第150回(6月16日)水産物禁輸で食卓危機 盛大に北村激励会
 6月に入って読売新聞が「揺らぐ魚食大国」を特集。カニ、アジ、サバ、ウナギなど水産物価格が上昇して日本の食卓に影響をもたらすだろうと報じている。 ロシアが生きたカニの輸出禁止を唱え、オランダのハーグで開かれたワシントン条約締約国会議で、稚魚(シラス)輸出が盛んな「ヨーロッパウナギ」を条約の規制対象種にしようとしているからだ。 米国アラスカのアンカレッジで開催のIWC(国際捕鯨委員会)でも調査捕鯨の無期限停止を求める決議が採択され、日本代表団がIWCからの脱退や新クジラ資源管理機関の設立準備を表明する一幕もあった。 このように水産業界は色々と厳しい局面を迎えつつある。

 政府の経済財政諮問会議は08年度予算の骨格となる「基本方針2007」(骨太の方針)を策定中だが、私は自民党の水産部会長として、窮地に立つ水産業の新しい経営安定策、漁船漁業の構造改革を盛り込もうと日夜努力している。 そうした中に大日本水産会など水産業界が6月5日、「北村誠吾君を励ます会」を盛大に開いてくれた。感謝に堪えない。

ロシアが生きた蟹の輸出禁止
 最近の水産業界で起きた事象を時系列的の並べると、まず、ロシアの農業省が5月30日、密漁防止と資源保護を理由に、ロシア領海と大陸棚海域で水揚げされた生きたカニの輸出を禁止したと発表した。    禁輸措置は3月1日に実施されており、農業省は、ロシアの港での通関手続きを経ることなく、雄のカニだけでなく、ロシアで捕獲が禁じられている雌のカニが日本などに直接持ち込まれていると指摘、「カニ資源の打撃を与えている密漁に歯止めを掛ける必要がある」と主張している。
 
 朝日新聞によると、ロシアで加工される冷凍カニなどは禁輸の対象外だが、ロシア専門家グループはタラバガニの漁獲そのものの禁止の可能性も検討しているという。 朝日は「日本海やオホーツク海ではカニの密漁、密輸が常態化しており、日本側統計の輸入量がロシア側統計の輸出量を大きく上回る状況が続いている。 特にタラバガニ資源の枯渇は深刻で、現地からの報道では、プーチン大統領が今年初めに極東のウラジオストクを訪問した際、カニの禁漁に前向きの考えを表明したとされる」と報じている。

シラスウナギも絶滅種で規制
 水産庁によると、日本がロシアから05年に輸入したカニ類は計約7万5千トンで、国内供給量の約6割。冷凍ものを除く生鮮・冷蔵カニの輸入で、ロシアへの依存度が高いのはタラバガニが総輸入量の99%、毛ガニが同92%、ズワイガニが同89%と言うから、今後は輸出禁止で品薄、3〜5割程度の価格上昇は避けられず、庶民の食卓に与える打撃は大きいだろう。 
 プーチン大統領は資源ナショナリズムを強化しているが、ロシア国境警備当局は6月1日、極東カムチャッカ半島東方でサケ・マス漁中の池田水産「第88豊進丸」(富山県入善町=17人乗り組み)を違法操業の疑いで拿捕するなど、漁業資源の監視を強めている。
 
 次が絶滅の恐れがある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約締約国会議の雲行きだ。6月3日から15日までオランダのハーグで開かれた同会議ではウナギ、エビ、サメなど数多くの水産物の扱いを討議したが、ドイツは欧州産のヨーロッパウナギ(アンギラ種)を規制対象に加えるよう提案、賛成多数で採択された。一方、欧州連合(EU)も11日、ルクセンブルクで農漁業相理事会を開いて欧州産ウナギ稚魚の保護策を決定、08年は漁獲量を35%減少させ、13年には60%削減することを決めた。

中国養殖ウナギ7万トン輸入
 ウナギの養殖は天然の稚魚(シラスウナギ)を捕って育てるが、中国は日本近海の日本ウナギのほか、スペイン、フランスからもヨーロッパウナギのシラスを年間50トン前後輸入、養殖した成魚を冷凍蒲焼きなどに加工、日本に輸出している。 これがスーパーなどで安価なウナギ蒲焼きが売られているゆえんだ。ヨーロッパウナギは大西洋真ん中のサルガッソー・シーが生まれ故郷で1部が別れて米国の河川へ旅立つ。  
 スペインではシラスのオリーブ油炒め料理が有名だが、シラスの乱獲で資源量は1980年代の1〜5%程度にまで激減したと推定され、欧州で人気のウナギ料理が食卓から消えつつある。 EUは中国などアジア向けの輸出で欧州生息のヨーロッパウナギが激減しているとして、原産国の許可がない限り輸出をできなくする方針だ。 日本のウナギ消費量は10万トン前後だが、国内養殖約2万トンに対し中国からの輸入は約7万トンだから、日本の消費量の5〜7割は欧州産と言える。 規制が始まれば来年以降は輸入ウナギの値段が高騰する可能性がある。

