第138回(12月16日)60年ぶり教育法改正 防衛庁が省昇格
 臨時国会は、安倍政権の目玉である教育基本法案と防衛庁の省昇格関連法案の2法案を成立させて12月19日に閉幕する。教育法案の強行採決に反発した野党が衆参両院の審議を一斉に拒否して1週間空転したが、与党が沖縄県知事選に勝利した後は比較的順調に審議が進み、会期内に成立できた。教育基本法は1947年の制定以来、初めての改正で、公共の精神を尊ぶことなどを前文に盛り込んだほか、生涯学習などの条項を新設し、18条で構成されている。

 省昇格関連法は、内閣府の外局と位置づけられている防衛庁を防衛省に昇格するほか、自衛隊法を改正し、自衛隊の国際平和協力活動を付随的任務から本来任務に格上げすることも盛り込んでいる。このため野党共闘での反対は激しく、私は衆院の安全保障委理事、教育基本法特別委委員として両法案の審議に日夜腐心し、多忙な日々を送った。それだけに、両法がめでたく成立し、表現し難い充足感を味わった。残る2週間は07年度予算案の編成に、党水産部会長としてもう一息、頑張ろうと思っている。


吉田松陰の志継ぎ教育再生
 「美しい国日本を実現するには、次代を背負う子どもや若者の育成が不可欠。近年、子どものモラルや学ぶ意欲が低下し、家庭や地域の教育力の低下も指摘される。教育の目的は、志ある国民を育て、品格ある国家、社会を作ることだ」――。首相は所信表明演説で、吉田松陰がわずか3年間に若い長州藩士に志を持たせる教育をし、有為な人材を輩出した松下村塾を引き合いに教育再生の意義を唱え、教育基本法改正の決意を表明した。「教育国会」と言われるゆえんだ。

 改正教育基本法は、前文に「公共の精神」「伝統」「文化」の尊重を明記。教育の目標に「伝統と文化を尊重し、それを育んできた我が国と郷土を愛する」態度を養うことを掲げ、@「生涯学習」「大学」「私立学校」「家庭教育」「幼児期の教育」の条文を追加A義務教育の「9年」の年限を削除B教育政策の基本方針や施策を定めた「教育振興基本計画」の策定を義務づける――などがポイントだ。


必修逃れ、やらせ質問で紛糾
 ところが、首相が官房長官時代の今年9月2日に青森県八戸市で開かれた政府の「教育改革タウンミーティング」で、内閣府などが教育基本法改正案に賛成の立場で質問するよう参加者に依頼していたことが明るみに出た。その後、内閣府調査委員会(委員長・林芳正副大臣)の調査で、全174回のタウンミーティングのうち、15回もこの“やらせ質問”があり、ミーティングの質問者に謝礼を払ったことが報告されたほか、高校の必修逃れ問題、いじめ問題で中高生の自殺が多発するなどで、法案の中身よりも教育委員会の在り方や学校教育を巡って審議が紛糾した。

 民主党の鳩山由紀夫幹事長は「国民の声をお金で買収して教育基本法を強引に成立させる。信じられない話だ」と語り、社民党の福島瑞穂党首も「死に物狂いで廃案を目指し頑張る」と激しく抵抗した。しかし、衆院での審議時間は郵政民営化法案に匹敵する106時間を超えており、二階俊博国対委員長は「審議したら多数決で物事を決するのが民主主義で、学校でも教えている」と野党を皮肉り、頃合を見て与党で強行採決した。野党は改正案を衆院特別委に差し戻すよう申し入れたが河野洋平衆院議長は「円満ではなかったが、運営に瑕疵(かし)があったとは思わない」と退けた。


首長に教育権は渡せぬと反論
 衆参両院の審議を通じ、必修逃れなどで問題になったのは、教育委員会制度で、文部科学省、教委、学校長などの責任が明確でないという指摘が相次いだ。政府案は、国と地方の「適切な役割分担」と「相互の協力」を定めているが、民主党は「責任の所在が曖昧だ」とし、教育行政の最終責任者を国と位置づけ、「教委を廃止し、教育行政の権限を首長に持たせる」との対案をぶっつけてきた。

 これに対し政府・与党は「特定の主義主張を持つ首長に教育権を渡すのは懐疑的だ」と反論、議論は平行線を辿った。愛国心に関しては、前通常国会の議論と違わず、「我が国と郷土を愛する態度を養う」とした政府案について、社民党などは「内心の自由に踏み込むべきでない」と批判。これには首相が「国を愛する心情を内面に入り込んで評価することはない」と切り返した。このほか、国旗掲揚の際の起立や国歌斉唱を求める東京都教委の通達を巡る東京地裁判決などで活発な論議を呼んだ。


野党共闘転換し民主が賛成
 防衛庁の省昇格関連法案は、北朝鮮の核実験で日本の安全保障に対する国民の関心が高まったことを与党は“追い風”ととらえ、10月27日の衆院本会議で審議入りし、引き続き開かれた委員会で野党3党が欠席するまま、法案の提案説明が行われた。民主党は「国防省」への昇格など独自案を掲げており、省昇格にはもともと賛成だが、沖縄県知事選での共産、社民両党との共闘を重視する思惑から、「防衛施設庁の談合事件の真相解明が不十分だ」と主張するなど慎重審議を求めていた。

 だが、鳩山幹事長は沖縄知事選後、「省昇格は基本的には当然のこと。(賛成の条件に政府が)官製談合や情報漏洩などで何らかの方策を示す必要がある」と述べ、野党共闘を転換させた。同党は11月24日の外務・防衛部門会議で@官制談合の再発防止A自衛隊員の海外無断渡航と機密情報の漏洩など不祥事の再発防止Bイラクでの自衛隊活動は「本来任務」とせず「付随的任務」とするC麻生外相らの核保有論議容認発言に関する集中審議――の4条件を満たせば賛成することを決めた。


1月に省昇格、久間防衛相に
 同月30日の衆院本会議の採決では、民主党から横路孝弘副議長(旧社会党出身)が「本来任務に海外派遣が入った。自衛隊が世界中に行くことになる」として反対、病気療養や事前に欠席届を出した議員以外に採決前に2人が退席、2人が欠席した。鳩山幹事長は法案が衆院を通過した際、記者団に「多くの人が心の中で懸念は感じているが、政権政党を目指すなら、乗り越えなければいけない」と語っている。同党の保守系議員を中心に、「安全保障政策で現実的な対応をしないと、政権担当能力を疑われる」という声が強まっているからだ。

 1954年に発足した防衛庁は、内閣府の主任大臣である首相を通さなければ、防衛長官が重要案件を閣議にかけたり、財務相に予算を要求することもできず、「迅速な政策決定を妨げている」と指摘されていた。それが、来年1月からようやく省に格上げされ、防衛長官は防衛相となる。しかし、久間章生防衛長官が衆院本会議で強調した通り、専守防衛、非核3原則といった防衛政策の基本を変更することはない。