第143回(3月1日)6本柱の水産基本計画 関連法案作業大詰め
 水産庁は水産政策の指針となる07年度から5年間の水産基本計画を策定中だ。水産の振興には「生産、消費の両面の取り組みが必要」とし、  @水産資源の回復・管理の推進  A国際競争力のある漁業就業構造の確立  B安定供給のための加工・流通・消費の展開――など6本柱の施策を掲げ、漁業法・水産資源保護法などの改正案を今国会に提出する方針である。自民党水産部会でこの基本計画を精査中だが、10日過ぎには党総務会の了承を得、3月中に閣議決定する段取り。

 計画には10年後の魚貝類自給率を65%に達成することや、漁業者や漁船ごとに漁獲枠を決める「個別割当方式」(IQ)の導入、省エネ・省人型に切り替える漁船漁業構造改革、違法操業の監視・取締能力の向上、漁獲可能量(TAC)制度の対象魚種の追加――などを盛り込む考えだ。私は水産部会長として基本計画を万全な内容に煮詰め、政府が提出する関連改正法案を早急に成立させたいと念じている。

10年後の自給率65%目標
 水産を取り巻く環境は、国際的に需要が高まった半面、乱獲などで資源が悪化し、漁業生産構造も弱体化するなど、生産と消費の両面に大きな変化が見られている。水産物が栄養バランスの優れた食料であるとの認識から、スーパーの販売シェアが上昇するなど消費・流通構造が変化し、欧米、アジアを中心に水産物の需要が増大するなど国際化が進展、日本からの水産物輸出が増加している。
 その一方で、日本沿岸水域の水産資源は半分以上が低位の水準となり、過剰の漁獲や藻場・干潟の減少などで、水産動植物の生育環境が悪化している。さらに漁業就業者の減少・高齢化、漁船の老朽化、燃油の高騰などで漁業生産構造が脆弱化している。
 
 このため、平成11年に461トンあった食用魚貝類の生産動向は、同17年に445万トン、10年後の同29年は持続的生産目標が495万トンであるのに対し、予測では401万トンに減ると見られている。消費動向も平成11年は1人当たり年間36キロだったものが同17年は34キロ、同29年もこの水準を維持したいところだが、予測では32キロに落ち込みそうだ。自給率は平成11年が55%、同17年が57%、同29年は65%達成が目標だが、予測では56%と微減になりそうだ。


生産、消費の両面と取り組む
 このような情勢から、水産基本計画は、生産と消費の両面から取り組むこととし、 @低位水準に止まっている水産資源の回復・管理の推進  A国際競争力のある経営体の育成・確保と活力ある漁業就職構造の確率  B水産物の安定供給を図る加工・流通・消費施策の展開  C水産業の未来を切り拓く新技術の開発・普及  D漁港・漁場・漁村の総合的整備と水産業・漁村の多面的機能の発揮  E水産関係団体の再編整備――の6本柱を掲げた。 

 @では「資源管理・回復計画の着実な推進と国際的な資源管理の強化」と「海面・内水面を通じた生育環境の改善と増養殖の推進」を提起しているが、現在の資源管理方法は、魚種ごとに年間の総漁獲枠だけを決めるTAC制度であるため、自由競争を認める「オリンピック方式」と揶揄され、その枠内でより多くの魚を取った者が得する弊害のある制度だ。

 そこで、排他的経済水域(EEZ)での資源管理を強化するため、英国、スペインなどが既に導入しているように漁業者や漁船ごとに漁獲枠を決める「個別割当方式」(IQ)の導入や、衛星船位測定送信機の設置義務付けの対象となる魚種・漁業種類の拡大について検討を加え、漁獲競争の抑制や計画的な漁獲活動を展開、資源回復を図ろうとしている。また、現在マイワシ、サバなど7魚種の漁獲枠を定めているTAC制度の対象魚種追加を検討している。