シラス鰻、ナマコの密漁摘発
 読売新聞は「今回はウナギのほか、英国の街角などで売られるフライドフィッシュ(揚げ魚)の素材アブラツノザメや主に米国で食べられるブラジル産アメリカイセエビなど7種類の海洋生物が提案された。背景には世界の水産物の激減がある。国連食量農業機関(FAO)によると、海洋魚種の18%が過剰利用。10%は枯渇、もしくは枯渇から回復を待つ状態だという」と報じた。
 一方、朝日新聞はウナギの稚魚やナマコなどの高級食材の密漁、密輸出の摘発を次のように伝えている。【第11管区海上保安本部などは4月から5月11日にかけて、台湾と日本の養殖業者、那覇市の暴力団幹部と組員を含む計10人を、関税法違反(密輸出予備)の疑いで逮捕した。ウナギの稚魚は輸出貿易管理令などで、12月1日から4月末まで輸出が事実上禁じられているのに、4月8日、石垣島から漁船で約130キロを輸出しようとした疑い。 北海道では昨年ナマコの密猟が相次ぎ、1管は計22人(漁獲量計55トン)を逮捕した。同6月には暴力団組員を首謀者とするグループ7人が伊達市沖でナマコ約700キロを密漁した疑いで逮捕。このグループは05年以降計33トン(買い受け価格約4900万円相当)のナマコの密猟を繰り返していた】

IWC総会で反捕鯨国巻き返す
 これまでの密漁はカニ、ウニが中心だったが、ウナギシラスの不足や乾燥ナマコが中華料理の食材として中国で高く売れることに目を付けた業者と暴力団による新たな犯罪だ。海上保安庁も一段と取り締まりの強化に努めている。
 
 最後に5月28日から31日までアラスカのアンカレッジで開かれた第59回IWC年次総会について触れたい。 今回は日本が商業捕鯨をやめ、代わりに調査捕鯨を始めて20年が経つ歴史的総会であり、昨年のセントキッツ(カスピ海)総会で捕鯨支持派が提案した「捕鯨禁止は必要ない」との宣言を過半数で採択した後、初めての総会であるため、水産部会長として是非とも出席するつもりだった。
 だが、終盤国会の禁足令が出され、残念ながら実現できなかった。総会では捕鯨反対派が昨年総会で危機感を募らせ、巻き返しに全力を挙げたようだ。IWC加盟国は76カ国で昨年の会議以来、スロベニア、クロアチア、キプロス、エクアドル、ギリシャ5カ国が新たに参加し、反捕鯨国が過半数を占めた。

沿岸捕鯨の捕獲枠設定ならず
 30日には、日本が南極海で行っている調査捕鯨の無期限停止を求める決議を賛成40,反対2,棄権1で採択した。日本を含む捕鯨支持国など27カ国は、採決そのものに参加しなかった。決議に拘束力はなく同様の決議は過去にも採択されている。今年2月に米環境保護団体のシーシェパードが日本の調査捕鯨母船・日新丸に化学物質入りの発煙瓶を投げたことを受け、危険な妨害行為を非難する決議を全会一致で採択した。今年の総会で注目された原住民捕鯨について日本は、アラスカ原住民捕獲枠発給のコンセンサスには参加するが、  @鯨類捕獲の可否についてはあくまでも科学的根拠に基づくこと  A日本の沿岸捕鯨への捕獲枠の発給も同様に発給されるべきだ――と主張。 日本は最終日の31日、網走(北海道)、鮎川(宮城)、和田(千葉)、太地(和歌山)の4地域で行うミンククジラの沿岸捕鯨の捕獲枠設定に向けた決議を提案したが、米国やニュージーランドなどから反対が相次ぎ、合意形成の可能性がなくなった。 総会はまた、86年から実施されている商業捕鯨の一時禁止(モラトリアム)を支持する内容の決議を賛成37,反対4,棄権4の賛成多数で採決したが、これにも日本を含む捕鯨支持国26カ国は投票に参加しなかった。

