第159回(11月16日)新テロ法案衆院通過 派遣の恒久法質す
 臨時国会最大の焦点である補給支援特措法案は、会期延長後の11月13日、ようやく衆院を通過、参院外交防衛委員会に移って最終攻防に入った。政府与党は35日間延長した12月15日までに成立させて08年度予算案編成に着手する。だが、野党は首相の訪米土産に衆院テロ・イラク特委で強行的に採決したと反発、同特措法案の審議を後回しにして民主党が提出したイラク特措法廃止法案の審議を優先させる構えだ。野党は15日に守屋武昌前防衛次官を証人喚問し、8日に逮捕された宮崎元伸・元「山田洋行」専務との癒着関係、便宜供与の疑惑を追及した。野党が多数を占める参院で補給支援特措法案が否決されることは確実で、与党は衆院で3分の2の多数により再議決する。野党が60日以上もだらだらと審議を引き延ばす場合は憲法の規定で再議決が可能であるため、与党はさらに1月15日まで1カ月程度再延長し再議決する方針である。その場合、野党は首相の問責決議案を提出して抵抗しようと対決姿勢を強めている。ただし、民主党が新テロ特措法の対案要綱をまとめたことから、9日に成立した改正被災者生活再建支援法と同様、与野党協議で法案を1本化する期待もあり、事前あるいは事後の「国会承認」程度の微修正なら応じても良い(自民党幹部)との柔軟姿勢で臨んでいる。

「国連決議万能主義」を否定
 私は6日の衆院テロ・イラク特別委員会で質問に立ち、テロ特措法の延長に対する国民の賛成が増えてきた各紙の世論調査を踏まえ、 
 @自民、民主の党首会談で議題とされた自衛隊派遣の恒久法(一般法)制定
 A給油活動の再開を強く期待する同盟国への説明努力
 B防衛省の不祥事に関する情報開示や国民の理解、協力を得るための防衛セミナーの開催――などについて政府の見解を質した。この中では「拒否権を行使し、自国利益を追求する安保常任理事国に引きずられる国連決議を、自衛隊派遣の必須条件とすることは問題が多いのではないか」と指摘した。これに対し、町村信孝官房長官は「国連憲章が想定した正規の国連軍は未だかつて出来ていない。国連決議に基づく各種平和活動もそれぞれの国の主権、主体的判断に基づいて関与のあり方を決めている。国際平和協力が日本の地位と役割、国益に合致し、自衛隊の能力に一番ふさわしいか、さまざまな条件に当てはめて判断する必要がある」と述べ、民主党の小沢一郎代表の唱える「国連決議万能主義」に否定的な考えを示した。石破茂防衛相も「自衛隊を動かすには緊急性、公共性、非代替性が求められるが、国際社会との関わり合い、文民統制のあり方、武器使用基準など憲法との整合性が大事だ」と慎重な姿勢を示した。同相はまた、防衛セミナーについて「全国21カ所でやっているが、9月に佐世保で開催したセミナーに最多の600人が集まり盛況だった。国民の理解を広げていきたい」とセミナーの意義を強調した。私関連の質疑概要は次の通り。

関連の質疑概要
北村 
 6年前の平成13年11月9日、海上自衛隊の補給艦「はまな」、護衛艦「くらま」「きりさめ」が佐世保を出向してインド洋に向かった。今般、テロ対策特措法が11月2日午前零時に期限が切れ、インド洋に展開の補給艦「ときわ」「きりさめ」が帰国の途にある。「ときわ」は横須賀、「きりさめ」は佐世保に今月下旬に帰国する。国際的なテロの脅威が未だ除去されていないのに、国際社会が連帯して行っているテロとの闘いから人的貢献の面で離脱を余儀なくされた。福田首相は11月1日の談話で、「国民の理解と協力で補給活動を可能な限り早期に再開できるよう、補給支援特措法案の速やかな成立に全力を尽くす」と表明した。一刻も早くテロとの闘いに復帰できるよう本委員会で同法案の成立に全力を尽くさねばならない。10月29日の日経世論調査によると、特措法期限切れ後も給油活動を続けるべきが47%、続けるべきでないが35%だ。10月22日の毎日世論調査も大体同じで賛成48,反対43で賛成が上回っている。8月の日経調査では特措法の延長に53%が反対、39%が賛成だったことから考えて大きな変化ではないか。

