第144回(3月16日)同盟強化に安保3法案 憲法記念日に投票法
 7月参院選を控え、大幅な会期延長が出来ない今国会をどう乗り切るか。与党首脳は重要法案の絞り込みに入っているが、優先順位は、憲法改正手続きを定める国民投票法案、教育改革関連3法案、安保・防衛関連の3法案になりそうだ。安保・防衛3法案のうちイラク復興支援特措法改正案と在日米軍再編推進特措法案は既に提出済みだが、日本版NSCを創設する安全保障会議設置法改正案は3月中に提出する。
 
 中国は5日から開いた全国人民代表大会(国会)に前年実績比17.8%増の国防予算を提出した。これは19年連続の2桁伸びで、日本の防衛費を上回っており、北朝鮮のミサイル・核実験とともに北東アジアの平和を脅かすものだ。外交と安全保障の国家戦略を迅速に決める官邸主導の日本版NSC(国家安全保障会議)は必要である。

 米軍の世界的再編は北東アジアから中東へかけた「不安定の弧」に対処するもので、日米同盟を強化するためにも在日米軍再編推進特措法案と空自の空輸活動を2年間延長するイラク復興支援特措法改正案は早急に成立させなければならない。これら法案は私の属する衆院安全保障委員会で審議されるが、来月下旬には沖縄参院補選もあり、野党の抵抗は激しくなりそうだ。

与党単独でも投票法案成立へ
 「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げる首相は、憲法改正と教育再生に政治生命をかけているが、総裁任期(3年)の2期6年間を続投する構えで、憲法改正には5年の長期計画を立てており、改憲手続きの国民投票法案は5月3日の憲法記念日前に成立させようと強い意欲を燃やしている。昨年末の自公民3党協議で懸案の投票権を持つ年齢を「原則18歳以上(経過措置期間は20歳以上)」とするなど5項目の修正で一致、民主党内保守派が法案に賛成していたため、一時は楽観ムードもあった。

 しかし、小沢一郎代表が参院選に向けて安倍内閣との対決姿勢を強め、法案成立を参院選後に先送りしようとして共同修正に応じる姿勢を捨てたことから、与党は単独での衆院採決を強行するかどうかの決断を迫られている。教育改革関連3法案は、10日の中央教育審議会(中教審=山崎正和会長)の答申を受け、3月中に国会提出するよう法制化作業のピッチを上げている。答申では、 @副校長、主幹、指導教諭を置く学校教育法改正 A免許に10年間の有効期間を定め、更新に30時間程度の講習を義務づける教員免許法改正 B緊急時に限って国が教委に指示・是正勧告などが出来るような地方教育行政法改正――の改正方向が示された。


自治体へ交付金増やす特措法
 一方、政府は2月9日、在日米軍再編推進特別措置法案を閣議決定した。同法案は、2017年3月末までの時限立法で、 @在日米軍の施設建設や部隊移駐を受け入れる自治体に、進捗状況に応じて配分する「再編交付金」を新設する A負担の大きい自治体に公共事業の補助率を嵩上げする特例措置を設ける B在沖縄海兵隊のグアム移転支援のため、国際協力銀行(JBIC)に業務特例を作る――が柱。再編交付金は、施設受け入れ決定、着工、完了などに合わせ、自治体への交付金を増やす仕組みで、各段階に応じて金額を引き上げることにより、自治体の協力を引き出すことを目指している。

 補助率の嵩上げは沖縄県を最大95%、その他を最大55%と定めた。対象自治体を決めるため、防衛相を議長とし、関係閣僚で構成する「駐留軍等再編関連振興会議」を設置する。閣議では防衛施設庁を廃止し、防衛省に統合することを定めた防衛省設置法と自衛隊法の改正案も決定した。

海外米軍施設に国費で初負担
 沖縄県は日米両政府間で合意した普天間飛行場移設のV字形滑走路案に難色を示し、政府が環境影響評価に着手することも拒んでいるが、同法案が成立すれば局面打開のテコになるだろう。また、再編事業の進み具合に応じて「出来高払い制」で再編交付金を交付する仕組みは、自治体の協力に弾みがつきそうで、政府は07年度予算案に初年度分として約51億円の交付金を計上している。在日米軍の施設・区域の75%が集中する沖縄県の負担軽減は願ってもないことだが、グアムには沖縄の海兵隊8千人とその家族9千人を受け入れる施設がない。

 それをJBICと民間企業の共同出資による事業主体が家族住宅などを建設して支援するが、移転費用約102.7億ドルのうち59%の60,9億ドル(約7200億円)を日本が負担する。海外での米軍関連施設建設のために巨額の国費を出すのは初めてのケース。だが、東西ドイツが再統一した際、ドイツは、ソ連が東独を守りもしなかったのに、ソ連軍撤退の際には約1兆円の費用を出している。それから見れば大きな負担とはいえないが、野党は法案審議の過程で政府を厳しく追及することになりそうだ。

日米の同盟関係修復に重要
 小泉・ブッシュ時代に”蜜月関係”を誇った強固な日米関係は、昨年秋の中間選挙でイラク政策批判が高まってブッシュ政権与党の共和党が敗れ、さざ波が立ってきた。それに輪を掛けたのが「イラク開戦の判断は間違っていた」「(普天間基地移設で米国は)偉そうなことを言ってくれるな」(久間章生防衛相)、「米国のイラクでの治安維持・復興政策は非常に幼稚だ」(麻生太郎外相)など安倍政権主要閣僚の米批判発言だ。地元の利権が絡み合う複雑な移設問題を党の総務会長当時から手がけてきた久間氏にしてみれば、内心、「米国のためにやっているのだから横から口を出しなさんな」と、けん制したくなる気持ちが起きても不思議ではない。

 だが、米国はこれらの発言に敏感に反応し、2プラス2(日米外務・防衛閣僚による安保協議委)を延期したり、関係修復のため来日したチェイニー副大統領が故意に久間防衛相との会談を避けるなど同盟関係はさらにぎくしゃくしてきた。それだけに、和製NSCで迅速な安保戦略体制を整え、イラク復興支援を継続し、在日米軍再編の推進を図るこれら3法案を成立させることは、「日米同盟の強化と在日米軍再編を着実に進める内閣の強い姿勢の表れ」(防衛省首脳)として、日米関係修復のためにも極めて重要だ。私は3月14日に衆院安全保障委理事を再任されたが、一刻も早くこれら3法案を成立させようと、連日励んでいるところだ。