第131回(9月1日)半年ぶり米牛肉輸入再開 業界は販売に慎重
米国産牛肉の輸入再開第1陣が8月7日、成田に到着、同月中旬から店頭に出回りだした。BSE(牛海綿状脳症)の特定危険部位である背骨が混入していたため、1月20日に輸入が再停止されて以来、半年ぶりの輸入再開である。だが、牛丼愛好者からは歓迎されているものの、外食店やスーパーなど流通業界は安全性を疑問視し、豪州産や国産牛肉などで対応する店が多く、食材の使用再開や販売に慎重な会社が多い。牛丼チェーン店の吉野家ディー・アンド・シーですら、輸入再開決定2カ月後の10月ごろから米肉使用に踏み切る方針であり、庶民が待ち望む「安くて気軽に食べられる」牛丼が復活するのはまだ先のことになりそうだ。このため、成田空港では第1陣輸入肉340箱の梱包を解き、徹底的な水際検査を行った。輸入再開条件を了承した7月の自民党の小委員会では「査察や検査が厳しいのは最初だけですぐ緩むのではないか」との懸念が示された。私は衆院農水委理事経験者として今後の推移を見守り、「食の安全」に万全を期したいと考えている。

日本検査官が食肉査察同行
農水、厚労両省は自民党の了承を得て7月27日、BSE対策本部の会議を開き、米国産牛肉の輸入再開を決定した。決定に至るまでの日米協議で米国側は「輸入再開前に食肉施設の職員や米農務省の食品安全検査官に、日本向けの輸出条件を周知徹底させるほか、食肉施設に作業マニュアルを明確に求める」など、どれも基本的な再発防止策ばかりを示した。これに対し日本側は、@日本の検査官が輸入再開前に米国の食肉施設を査察し、安全性を確認するA輸入再開後、米農務省の食肉施設の抜き打ち検査に日本の検査官が同行するB自主的な国内対策として空港などの水際検査態勢を強化し、開封する輸入牛肉を増やすほか、米国の食肉施設から輸出リストを取り寄せて書類審査を徹底する――などの厳しい条件を挙げた。米国のずさんな管理・検査態勢が原因で、1月に輸入が再停止されただけに、査察に関する条件を特に強く求めたわけだ。米国側は最終的に日本案に合意した。

34施設の輸入再開認める
これに基づき、両省の検査官が6月24日から7月23日にかけて実施した米食肉処理施設35カ所の査察報告によると、20施設は特段の問題はなく、書類上の不備などがあった13施設も査察後に是正措置が取られたと認めた。また、昨年12月に日本が輸入を再開した際、米政府が対日輸出施設と認定する前に牛肉を対日輸出していた1施設は、米政府の監査体制強化を条件に輸出を認めることにし、合わせて34施設の輸入再開を認めることにした。しかし、合併して作業マニアルを大幅変更中の1施設は、マニュアルの整備を日米で確認するまで輸出を認めないことにした。一方、1月の輸入再停止に伴い、税関を通さず各地の保税倉庫に保管されている米牛肉の扱いについては、3カ月程度、米国産牛肉の輸出状況を見て、安全性をある程度確認してから国内市場に流通させることになった。農水省は万が一にも、危険部位が混入した牛肉が再度輸入された場合は、再び責任が問われることから、万全のチェック態勢で臨んでいる。

日本消費者の不安消えず
今回の輸入業者は米大手量販店のコストコホールセールジャパン(東京)。冷蔵牛肉約5.1トンを輸入し通関手続き終了後、国内では東京都町田市、神奈川県横浜市、千葉市、兵庫県尼崎市、福岡県久山町の各店舗で販売に入った。農水省によると、輸入牛肉は対日輸出認定を受けた米食肉加工、カーギル社のコロラド州の工場で処理され、米航空貨物大手のフェデラルエクスプレス79便で成田空港に到着した。だが、日本の検査官がわずか1ヶ月間で米国の35施設を事前査察したとしても、短時間で入念な査察が出来たかは疑問視され、検査官の査察能力も問われている。それゆえ、米国産牛肉に対する日本消費者の不安は消えていない。NHKが8月22日に発表した世論調査では、国民の64%が輸入に慎重な態度を示した。同月末までに成田空港に到着したのは10便足らずで、20トン前後に止まるスローペースだ。このため、米国食肉輸出連合会は、ホームページに専門コーナーを設け、農場から食卓に届くまでを写真付きで紹介したり、全米2.7億人が毎日牛肉を食べていることをアピールするなど、安全性を訴えている。また、東京の食肉専門店で作る都食肉事業協同組合は、9月10日に試食会を計画しており、PRに大童だ。

米牛肉のイメージ低下
日本の外食や流通業界は、米国がいかに、「監査・査察体制を強化し、生後20カ月以下の牛を出荷しているので安全だ」と主張しても、米牛肉のイメージは低下して消費者の不信感が強く、米牛肉の需要は少ないと見ており、「全頭検査が行われない限り米国産牛肉は売りたくない」というのが本音のようだ。若干高めでも当面は定着しつつある豪州産、国産牛で対応することとし、米牛肉の販売には「まず消費者の動向を見極めてから」と輸入量も少なめに見積もり、慎重に構えている。イトーヨーカ堂など大手スーパーは総菜としての使用を含め当面、販売予定はなく、外食チェーンも再開時に原産地を表示し消費者に周知することにしている。このように消費者が不信感を抱いている以上、今後の課題としては、厳格な査察が行われているかなどを、中長期的に点検する体制作りが必要になると思う。また一面、国産牛の需要が伸びたことは、安全な地元産食材を地域で消費する「地産地消」の取り組みが加速した証であり、食料自給率向上の面から望ましいと考えている。