第152回(7月16日)重要な海洋2法成立 望まれる一体的運用
 延長国会は社会保険庁改革関連法案、国家公務員法改正案など多くの重要法案を成立させて5日に閉幕、29日の参院選に向けて天下分け目の戦いに入っている。内閣提出97法案のうち90本が成立し成立率は92・8%、条約19件はすべて承認と例年並みの成績。朝日は社説で「数の力で押し切る与党に対し、参院選に向けて対決ムードをあおる野党。品格に欠ける政治」などと批判したが、重要法案の中には超党派の議員立法で成立した海洋2法案がある。これは8省庁に別れていた海洋の「縦割り行政」を新設する海洋政策担当相に一元化し、海洋の「国益」を守ろうとするもの。先般、佐世保の選挙応援にきて頂いた石破茂元防衛庁長官が音頭をとり、私たち防衛、水産行政に詳しい議員が協力してまとめ上げた法律である。是非記憶にとどめておいて頂きたい。東シナ海のガス田開発を巡る中国との対立もあり、日本の排他的経済水域(EEZ)では海底資源開発、海上輸送、漁業の安全など多くの問題を抱えているが、2法の成立により、これらの権益が保全されることになった。

総合海洋政策本部と担当相新設
 海洋2法は「海洋基本法」と「海洋構築物安全水域設定法」で、与党と民主党の議員立法に共産、国民新党も賛成し、4月20日に成立した。海洋基本法は、@海洋政策担当大臣ポストの新設A首相が本部長を務める総合海洋政策本部の設置B海洋資源の開発と利用の推進――が骨子。海洋構築物安全水域設定法は@掘削施設や人工島の周囲500メートルを「安全水域」に設定A国土交通相の許可なく「安全水域」に入ることを禁止――など沿岸200カイリのEEZの治安維持を盛り込んでいる。「安全水域」は日本が調印した国連海洋法条約で認められた制度。7月の施行後は国交相の認可がない限り水域内の立ち入が出来ないため、海洋政策担当相は国交相が兼務する。これまで資源開発は経済産業省、海上輸送などEEZ内の治安維持は国交省、学術調査は文部科学省、沿岸魚業は農水省と役所の所管が8省庁にまたがり、役所の「縄張り意識」で連携がとれていなかった。

縦割り行政の弊害なくす
 農水政務次官を経験した農水・防衛通の石破元防衛庁官は、朝日のインタビューに対し、「同じ海に関する問題でも、不審船対策は海上保安庁、中国のガス田開発対応は資源エネルギー庁、漁業が絡むと水産庁と8省庁にまたがり管轄してきた。日本お家芸の『縦割り行政』が障害となって、問題が生じたときに十分対応できず、国家の権益、国民の利益を確保できなくなっていた。例えば武装工作戦を護衛艦で追跡する根拠も日本では漁業法違反しかない。なのに、水産庁と防衛省が対策を話し合った形跡がない。ことが起きてから、会議ばかり開いても仕方ない。責任体制を含めて、対応部署を一本化する必要があった」と答えた。確かに日本はEEZの面積で見ると、世界で6番目の海洋大国だ。石破氏は「日本は海から最も利益を受けている国だ。国益だけでなく、世界のために自由と秩序、安全を守り、環境を保全し続ける主導的な役割を担うのだと基本法の条文にも書き込んだ。まずは教育を通じ、国民の共通認識にしたい」と同紙に語っている。

EEZ内に安全水域設定
 国連海洋法条約はEEZ主権国に500メートル以内の「安全水域」設定を認め、各国が立法化を進めたのに、日本は1996年の条約批准後も法整備を怠り、我々議員の間では「ガス田開発で中国側から日本の本気度を疑われ、足元を見られかねない」という危機感が高まっていた。東シナ海では、天然資源を自由に開発できるEEZの境界が策定していないため、地下に埋蔵されている天然ガスを巡って日中が対立しているのはご存じの通り。日本は日中の海岸線から等距離を取った「中間線」以内をEEZと主張。対する中国は沖縄諸島の西側まで広がる大陸棚の末端(沖縄トラフ)までとしている。中国は先行して春暁(日本名・白樺)ガス田などで探鉱開発に着手、日本政府は「ガス田は中間線にまたがっており、日本の資源がストローで吸うように吸い取られかねない」と抗議し、開発中止や情報提供を要求していた。これまでの日中首脳会談などを通じ、共同開発では一致しているが、境界線には春暁のほか断橋(同・橘)、天外天(同・樫)、平湖などガス田が多く、3月29日に8カ月ぶりに再開された日中局長級協議でも、具体的にどの海域でどのように開発するか、について協議は進展しなかった。

日中ガス田共同開発に前進
 安倍首相は「海洋国家として日本の意思を対外的にしっかり示すべきだ」と側近に漏らし、4月11日に温家宝中国首相が来日する前に海洋2法を成立させるよう指示していた。
温首相来日前の2法成立は間に合わなかったが、日中首脳会談では「東シナ海を平和・協力・友好の海」とし、 @従来よりハイレベルの協議を行う  A比較的広い海域で共同開発する  B共同開発の具体策について今秋に首脳に報告することを目指す――などを謳ったプレス発表を行った。昨年10月の「協力を加速し、共同開発の方向を堅持し、解決の方法を模索する」との発表よりは半歩前進した。これは2法案が温氏来日前の4月3日に衆院を通過し、我々の熱意が中国側に伝わったことが、プラスになったと思われる。日本の食料自給率は40%で、燃料も食糧も大半は輸入に頼っているのに、シーレーン(海上交通路)など海上防衛も権益保護も米国任せで、自らを守る気概に欠けている。資源開発や安全輸送、漁業権益の確保など我が国が海洋政策を包括的に取り組むうえで海洋2法は極めて重要だ。自民党の水産部会長としても海洋政策の一体的運営に尽力したいと考えている。