町村信孝官房長官 
 ご指摘の通り8月末ごろは圧倒的に反対が多かった。日経をはじめ、産経が賛成34,反対55、共同通信が賛成39,反対48という風に同様な比率で反対が多かった。それが10月になると、大体賛成が読売、日経、産経、共同、毎日、――朝日だけはいつも多少違うが――大体5割前後になって、反対が30%台で明らかに世論が変わってきた。やはり国会の議論を通じて国民の理解が次第に高まっている。ホームページ、メルマガ、パンフレット、セミナー、先生方の地元講演会などで幅広い理解が深まっている。自衛隊の海外派遣という事案で7割、8割の方が賛成することは、ある意味で望むべくもないのかも知れないが、1人でも多くの方の理解を頂けるよう努力を続けたい。

北村 
 自衛隊の海外派遣については、国連の安保理決議をその必須要件とする考え方もある。国連は安保理常任理事国が拒否権を発動し自国利益を追求、時には機能不全に陥る現状であるとの認識を私は持つ。国連をいたずらに理想化し、国連決議を必須の条件にするのは問題が多いのではないか。今年、テロ対策特措法やイラク復興支援特措法に基づく活動が自衛隊の本来任務と位置づけられた。今後は個別の特措法ではなく、自衛隊の海外派遣を根拠づける一般法である恒久法について大いに議論が高まると期待される。

町村官房長官 
 国連なかんずく、国際平和と安全活動を決める安保理で行動、意見が一致するのが望ましいことは言うまでもないが、ご指摘通り拒否権があって、なかなか安保理での一致は可能ではない。国連憲章が当初想定した正規の国連軍は未だかつて出来たことはない。また、国連決議に基づく各種の平和活動はそれぞれの国の主権、主体的判断に基づき関与の在り方を決めているのが実態だ。従って、自衛隊が国際平和協力活動をやる際、その協力が日本の地位と役割、国益に合致しているか、自衛隊の能力を活用するのが一番相応しいかどうか、様々な条件を具体事例に当てはめて、行く行かないの判断をする必要がある。もちろん派遣に当たっては国会での議論等を踏まえて個別に決めていく必要がある。一般法については、先般来、民主党からもそうしたものの必要性、最も長島委員と小沢代表の言うことが全く同じかどうかつまびらかではないが――。この問題については憲法との関係その他難しいこともあると思うので、しっかりとまず与党内で議論し、与野党間や国会で議論する慎重な手続きを経て、その合意を踏まえて進めるべきだと考えている。

石破茂防衛相
 恒久法には幾つかの論点があると思うが、国の内外においても、自衛隊、普通の国で言う軍隊、これを軽々しく動かしてはいけないことは、きちんと認識しなければいけない。その実力が比類ないものであるだけに、動かし方には慎重であるべきだ。緊急性と公共性と非代替性は要求されるだろう。しかし、迅速に出さなければ事態がさらに拡大することも懸念されるわけで、何か事象が起こる度に、ああでもない、こうでもないと議論するうちに何週間も何ヶ月も経ってしまう。迅速性の確保とどういう時に出すかの原理原則をきちんとしておかねばならない。国連イコール国際社会ではない。国際社会との関わり合い、国会の関与、文民統制の在り方をどうするかの話。そして何をやるか。例えば、どこかの国へ自衛隊を派遣したとし、日本のNGOがそこへ出ていたとする。それが攻撃を受けた、拉致、誘拐を受けたという時に「何もしなくていいの」という議論はあるだろうと思う。これが今、官房長官が言った憲法との整合をどう考えるかという話だ。
 最後に、武器使用基準をどうするか。日本1カ国だけでやるわけでない。当然、国際協調のもとでやる。その時に、日本の武器使用の基準が他国のそれと乖離があった場合に、他国と協調してやることが本当に実効性を持つものになるのかどうか。ちゃんと議論しないとその都度やっていては、本当の政治責任を果たせるか疑問だ。官房長官の話のようにまず自民党そして与党、自民党として法律の原案はあるわけで、議論を頂きながら政府内で作業を進めているが、やはり、立法府においてご議論を頂くことが、まさしく実力組織の動かし方の根幹である文民統制の問題だと私は承知している。

北村 
 福田首相とブッシュ米大統領の初の首脳会談が11月16日に開催されるが、そういう外交日程の最中、給油活動の中断について米国のケーシー報道官、そして8日来日のゲーツ国防大臣の方から、活動再開を強く期待する発言があった。特にケーシー報道官は「失望した。給与継続法案の成立で出来るだけ早い活動再開を希望する」と申したという。厳しい発言だが、同盟国として我が国の協力支援活動に対する高い期待の裏返しと私は考える。政府は再開を期待する米国や仲間の国々に対し、現状をどう説明しているのか。

