問題はさらに深刻化するが、NGOやNPO(非営利組織)を通じ、優れた技能を持つ離職・中高年層や農業技術者を派遣し、途上国のインフラ整備や農業振興などの支援活動に従事させることが、一石二鳥の策であると思う。これらの点を私は所属する衆院各委員会で大いに提言していきたい。