第139回(1月1日)高級マグロが消える? 資源枯渇で魚価高騰
 いざなぎ景気以上の好況と言われながら、正月用品が並ぶ年の瀬の東京・御徒町は例年ほどの賑わいは見られなかった。新巻鮭が値上がりし、クロマグロなども漁獲量削減の報道で高騰と入荷不安が予想され、庶民は早くも高級魚を敬遠し始めているようだ。

 鳥インフルエンザ、BSE(牛海綿状脳症)、ヘルシー食品嗜好などの影響で、世界的に魚食文化が盛んになり、ますます漁業資源が枯渇し、それに連れて魚価が上昇傾向にある。
 特に経済発展の著しい中国は、12億国民の胃袋が鳥・豚肉や淡水魚から海の魚貝類に向かい、魚の"暴食"の様相を呈している。昨年末には魚価の上昇と国内市場の縮小という内憂外患に追いつめられたマルハグループとニチロが統合を発表するなど、日本の水産業界の苦境を浮き彫りにした。

 私は党の水産部会長として07年度予算編成では「漁船漁業構造改革事業」などの予算獲得に努力したが、今年は水産の生産―加工―流通各分野に渡り、国際競争力を強化する「攻めの水産」を大いに推進し、水産業界を立て直そうと意欲を燃やしている。

欧米・中露に魚食文化拡大
 欧米や中国などでは、BSEや鳥インフルエンザの発生後、肉から魚中心へと食生活が見直され、海産物の需要が急増している。それに輪をかけているのが寿司、刺身など日本食ブームだ。開放経済で躍進した中国では、アヒルや鯉、ナマズなどの淡水魚より海の幸に嗜好が移りつつあり、豊富な石油・ガスで経済を立て直したロシアもモスクワには回転寿司などの和食店が150店も軒を連ねている。
 厳寒期にウオッカをあおるために男性の寿命が短いとされるロシアでは、長寿国日本のヘルシー食品が見直されているからだ。マグロ輸出国の台湾も刺身人口が増えて、自国のマグロ消費分が多くなっている。高級魚に限らず輸入原材料も高騰し始めた。

 マルハの五十嵐勇二社長は「水産業界では、世界的な水産物需要の拡大を背景とした原料価格の高騰が課題となっている」と2社統合の理由を説明した。水産庁によると、米国から輸入するマルハの蒲鉾、ちくわの原料であるスケトウダラやニチロの缶詰原材料であるギンザケは、価格がジリジリ値上がりしているという。


マグロ5機関が漁獲枠削減
 ここで見逃せないのが、マグロ漁獲の制限だ。テレビ朝日も昨年末に「中国の巨大胃袋が日本のマグロを奪う」で暴食ぶりを特集した。
 マグロは「トロ」の部分が多いクロマグロ(ホンマグロ)やミナミマグロ(インドマグロ)、赤身の部分が多く値段も手頃なメバチマグロやキハダマグロ、「ツナ」の缶詰などに使われるビンナガマグロの5種類ある。

 マグロの国際資源管理機関はメバチ、キハダを対象とする「インド洋まぐろ委員会」(IOTC)、「全米熱帯まぐろ類委員会」(IATTC)、「みなみまぐろ保存委員会」(CCSBT)、「大西洋まぐろ類保存国際委員会」(ICCAT)、「中西部太平洋まぐろ類委員会」(WCPFC)の5機間がある。IOTCは昨年5月の年次総会でメバチの漁獲枠設定に合意できず、今年5月の会合で再協議することになり、IATTCも昨年6月の年次会合でメバチの削減に合意できず現行制限を1年延期した。
 問題なのは高級マグロの漁獲枠削減だ。

日本の漁獲枠5年間半減
 マグロの総漁獲量は1950年代、年間50万トンに満たなかったが、2000年代には200万トンを超えてしまった。乱獲が進んでマグロが激減、海外市場ではマグロの争奪戦が起きて価格が高騰している。

