第135回(11月1日)北核実験の制裁措置(上)中露も強硬姿勢
 北朝鮮の核実験に対する国際包囲網が形成された。だが、北朝鮮は「米国主導の制裁措置は“宣戦布告”と見なす」と強気で、「金正日将軍様の銃となり、爆弾となって闘う」とヒステリックに先軍政治を国民に煽っている。まるで戦時中の日本が「進め1億火の玉だ」、「この1銭(1戦)、何が何でも勝ち抜くぞ」と1銭貯蓄を奨励し太平洋戦争にのめり込んで行った非常事態と似ている。

 2回目の核実験を巡ってなおも外交の駆け引きが続いているが、北朝鮮が暴発し核拡散すれば日本ばかりか世界の重大な脅威となる。  政府は船舶検査の展開海域として海上交通要路の対馬海峡と沖縄西北方の2海域を挙げたが、佐世保の海自護衛艦やP3C哨戒機の役割が重くなってきた。なぜ北朝鮮は核武装するのか。如何に日米韓が連携してそれを阻止し中露も共同歩調をとるのか。上中下に分けて整理した。


日米韓外相会談で北包囲網
 政府は10月11日、北朝鮮の核実験実施発表に対する日本独自の追加制裁措置を決定した。一方、日本は国連安保理事会の議長国として調整役を務め、拘束力の強い国連憲章7章に基づき大量破壊兵器物資の移転阻止に向けた船舶などの貨物検査(臨検)や金融制裁などを盛り込んだ制裁決議1718をまとめ、14日の安保理事会で全会一致採択した。

 これを受けて19日にソウルで、日米韓3国外相会談を開き、北朝鮮包囲網強化のため同盟関係の結束を確認、国連決議の全面履行について協議した。米国は大量破壊兵器がイランや国際テロ組織に拡散しないよう日本海などで北朝鮮に出入りする船舶への貨物検査を実施するが、日本も船舶検査法により海上自衛隊が自ら船舶検査に参加するほか、周辺事態法に基づき米艦船に給油などの後方支援を行う。
 
 米国以外の国が船舶検査に加わる場合、現行法では後方支援が出来ないため、政府与党は新たな特措法の検討に入った。しかし、船舶検査は武力の威嚇・行使や集団的自衛権の発動など憲法に抵触するケースが多い。衆院安保委員会に属する私は、防衛政務官の経験も生かして法整備と取り組む考えである。


他国より厳しい制裁措置断行
 政府が11日の関係閣僚・安全保障会議で決めた日本独自の追加制裁措置は、@北朝鮮籍船舶の入港禁止  A北朝鮮からの輸入全面禁止  B北朝鮮籍を有する者の入国原則禁止(一般の在日朝鮮人の再入国は例外)――が柱で、他国に比べて厳しい制裁措置だ。13日の閣議決定後、14日から6ヶ月間の期限付きで発動された。政府は7月の北朝鮮によるミサイル発射後、貨客船「万景峰号」を入港禁止としたが、追加制裁発動の理由に、「ミサイル開発と併せ日本の安全保障上の脅威が倍加した。 北朝鮮が拉致問題に対して何ら誠意ある対応を見せない」などを挙げた。

 日本の主要港への北朝鮮船舶の入港は05年が延べ769隻、今年は9月までに延べ578隻に上っているがこれらの船舶は日本へ入港できなくなった。北朝鮮からの輸入額は05年で松茸、アサリ、ズワイガニなど約145億円だが、政府は輸入禁止の影響を受ける輸入業者などの支援を検討する対策会議を発足させた。

安保理が憲章7章の厳格制裁
 国連安保理事会が全会一致で採択した制裁決議1718は、@核実験実施声明は国際の平和と安全に対する明白な脅威  A国連憲章7章の下で行動し、7章41条に基づく非軍事的措置を取る  B北朝鮮に核・ミサイルの放棄を義務付ける  C北朝鮮に対する大型兵器、核・ミサイル関連物資、贅沢品の移転を阻止  D北朝鮮に出入りする貨物の検査を加盟国に要請  E北朝鮮の核・ミサイル関連の海外資産を凍結  F6カ国協議と核拡散防止条約(NPT)への復帰を要求――が骨子。 北朝鮮に核・ミサイル放棄を迫る国際社会の意思を明確に示している。

 これに対し、北朝鮮の朴吉淵国連大使は直ちに安保理事会で「不当な決議を全面拒否する」と演説し、「米国が安保理を操り、集団的制裁を科そうとしている。米国が北朝鮮への圧力を増大させれば『宣戦布告』と見なし物理的対抗措置を講じる」と、2回目の核実験を行う可能性を示唆した。ちびっ子ギャングが張り子の原爆の導火線を振り回す感じだ。中国の王光亜国連大使は決議採択後の演説で、「中国は貨物検査に賛成しない」と明言。関係国に対し緊張激化を避けるため「慎重かつ責任ある対応」を取るよう求めた。

 「懲罰」表現は中越戦争以来
 中国は当初から、米国が9日に提示した決議案について、「何らかの懲罰的措置を取る必要がある」と述べ、ロシアとともに制裁決議の採択を容認している。 読売新聞によると、「懲罰」との表現は、1979年にベトナムが中国寄りのカンボジアに侵攻した時、中国が懲罰として武力攻撃を加えた中越戦争を想起させる重い言葉だという。
 
 だが、決議案で中露両国は、安保理の軍事行動の可能性を排除し、北朝鮮の核・ミサイル開発阻止に絞った制裁を要求。強い拘束力を持つ国連憲章7章に基づく決議には応じたものの、7章41条の経済的制裁に限定するよう固執するなど、色々な点で主張を譲らなかった。このため、米英仏中露の安保理5常任理事国と議長国日本は、大使級会合を頻繁に開き最終調整を進め、ようやく合意に達した。

 最終調整では、ロシアの要求を受け、北朝鮮への移転阻止が義務づけられる大量破壊兵器関連物資、技術のリストを作り、規制対策を明示することにした。このように、制裁決議が全会一致で採択されるまでには中露への配慮が優先した。

怒った胡主席、唐氏を米露朝派遣
 ところが、胡国家主席は17日、訪中した扇千景参院議長と会談し、「北朝鮮には、国際社会の“強烈”な反応を知らしめる必要がある」と述べ、王大使とは全く違った異例の強い表現で、北朝鮮に強い圧力を掛ける基本姿勢を示した。 それを立証するかのように中国は16日から、対北朝鮮国境で中朝間を往来するトラックの貨物の全台検査や、一部銀行による金融機関の送金停止を実施するとともに石油供給を削減、28日からは中国南方航空が北京と平壌を結ぶ定期便の運行を取りやめた。

 これは、北朝鮮が中国に対し「今後3回核実験を行う」と伝えてきたのに対し、胡主席が怒って強力な制裁措置に踏み切ったものと見られている。胡主席は中国外交を統括する唐家セン国務委員を特使として11日から米露両国に派遣、「強い制裁」で共同歩調をとることを確認していたが、さらに18日には唐氏を訪朝させ、金日成総書記に対し「2回目の核実験を自粛し、6カ国協議へ早期に復帰するよう」強く促すメッセージを伝えた。