第132回(9月16日)百歳以上28,395人 高齢者対策の充実を
 9月18日は敬老の日。厚生労働省などの調べによると、百歳以上のお年寄りは28,395人(内男性4,150人)。65歳以上は2,640万人(5人に一人)。平均寿命は男性78・53歳、女性85・49歳で女性は世界一、男性は第4位の長寿国だ。つつがなく晩年を過ごされていることをまず祝福したい。聖路加国際病院の日野原重明理事長は95歳でなおも現役の臨床医師。私も来年1月は還暦だが、私と同じ団塊の世代が大量に定年を迎える来年から、65歳までの定年延長や再雇用を制度化する企業がめっきり増えている。労働力が不足する少子高齢化社会では当然のことだが、これまで蓄積してきた技能を活かしてさらに企業に貢献、後進の指導に当たって欲しいものだ。高齢者は第2次世界大戦で辛惨を舐め、戦後は高度成長の牽引車となって、復興・発展の礎を築いてくれた先達だ。しかし、10年近く続いた低金利で退職金は年金補填の利殖どころか生活費に取り崩され、医療費の高騰などで脅かされ、高齢者は振り込め詐欺など新手犯罪の標的にも晒されている。ポスト小泉3候補の政権構想には具体策の明示はなかったが、私は年末に向けた07年度予算編成できめ細かい高齢者対策など社会保障費の充実を主張していきたいと思っている。


医療費3倍増、運転免許に講習料
 「退職金が目減りする一方なのに、8月1日から医療費が倍になった。10月からは3倍になるようです。運転免許も講習料6、150円を払って受講しないと更新してくれないそうです。これこそ年寄り虐めの悪政ではないでしょうか」――。これは選挙区のK氏(71)の切実な訴えだ。市役所に問えば、「所得が増えたから」と答えたという。だが、この男性の所得は前年度と変わらず、雑収入の全体はむしろ減っている。さらに市役所に質せば、原因は平成17年度から老齢者控除などが廃止となり、控除額が課税対象の所得金額に組み込まれたため、2月の確定申告の結果、住民税にも跳ね返り、「現役並み所得者」と判定され、患者負担が1割から2割に倍増したらしいという。運転免許も、運転技術の向上、身体機能の自覚、道路交通知識の向上などを目的に@高齢者講習Aシニア運転者講習B運転免許取得者教育Cチャレンジ講習と特定任意高齢者講習(簡易講習)――など多岐に渡り、受講者には終了証明書が交付され、これが免許更新の条件となっている。


10月から現役並みに3割負担
 厚労省によると、高齢者の医療制度改正で、@平成18年10月から70歳以上高齢者のうち現役並みの所得者は2割負担を現役と同様3割負担とする<これには、「公的年金等控除の縮減及び老年者控除の廃止に伴い、新たに現役並み所得者に移行する70歳以上の高齢者は平成18年8月から2年間、自己負担限度額を一般並みに据え置く」との注意書きが付いている>A同20年4月から75歳以上の後期高齢者は1割負担とする(ただし現役並み所得者は3割負担)B同月から70歳未満の者はこれまで同様3割負担とし、70歳から74歳は2割負担とする(現役並み所得者は3割負担)。その際、1割負担から2割負担となる70歳から74歳までの低所得者は、自己負担限度額を据え置く措置を講ずる――と説明した。国民にとっては税の確定申告と同様わかりにくい。選挙区のK氏の場合は、上記の「注意書き」に該当しているようだ。つまり、老齢者控除などが廃止になって所得がその分膨らみ、1割負担から「現役並み所得者」の3割負担になるという。しからば、激変緩和措置があるとも思えないのに、なぜ8,9月の2ヶ月間だけ2割負担とし、2段構えで10月から3割負担になるのか。この点疑問が残る。

課税所得145万円以上は現役
 この点の老人医療負担割合を決定する仕組みについて、さらに同省に質すと、@老人保健法施行令第4条第2項を根拠として、住民税の課税所得が145万円以上であるかを判定し、それ以上ある場合は、現役並み所得者区分となるA課税所得による判定で現役並み所得者区分となっても、基準収入額適用申請を行い、老人保健施行令第4条第3項に定める収入額による判定を行うこととなり、高齢者複数世帯の場合は520万円、高齢者単身世帯の場合は383万円の基準に収入額が満たなければ一般区分となり、負担割合は1割になる――という返事が返ってきた。ますます分からない説明だ。厚労省説明の、「課税所得」(課税対象の所得金額)とは、収入から経費等の控除金額を差し引いた額であり、「収入額」とは所得税法上の収入額で、控除金額を差し引く前の額だ。K氏は厚生・企業年金の公的年金とアルバイト料など雑収入の計約350万円で暮らす典型的な年金生活者で、基準収入額は383万円以下。だが、税制改正で老年者控除50万円と配偶者特別控除38万円の計88万円が控除されずに課税所得に組み込まれ、課税所得は約150万円に膨らみ145万円を超えてしまった。このため「現役並み所得者以外」の1割認定から、現役並みにカウントされた。それが10月からさらに3割に跳ね上がるということのようだ。

