第128回(7月16日)鯨の正常化宣言採択 AU議連で1助果たす
 マスコミの扱いは小さかったが、カリブ海に浮かぶ小国、セントクリストファー・ネビスで開かれた国際会議では、画期的な成果が挙がった。国際捕鯨委員会(IWC)の年次総会3日目の6月18日、日本などの捕鯨支持国が共同提案していたIWCの活動正常化を求める宣言が、賛成多数で可決されたからである。82年の商業捕鯨一時禁止決定以来、捕鯨支持国が過半数を獲得したのは初めて。昨秋の国連常任理事国入りでは同盟国の米国の支持すら得られず苦杯をなめ、外務省は著しく評価を落としたが、今回は水産庁など政府と捕鯨業界が4半世紀に渡り、未加盟国にIWCの加盟を促し、捕鯨支持国を増やしてきた地道な外交努力が実を結んだもので喜ばしい。反捕鯨国の巻き返しも予想され、商業捕鯨が直ちに再開される見通しはないが、一時禁止解除への第一歩を踏み出した意義は大きい。私が1昨年夏訪問したギニア、モーリタニア、マリなどアフリカ諸国がIWCに新たに加盟し賛成票を投じてくれた結果だ。私は7月末から10日間、AU友好議連の1員としてアフリカ東部のウガンダ、ケニア、ルワンダ、3カ国を訪問する。ケニア以外の2国はIWC未加盟国なので来年総会に向けて多数派工作の一助を果たしてきたいと考えている。

一時禁止もはや必要ない
 年次総会で採択された宣言は、@82年に決定した商業捕鯨一時禁止措置はもはや必要ないA大量の魚を消費するクジラは沿岸国の食糧安全保障問題――などが骨子で、IWCに対し科学的根拠に基づく政策や規則を基本とするよう求めた内容。賛成33票、反対32票で可決されたが、当初、IWCの分担金を支払っていなかった捕鯨支持国のトーゴなどの国が支払いを終え、投票が認められたため、際どい1票差で採択された。賛成国は日、韓、露、ノルウエー、デンマークに中南米6カ国の沿岸国と再加盟したアイスランド。それに2000年以降に加盟した内陸国のモンゴル、カンボジアとモロッコ、ギニア、ベナン、ガボン、モーリタニア、コートジボワール、マリ、ガンビア、トーゴ、カメルーンなどアフリカ諸国の33カ国。反対国は米、英、独、仏、伊、スペイン、スウェーデン、ハンガリーなど欧米と豪、ニュージーランド、インドなど32カ国。宣言採択後、ブラジルとニュージーランドの代表団は「アイスランドの再加盟は認められていない」と決議無効を主張。豪代表も「この決議は捕鯨問題の解決に何の役にも立っていない」と訴えた。

撤回には4分の3賛成必要
 「反捕鯨国の数の力で(持続的なクジラ利用の)目的が遂行できない状況が続いてきた。反捕鯨国の理不尽な対応に対し、宣言が採択されたのは喜ばしいことだ」――。農水省の石原葵次官は捕鯨支持派の突破口が開かれたことを率直に喜んだ。しかし、この宣言に拘束力はなく、商業捕鯨を再開するには、82年の一時禁止決定を撤回する必要があり、それには投票国の4分の3の賛成が必要だ。国際捕鯨委(IWC)は「鯨族の保護を図りながら、捕鯨産業の秩序ある発展を可能にする」ことを目的に1946年、国際捕鯨取締条約(ICRW)が署名され、その実行機関として米、英など15カ国により48年に設立された。日本は51年に加盟し現在は約70カ国に達した。IWCは捕鯨国の資源管理を目的とする組織だったが、反捕鯨勢力が「鯨類資源は絶滅に瀕している」と初めは主張、それが否定されると「鯨は利口な動物だ」と主張を変え、60年代からは動物愛護の思想が盛り上がり、「捕鯨は残酷だ」と反捕鯨運動が活発化し、反捕鯨国が70〜80年代に新規加盟国を募るなど多数派工作を展開して、保護重視の組織に切り換えられた。日本としては反捕鯨勢力を覆し、IWCの正常化を図ることが悲願で、アフリカ諸国を中心に新規加盟を呼びかけ、今回は約20カ国の捕鯨支持国が参加した。

初勝利の画期的な決議
 「カリブ海に浮かぶ小さな島国が一躍世界の注目を浴びた。セントクリストファー・ネビス宣言は、IWCの歴史の中で、鯨類の持続利用派が初めて勝利した画期的な決議であり、ようやく正常化に向けて第一歩を踏み出した。<略>持続捕鯨支持派のリーダーとして、日本政府のこの後の更なる健闘を大いに期待したい」――。IWC科学委委員を40年間努めた大隅清治元水産庁遠洋水産研究所長は、6月末の読売新聞コラムに以上の要旨で喜びを載せ、IWCのあるべき姿を解説した。大隅氏によると、設立当初は鯨類資源の管理学が未発達だったため、資源の乱獲があったことは確かだが、60年代に管理方策を強化した結果、資源減少は食い止められ、IWCの活動は正常化した。しかし、その措置で採算が合わなくなり、捕鯨から脱落していった欧米の捕鯨国は60年代末から捕鯨反対派に転じた。反捕鯨国は未加盟国をIWCの仲間に引き入れ、ついに82年に商業捕鯨の一時停止を採択した。それ以来「捕鯨産業の育成」どころか、捕鯨再開阻止の不正常な状態が20年以上も続き、鯨類資源が目覚ましく回復したと理解され、それを安全に利用できる改定管理方式(RMP)が開発されても、多数を占める反捕鯨派の抵抗によって、鯨類資源管理制度(RMS)の成立が遅らされてきた――と説明している。

「無記名投票」導入目指す
 IWCの年次総会の度にHPで取り上げてきているので、鯨類資源の回復状況とクジラの捕食による魚類資源の枯渇状況については重複を避けるが、最近ではサンマ、鰺、鯖といった大衆魚だけでなくマグロのような高級魚までクジラの餌食になっていることを考えれば、一刻も早く商業捕鯨を再開しないと宣言文に言う「沿岸国の食糧安保問題」どころか人類全体の蛋白源確保に重大な影響を及ぼす。大隅氏は「IWCの決議案に対する投票態度を分析すると、アングロサクソンとラテン民族の反捕鯨連合と、それ以外の民族の持続捕鯨支持連合との間の思想的対立の構造が見られる。前者は農・工業で生活を享受する豊かな国、後者は天然資源に頼って生活する貧しい国に色分けされる。すべての決定が評決によるIWCで商業捕鯨の一時停止を撤回するには4分の3の賛成票が必要なため、これからも長く苦しい道程を歩まなければならない」と前途の険しさを語っている。投票が記名式のため、穏健派の中には反捕鯨国やグリーンピースなど環境保護団体の圧力を受け、明確に捕鯨支持を打ち出せないケースも多いことから、捕鯨支持国側は来年の総会でも、今年否決された「無記名投票」の導入を再度目指す。

地道な議員外交展開
 外務省幹部は「新規加盟国を札束で捕鯨支持に引き入れたと報道されるなど、日本に対する中傷が広がっており、十分憂慮する事態だ」と懸念しているが、鯨類保護の姿勢を強調する欧米の反捕鯨国は今後も強く反発し、ますます多数派工作を強化すると見られる。外交は札束よりも誠意を示すことが重要だ。アフリカを訪問する際には、魚類資源の保護と人類の食生活の維持向上のためにも、魚類資源の合理的利用について詳しく説明、理解を求めるよう、地道ながら、私なりに議員外交を展開してきたいと考えている。