第154回(8月16日)テロ特措法延長に全力 日米同盟に影響大
 「衆参ねじれ」国会では、11月1日に期限が切れるテロ対策特別措置法の延長が難しくなるため、安倍首相は8月26日に自民党人事、27日に内閣改造を断行。9月8、9日の豪州訪問直後の9月中旬に秋の臨時国会を召集する方針だ。民主党の小沢一郎代表は参院選勝利の直後、「今まで反対してきた。今度、賛成というわけがない」と語り、同法延長に反対の態度を表明している。米国議会は日本が次期戦闘機として大量配備を希望している最新鋭ステルス戦闘機の輸出を禁止するなど、最近、日米安保関係は多少ぎくしゃくしているが、同法が廃案となって海上自衛隊艦船の派遣が中止されれば、テロに対する国際協力から脱落したと見なされ、国際社会の信用を失うばかりか、日米同盟関係に亀裂が生ずる。参院で否決されても衆院で3分の2以上の多数で再可決すれば成立するが、時間を要するため政府は早めに国会を開く。幸い民主党の中には前原誠司・前代表のように日米関係を重視する保守系議員も多く、修正に歩み寄る気配もある。私は衆院安全保障委の理事として同改正案を早急に衆院を通過させ、次期国会で確実に成立させたいと考えている。 

48万キロ給油を各国高く評価
 テロ対策特措法は、インド洋における海上自衛隊による多国籍軍艦船への洋上給油などを可能にする時限法だ。2001年の米同時多発テロ後、同事件を起こした国際テロ組織アルカイダと密接な関係にあるアフガニスタンのタリバン政権(当時)を攻撃した米英軍支援のために国連決議に沿って制定され、03年以降3回延長されてきた。この6年間に、我が海自佐世保基地の皆さんが危険、過酷な任務に従事してきたが、民主党は法制定と延長の際、いずれも反対してきた。海自は01年12月以降、テロリストらの麻薬・武器などの海上輸送を阻止する米・英・仏・伊・パキスタンなど11カ国の艦船に計763回、約48万キロ・リットル(約20億円相当)の燃料などを補給してきており、各国から高く評価されている。民主党は「国際社会が一致団結してテロ撲滅に取り組むことは重要である」と認めながらも、「なし崩しの自衛隊の海外活動拡大だ」と批判し、反対してきた。軍事機密が国際テロ組織に漏れる恐れもあり、防衛省は国会での説明に慎重を期しているが、同党は「海自の活動に関する政府の説明や総括が不十分」と批判し続けている。

疑われる民主の政権担当能力
 アフガニスタンでは最近、旧支配勢力のタリバンの活動が活発化し、韓国人23人が拉致されて人質2人が殺害される事件が7月に起き、パキスタンでも神学校やモスクに籠城した武装学生や女性・子供ら「人質」の解放で多数の死傷者を出した国軍の制圧作戦が国内で波紋を描いている。国際社会では、テロ撲滅の活動強化を求める声が高まっており、海自派遣を打ち切れば、テロとの闘いから離脱したと見られ、国際信用は失墜する。安倍首相は、小沢代表の反対表明に対し、「日本が世界から期待されている国際貢献はこの法律を根拠に行っている。民主党の方々にもぜひご理解いただくよう努力をしていきたい」と記者団に語った。実際に、日本の平和と安全に関わる外交・安保政策で民主党が責任ある態度をとれないようでは、政権担当能力が疑われる。だが、参院第1党となった民主党は、政府提出法案の審議引き延ばしや否決などにより政府・与党を揺さぶり、衆院解散・総選挙に追い込む作戦だ。鳩山由紀夫幹事長も「特措法は延長すべきではない。それも含めて選挙の審判が下ったと思っている」と小沢代表に同調しており、秋の臨時国会では憲法62条の国政調査権を積極的に行使し、テロ特措法に基づく海外での自衛隊の活動などについて情報開示を迫ろうとしている。

協議に応じ修正に柔軟姿勢
 小沢代表は、民主党の対応に懸念を示したシーファー駐日米大使の会談申し入れを一旦拒否したが、 結局、8日に会談に応じ、「アフガン戦争は米国独自で始めた。日本の直接の平和、安全と関係ない区域に米国や他の国と部隊を派遣して、共同作戦することは出来ない」と同法延長反対の考えを重ねて表明、国際社会の期待に背く発言をした。しかし、前原・前代表はCS放送番組で、「我々は今、『イラクは撤退すべきだ。テロ特措法も駄目だ』と両方言っている。本当に両方ともノーと言って(自衛隊が)撤退すると、日米関係は大変なことになる」と述べており、同党は決して一枚岩ではない。「政権を目指す責任政党が取るべき対応ではない」とする若手の保守系議員も同党内には増えているようだ。そこで、政府・与党内では、法案づくりの段階で民主党と協議し意見を採り入れたり、法案提出後も修正には柔軟に応じていくことも検討している。