魚食守る水産業抜本改革提言
 水産基本計画の見直しに当たり、財界の政策提言団体・日本経済調査協議会の「水産業改革委員会」(委員長=高木勇樹農林漁業金融公庫総裁)は2月2日、「魚食をまもる水産業の戦略的な抜本改革を急げ」と題する緊急提言をまとめた。
 これは、沿岸漁業への新規参入障壁の撤廃などを柱とし、漁業法の改正などで水産資源を「国民共有の財産」と位置づけるべきだと強調している。その中では、漁業者に水産資源を保護する義務を負わせることで過剰漁獲を抑制しようとしているが、一方では、漁業就業者が05年に22万人と、ピーク時の約2割まで減り、漁村が寂れる傾向にあることから、意欲ある企業が漁業に参入できるよう、漁協組の加入資格の見直しなど規制緩和すべきだと提唱している。

 また、水産資源の適正管理を進めるため、現在は7業種に限定の漁獲枠を科学的な推計に基づいて、3〜5年間の管理計画で拡大するよう求めている。これらの要望を入れ、基本計画Aの柱では、平成19年度から省エネ・省人型漁船に切り替える漁船漁業構造の改革や、同20年度をメドに収入の変動による漁業経営への影響を緩和する新しい経営安定対策の導入、異業種事業者の新規参入・新規就業や再チャレンジ促進参入の促進を実施する考えだ。

罰則強化など3系統改正法案
 Bの柱では、流通拠点の整備、前浜と消費者をつなぐ多様な流通経路の構築、食育・魚食普及の推進を検討。 Cでは、バイオマス資源の利活用促進、水産総合研究センターに「マグロ研究所」の設立を計画。 Dでは、EEZ内の資源生産力の向上、水産物供給基盤の整備、完全で活力ある漁村作りなどを総合的に整備。 Eでは、漁業協同組合系統の組織・経営・事業の改革を促進する方針だ。

 以上の計画案に沿って、漁船漁業の構造改革、漁業取り締まりの罰則強化などを内容とした漁業法・水産資源保護法改正案。部門別経理の徹底、漁業信用基金協会の保障基盤強化などの水産業協同組合法・中小漁業融資法改正案。漁業整備事業の実施主体としての「国の追加」など漁港漁場整備法改正案――の3系統の関連法案を今国会に提出する。罰則強化の方向では、高価なナマコやウニを密漁し、中国などで組織的に売りさばく悪質事例が各地で多発しているため、無許可操業の罰金・懲役の刑罰体系を引き上げるなど、違法操業の監視・取締能力の向上を検討している。

資源管理強化で国際競争力向上
 読売新聞は2月15日の紙面で、 @先進漁業国で今も「オリンピック方式」を温存しているのは日本だけだ  A米国、ノルウェー、アイスランドなどには漁獲枠を他の漁業者に譲渡する制度もある  B日本近海のマイワシの漁獲量は05年が3万トンで、ピークだった1988年の449万トンのわずか0.67%に激減した  CTAC制度では、多くの漁業者が取り急ぐため、産卵期の魚や小型魚まで取られ、総漁獲量がTACを上回るケースも多い  DIQ制度を導入すれば、資源が減った魚の取り過ぎを抑え、持続的な漁業が期待できる――など多くの点を指摘。「資源保護より漁業者の利益を優先してきた日本の実態は『資源管理の途上国』と言っても過言ではない」と、決めつけている。

 確かに水産庁がIQ制度の導入を検討しているのは、オリンピック方式の現行制度では、著しく資源が悪化し実効性に欠けるとの批判が無視できなくなったため、欧米より立ち遅れた水産資源の管理を強化し、衰退が続く国内漁業の国際競争力を向上させようとしているからだ。ただし、同庁は「日本は多くの魚種を対象に多様な漁業が存在し、漁船や水揚げ港の多さから、順守の徹底が難しい」と問題点も指摘している。これらの点を早急に煮詰め、改善する必要があろう。同時に肝腎なのは、地球温暖化で漁業資源が微妙に変化していることから環境(エコロジー)を重視し、農林業も含めた総合対策を確立しなければならないと思っている。