 75歳後は1割負担で済むのか
 これでは、長期間勤務し年金支給条件の最も良い時期に退職した厚生・公務員共催年金の年金生活者が、75歳の後期高齢者になったとしても、「現職並み所得者以外」の1割負担になることは少数者に限られよう。厚労省は「89%は1割負担」と言うが怪しい物だ。少子高齢化社会の進展で、年金、健保の給付対象となる高齢者が増加する一方、拠出制度を支える若者は減少する。社会保障に投入する公費は、06年度の29兆円が11年度は36兆円、15年度は41兆円にまで膨れる見通しだ。各世代持ち回りで拠出するのが社会保障制度だが、社会保障費が急増するなかではいつまでも若年層に負んぶされる時代ではない。健常の高齢者に相応の負担が必要になってきたことは分かる。しかし、高齢化社会で多発している生活習慣病の治療には予想以上に多額の費用がかかり、服用を始めた薬の量は減らすことが出来ない。このため、年寄りは若年期に大病に罹らず、あまり健保の世話にもならず、老後の健康生活を夢見てせっせと保険金を積み立ててきた。これが一挙に2倍、3倍にも引き上げられれば、高齢者の不満は爆発しよう。K氏の場合も、従来は月数千円で済んだ医療費が3倍の月1万以上にアップされ、運転免許の更新が3年に1度、免許手数料と講習料を合わせ1万円近く取られるとわかって驚き、不満を訴えているわけだ。


講習より酩酊運転取締りを
交通過密や認知症の増大などで高齢者の事故が増えている。年のせいでアクセルとブレーキを踏み間違えたり、高速道での居眠り運転や逆走したりして大事故を起こすケースが目立つ。講習が必要なことは分からぬでもない。政府は平成14年6月の道交法改正で70歳以上の講習を義務づけた。だが、3時間の講習に手数料6千百円も取る必要があるのか。昔はややこしい更新手続きだったため、代書屋に頼まなければ更新出来ず、その費用もバカにならなかった。マスコミは「警察と代書屋の癒着」としきりに叩いたが、警察側が全国共通のコンピューターで効率的に処理するようになってから費用も時間も軽減され、国民に歓迎された。講習は公安委員会が各地教習所に委託しているが、全国の教習所は交通警察官の格好な天下りポストになっている。先日は福岡の地方公務員が酔いどれ運転で大事故を起こしたが、その後も大分県職員が懲りずに酩酊運転で逮捕。読売によると都道府県、政令指定都市の飲酒運転処分は05年度が96人、01年度以降422人に達した。

参院選に勝つ社会保障政策を
 高速道では相変わらず暴走族が我が物顔で疾走している。高齢者の講習よりも飲酒・乱暴運転の取り締りを徹底するのが先ではないか。老齢パワーはおとなしく行政を見つめているが、不満、苛立ちのツケは来春の統一地方選、来夏の参院選に当然跳ね返るだろう。民主党の小沢一郎代表は、選挙目当てに出来もしない持論の「所得税・住民税の半減」(出馬の基本政策からは削除)を唱え、菅直人代表代行も「団塊の世代党」の看板を立てると言い出している。総裁選で安倍晋三官房長官は「日本型社会保障モデル」の実現を掲げ、@社会保険庁の徹底的改革A被用者年金の一元化B確定拠出型年金――を打ち出している。谷垣禎一財務相も@消費税率を引き上げ社会保障の財源化A「子宝税制」の創設――を、麻生太郎外相も子育て支援策を主張しているが、3氏とも年金、医療、介護などの具体策には触れていない。消費税を目的税化する谷垣構想でも給付と負担割合などは詰めていない。医療費は年10万円以上を所得から控除されているが、負担増の激しい医療費は課税対象から全額控除するぐらいのことを検討しても良いのではないか。政権自民党としては年金、医療面で完璧なセーフティネットを構築、高齢者の期待に応えなければなるまい。