期間短縮や国会の事前承認
 例えば、現時点での改正案は派遣期間の1年延長だが、民主党が協議に応じる場合は、@延長期間の短縮A延長を今回限りと明記B国会に対する活動報告の充実C派遣について国会の事前承認――などを盛り込むことが考えられる。Cの事前承認については、民主党も01年の法案審議の際、「国会(文民)の統制を徹底すれば自衛隊の活用もありうる」と主張したが、政府・与党が同条の盛り込みに応じなかったため、反対に回った経緯がある。未来の「責任政党」としての自覚があるなら、柔軟な対応を期待したいところだ。いずれにしてもテロ特措法は、ブッシュ政権が掲げる「テロとの戦い」への参加と位置づけ、政府が「世界の中の日米同盟」の象徴としてアピールしてきたものだ。改正案が成立しなければ日米同盟の根幹が揺らぎかねない。米軍と自衛隊は7月6日に弾道ミサイル防衛(BMD)の共同訓練を実施するなど日米のミサイル防衛(MD)協力体制は万全だし、航空自衛隊の次期主力戦闘機候補の米最新鋭ステルス戦闘機「F22ラプター」12機が2月から約3ヶ月間、沖縄の嘉手納基地に暫定配備され、空自と共同訓練した。

中韓反発に米はステルス禁輸
 米ロッキード・マーチン社が開発した世界最強と言われる超音速の新鋭機は、レーダーに映りにくいため「見えない」とされるステルス技術を備えたもので、価格は約150億円とも250億円とも言われ、空自の主力戦闘機F15の2〜3倍はする。ところが、イージス艦機密が自衛隊員の手元から漏出したこと、日本のステルス機の大量配備に韓国や中国が危機感を深めていることなどを考慮した米国議会は、F22の外国輸出を禁じている。防衛省は05〜09年度の中期防衛力整備計画で、老朽化したF4戦闘機の後継機7機を最初に導入する。F22のほか、F15FX、FA18(以上米国),F35(米英など)、ユーロファイター(英独など欧州4カ国)、ラファール(仏)の計6機種に絞って性能調査をしている。安倍首相は4月末の日米首脳会談でブッシュ大統領に「空自の次期主力戦闘機に関連する情報の提供をお願いしたい」とF22を念頭に情報提供を求めた。

日本の機密保持能力に不信感
 8日後の日米防衛首脳協議でも久間章生前防衛相は「日米同盟が有効に機能するためには優れた戦闘機が日本にも必要だ」と、F22調達の意欲を示した。しかし、米国議会は軍事機密保持のためと中韓両国の反発を意識してF22の輸出を禁じている。米下院歳出委員会は7月25日、F22ラプターの外国売却を禁止する条項を含んだ08年度国防歳出法案を無修正で可決、禁輸を継続した。それに加え、F22の輸出が仮に解禁されたとしても、これまで戦闘機導入の際に、1部を除いて行われてきたライセンス生産が許可されない可能性があること、将来大量配備するなら購入経費が嵩むなどで、F22調達のハードルが高くなっている。とりわけ米側は、日本で起きたイージス艦情報漏洩事件などで、日本側の機密保持能力に不信感を強めている。軍事機密が漏れたのは、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法で特別防衛秘密に当たる電子データだ。

イージス艦機密漏洩が根元
 99年頃に横須賀市にあったプログラム業務隊が幹部教育用に作った資料は、複数の目標を同時に攻撃するイージスシステムの性能に関する貴重な情報が含まれている。この内部資料が海自上対馬警備所に勤務していた1等海曹が隊舎に持ち帰っていたことが発覚した。1等海曹らは中国の上海に無断渡航を繰り返し、現地の女性と会うためにカラオケ店に通っていたという。この店には、04年に中国側から情報提供の圧力を掛けられて自殺した在上海総領事館員も出入りしていた。機密漏出疑惑が持たれたのは、中国人妻(33)を持つ護衛艦勤務の2等海曹で、警察当局は当初、中国人妻が2等海曹を通じて自衛隊のデータを入手し、中国側に渡そうとしていたと見て捜査していた。機密情報管理がお粗末な防衛省に対し、米国側が最高度の軍事機密の粋を集めたステルスを輸出するわけがない。

1刻も早い衆院通過を目指す
 このように政府は次期戦闘機購入計画の手直しを迫られているが、日米の安保体制は最近ぎくしゃくし、同盟関係は盤石とは言い難くなってきている。その意味でテロ特措法改正案は臨時国会の最重要法案である。これまでの佐世保基地の皆さんのご苦労に報いるためにも、法案成立によって日米同盟を修復・強化し、暗礁に乗り上げ先送りとなったF22の調達が元の軌道に復元するためにも、私は衆院安保委理事として、同法が失効しないよう、1刻も早く衆院を通過させるべく、全力を挙げてとり組んでいるところだ。