 とりわけ、ミナミマグロの総漁獲量は、1960年代に年間約5万トンだったものが、70年代には4万トン台になり、最近3年間では2万トンを下回ってしまった。このまま放置すれば2030年代には卵を産む親魚がゼロになる可能性もあり、資源の枯渇・絶滅に歯止めをかけるため、昨年10月に宮崎市で開かれたミナミマグロのCCSBTは、「取りすぎ」が指摘された日本の漁獲枠を、今年から5年間に昨年の6065トンから半分以下の3000トンに減らすことが決められた。日本の半減に加え、今年は豪州の蓄養事業の漁獲量を検証することにしている。他の各資源管理機関でも活発に話し合いが進められている。


29日の神戸会合が正念場
 大西洋と地中海で獲れる最高級のクロマグロなどを対象としたICCATは、昨年11月26日にクロアチアで開いた年次会合で東部大西洋・地中海産クロマグロの総漁獲量枠を今年から4年間で現在の3万2000トンを段階的に2万5500トンまで約2割削減することに合意。1月29日から神戸で臨時会合を開き、各国・地域別の漁獲枠決定を目指すことを決めた。

 その意味で神戸会合こそが正念場だ。クロアチア会合では、地中海沿岸の加盟国マルタなどが外貨獲得のために行っている、巻き網で群れごと漁獲した小型マグロを生け簀で太らせる蓄養マグロについて、「あまりにも小さいうちから漁獲することが、乱獲の原因になっている」と指摘された。
 日本でクロマグロのトロが比較的安い価格で食べられるようになったのは、地中海の蓄養マグロの約8割に当たる約2万5000トンを輸入しているからだ。

 このため、
@禁漁期間を7月15日〜8月15日の1カ月間から7月1日〜12月31日までの半年間に拡大
A現在10キロ未満とされている小型マグロの体重規制を30キロ未満に厳格化――など、小型マグロの乱獲防止措置を取り決めた。

メバチ、キハダ規制は先送り
 また、臨時会合に先立つ1月22日には、日本が呼びかけて世界5国際機関が初めて集まる「マグロ類地域漁業管理機関合同会合」を神戸で開く。非加盟国による乱獲など、各機関が管轄する海域をまたぐ問題についても徹底討議する方針だ。

 大衆マグロのメバチ、キハダなど対象のWCPFCも、科学委員会がメバチ、キハダの総漁獲量削減を勧告したのを受けて昨年12月15日にサモアで年次総会を開いたが、漁場を持つ南太平洋の沿岸漁業国と日本、中国など遠洋漁業国との利害対立がむき出しになり、メバチ、キハダ漁の規制強化は先送りすることになった。各機関で日本が狙い撃ちに遭うのは、貝塚からマグロの骨が出土するように日本人は石器時代から食べてきて、今では世界のマグロ総漁獲量の4分の1を食べる最大のマグロ消費国であるからだ。
 それだけに日本は、伝統あるマグロ食を守るため、国際的な資源管理の強化でリーダーシップを発揮しなければなるまい。

ノロウイルスで牡蠣も暴落
 一方、ノロウイルスによる感染性胃腸炎が猛威を振るい、牡蠣など2枚貝が原因と見られ価格が3割も暴落し、広島、仙台などの牡蠣生産業者が松岡利勝農水相に救済策を陳情した。
 厚生労働省の緊急調査で、ノロウイルスが原因の食中毒として保健所で確定したのは11月以降約210件で、患者は約1万人に達している。感染は主に患者の便や嘔吐物に含まれたウイルスが人の口に入って起きるもので、牡蠣などの2枚貝は、中心部を85度以上で1分以上加熱すれば感染力を失う。生で食べない限り安全だが、風評被害で価格が下落しているのだろう。

 異常気象で昨年秋にはサンマの大群がサロマ湖に打ち上げられるなど環境悪化による異変も起きている。  鮭の定置網が振るわず新巻鮭は1尾800円も値を上げた。色々な現象で漁価は不安定だし、水産物の消費は減少を続けている。
 内閣府が昨年末に発表した食料供給世論調査によると、7割の人が日本の食料自給率40%を「低い」とし、将来の食料供給に不安を感じている。穀物ばかりか海産物の輸入依存も増えている。蓄養など「育てる漁業」、国際競争力強化の「攻めの水産」が是非とも肝要である。