町村官房長官

 関係40数カ国との共同戦線で活動をやっているが、日米同盟の関係から、米国からも大変深い関心が寄せられていることはご指摘の通りだ。私も外相当時、シドニーでライス国務長官に会った際、大変高く期待する発言を耳にしたし、イスタンブールで2,3日開催のイラク安定化周辺国拡大外相会合でも、小野寺副大臣にライス長官から「引き続きお願いします」という発言があったと聞いている。ご指摘通り、米国のみならず、関係諸国からの日本に対する高い期待の表れだと思う。給油再開に向けて一刻も早く当委員会で可決して頂き、参院においてもご賛同頂ければ有り難いと心から念願している。

高村正彦外相
 テロとの闘いは国際社会の最重要課題であり、首相談話にある通り国益にかかわるものだ。今官房長官が説明したが、イラク安定化外相会合では米国を含む各国から、日本の貢献を高く評価し活動中断を残念に思う、早期再開を希望する反応が示された。早期に補給活動が再開できない場合は我が国がテロとの闘いに消極姿勢に転じたと受け止められ、各国の対日姿勢に影響なしでは済まされない。再開に全力を尽くすと説明したい。

石破防衛相
 両大臣が答えた通り日本の国益で、日本が果たす国際的責務だが、もう一つは、高い補給能力を持つ国はそんなにない。並走して右舷からも左舷からも補給が出来る国は日本、英国、米国ぐらいだ。パーフェクトに近い能力を持つ日本が抜けたらそれだけどこかの国にしわ寄せが行く。従って補給継続の必要性等々、ゲーツ長官と話し合いたい。

北村 
 
2日の両党首会談の休憩時間に、民主党の菅代表代行と鳩山幹事長が「もし大連立の話が来たら、民主党の首相でなければ受けられない」と小沢氏にクギを刺したという新聞報道があった。これがどこから出てきた、誰から出てきたという話は別にして、国民が非常に政治に不安と心配を抱いている状況の中で、私どもは大連立をしっかり受け止め、見据え、色々なことを政治家としてお互いに考えなければならないと思う。官房長官は民主党が一定の結論を出したと聞いた時に、「随分早く結論を出したものだな」と述べたと報道されているが、私も同感だ。所用のある官房長官はこれで、どうぞお引き取り下さい。
次に、テロ特措法に基づく自衛隊の活動については、活動の透明性を確保し、過酷な環境で任務を遂行している隊員の姿を国民にしっかり紹介することが、国民の理解と協力を得るために是非とも必要だ。私の出身地佐世保では、9月19日に防衛省主催のセミナーが開催され、約600人の聴衆が集まり、会場はほぼ満員だった。地方セミナー等を通じて国民に直接自衛隊の活動を説明する機会を設けることは極めて大切だが、防衛相のこれに関する見解とこれまでの地方セミナー開催の実績と概要、今後の予定を聞かせてほしい。
防衛省の一連の不祥事に関して、出来るだけ多くの情報を国民に開示し、信頼回復に務めることが極めて重要だ。現時点でそれぞれ取ってきた対応の概要を答えて頂きたい。

石破防衛相
 防衛セミナーは全部で21カ所でやりたい。昨日までに18カ所開催、佐世保は600名で、18回中最高の人が集まって頂いた。防衛セミナーに来てくれる方はそれなりに関心の高い方だが、「ああ、そういうことだったんですか」というアンケートの答えが多かった。やはり、一般の国民にもっと分かって頂く努力は必要だと思う。本日は福島、高松、9日には浜松なので、是非多くの方に集まって頂き、それをどれだけ広げていくか配慮して参りたい。不祥事への対応は、文書管理の徹底とか、省内、内局、各幕の連携体制などについて本年度末までに中間報告をまとめたい。技術的な部分もあるが、それまでに出来ることは出来たことからきちんと速やかに実行する。不祥事の特別観察を行っているが、観察制度を作ったからには、これの意義を十分に発現させなければならない。監察は抜き打ちでやらねばならない。どんな人のところでも行き、厳正に監察を行い、余り監察をギリギリやると嫌な奴だといわれるが、その方がよっぽど仕事をしている。
文民統制の在り方は、省の態勢の変更を伴うと思う。かなり大作業になる。どういう体制が望ましいか、不祥事の防止も、文民統制の徹底もそうだし、これはもう本質的な議論になるので、どうか議会でご議論を賜り、よりよい態勢を作るためお力添えを賜りたい。

北村 
 政府一体となり成果を上げ、補給活動が早急に再開されるよう念じて質問を終える。