IWC脱退示唆し反捕鯨国牽制
 こうしたIWCの厳しい対応を受けて、中前明・水産庁次長は「資源管理機関としての役割を取り戻す最後の機会を失った。忍耐も限界だ」と強い口調で反捕鯨国を非難。IWCからの脱退や沿岸捕鯨の再開、新しいクジラ資源管理機関の設立に向けて準備を始める可能性を表明した。これらは政府の確定した方針ではなく、外務省も脱退に難色を示しているが、中前発言はIWCの対応を強く批判、反捕鯨国を牽制したものだ。
 調査捕鯨は、水産庁に委託された財団法人日本鯨類研究所(鯨研)が20年間にミンククジラを約8150頭、ナガス鯨13頭など約1万頭を捕獲、クジラ肉にして売り調査経費に充ててきた。クジラ肉の生産量は昨年が約5500トンで5年前から倍増、最近はスーパーや飲食店にも出回っている。調査対象海域は初め南極海のほぼ半分だったが、94年からは北西太平洋でも始め、ミンクのほかイワシクジラなど年約350頭を捕獲している。南極海では今秋から初めてザトウクジラも捕獲対象に加える予定だ。環境保護団体の反発は強まろう。

水産資源奪い合う時代到来
 今年の水産白書は、「世界の魚需要が増え続ける一方、漁獲量は頭打ちとなるため水産資源を奪い合う時代がくる恐れもある」と指摘したが、前述のようにロシアのカニや欧州産ウナギ稚魚の輸出規制などで、水産物輸入世界一の日本の食卓は脅かされてきた。日本近海の水産資源の枯渇は言うを待たない。アジ、サバ、イカなどの水揚げが落ち、マグロの高値とともに大衆魚もじわじわと値上がりを続けている。
 しかし、これを座視するわけにはいかない。リスクがあろうとも漁船、漁業の構造改革を決断し、国際競争力のある漁業経営体の育成・確保、「日本型食育」の推進など「骨太の方針」に盛り込んだ施策を発展させ、勇気を出して「攻めの水産」に徹し、水産の危機を乗り切らねばならない。
 有り難いことに6月5日、私の激励会を開いて頂いたので、このことをご挨拶で申し上げた。激励会には朝長則男佐世保市長や白須敏朗水産庁長官ら200人以上がお集まり頂き、中島圭一日本捕鯨協会会長からは、私がかつて韓国の蔚山で開かれたIWC総会に出席して、「日本海や西海でも調査捕鯨をやってくれ」とぶちあげたことを皆さんに披露して頂いた。皆さんからご懇篤な励ましの言葉を賜り、楽しい会合であったことに感謝申し上げる。

朝長佐世保市長の祝辞(要旨)
 クールビズ姿ですが、これが決まりの全国市長会の会合から駆けつけてきた。北村先生の選挙区・佐世保は26万都市だが、先生の絶大なご支援で市長に当選できた。私は市議、県議ともに先生の後を追いかけ当選してきた。まさに先生は兄貴分の存在で、当選できる環境を作って頂き、地元市長として感謝している。
 水産資源の減少、漁業従業者の減少・高齢化など我が国の水産業を取り巻く環境は厳しいが、水産県長崎出身の先生は現場を知った水産に造詣の深い政治家であり、党の水産部会長として生きた政策、身近な政策を打ち出す役回りをされていることに、大きな力を得て大変心強く感じているところだ。本日は先生の日頃のご尽力、ご努力に対し、感謝と敬意を表し、地元を代表しお礼申し上げる。

北村の謝辞(要旨)
 今晩はご多忙なところ、私を励まして頂くため、かくも大勢お集まりいただき恐縮している。当選3回程度で自民党の名誉ある水産部会長の大役を仰せつかり、先ほども党本部で「骨太2007年」の作業を行ってきた。自分の能力、見識から見て水産部会長の仕事は難しいが、私なりにどうやらやっている。
これも鈴木俊一先生らの適切なアドバイスと協力を受けて、首にならずやってこられた。皆さんに迷惑を掛けないよう努力したい。
 私は五島列島の小さな、先に小がつく、オネガなどと呼ばれる、1回では覚えて貰えない小値賀島に生まれ育った。最後はその島の土に帰るつもりだ。島の若手と話す時、300年前に7〜80キロも離れた平戸の松浦候の許可を得て、回船問屋の小田伝次兵衛が8丁櫓の船を仕立てて、波を押し切って今のハウステンボスがある針生島に上陸、3〜5年かけて穂場を開拓したと1代記に書いてあることを引用して話す。市町村合併、町村振興と言う前に、島にない田を佐世保に作りに行った小田伝次兵衛の心意気を買いたい。小田は勇気を持って決断し、荒波を乗り切り、針生島江上あたりを開墾し、納税もし、明治末期までこれを維持した。
 私は漁船漁業の構造改革推進、新しい経営安定策、漁業共済、後継者作りの制度設計などを、骨太の方針に入れろと言ってきたところだ。強い意志と度胸で乗り出さねばならない。小田のように自ら打って出て、引き寄せる積極性が必要だ。リスクがあるから安全なところに行こう、としてもそれは出来ない。安全航海ではいけない。リスクを犯しても、安倍首相が言うように再生、リカバリーすることが大切だ。最後に丸一よしのり君を、先輩として、仲間として押し立て、当選させて下さるようお願いしたい。