第126回(6月16日)2防衛政策を閣議決定 省昇格と米軍再編
 今国会は会期延長を見送ったため、主要法案の教育基本法案など政府提出7法案と国民投票法案など議員提出3法案の計10法案が未成立となった。このうち重要5法案は継続審議とされ次期政権に委ねられたが、防衛庁の省昇格関連法案は在日米軍再編の基本方針とともに国家安全・防衛政策上極めて重要なので総括しておきたい。閣議決定した在日米軍再編基本方針は、50年に1度という世界規模の米軍再編であり、国際テロの多発、中国の急速な軍事力強化など新たな安保環境に対処し、米軍と自衛隊の連携、一体化で抑止力を向上させるもの。それを6月10日夜のNHK番組「日本のこれから」では、「憲法9条が日本を守ってくれているので米軍との連携は不必要」などと“9条神話”に取り憑かれたような学者やジャーナリストが出演、額賀福志郎防衛長官、森本敏拓大教授に批判的発言をしたのには驚いた。公共放送の在り方に疑問を感じたが、政府の説明責任の必要性を痛感する。1月前のHPにも載せたが、自衛隊の志気にも影響するのでおさらいしよう。


在日米軍再編で特別措置法
 政府は5月30日の在日米軍再編に関する基本方針に続き、6月9日に防衛庁の省昇格関連法案をそれぞれ閣議決定した。在日米軍再編の基本方針は、@新たな負担を担う地方自治体の要望に配慮し、地域振興等の措置を実施A海兵隊のグアム移転は所要の経費を分担、早期実現B防衛関係費を合理化・効率化。経費見積もりが明確となり次第、中期防見直しC普天間飛行場移設は、日米安保協議委員会で承認された案を基本に、早急に建設計画を策定。地方自治体と協議機関を設置――を骨子としている。普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設については、日米両政府の合意案を基本として早急に代替施設の建設計画を策定。再編費用を捻出するため中期防衛力整備計画を見直すことなどを明記した。次期通常国会では、在日米軍再編推進のための特別措置法の制定や、個々の再編案実施に向けた具体的計画の策定に入るが、費用負担などが焦点となる。


基地・自治体への振興策拡充
 防衛庁は当初、普天間飛行場の移設について、額賀長官と稲嶺恵一沖縄県知事が11日の会談で「政府案を基本として対応」することで合意したのを受けて、キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)案を「辺野古崎とこれに隣接する大浦湾、辺野古湾の水域」と具体的地名を書き入れる方針だった。だが、その後、稲嶺知事が「政府案で合意したわけではない」と繰り返し主張したのに配慮して具体的な地名の記載を見送り、従来の飛行場移設方針だった99年12月の閣議決定は「廃止」と明記した。巨額の再編関連経費を捻出するため、米軍再編の経費見積もりが明確となった段階で中期防(2005年度〜09年度=24兆2400億円)を見直す。地元対策としては、名護市(沖縄県)や厚木基地(神奈川県)の空母艦載機が移駐する岩国基地(山口県)など再編で負担増となる自治体への振興策を拡充する。日米の最終報告から1カ月を経た閣議決定だったが、沖縄県は地元との協議継続」との文言が盛り込まれていないと反発。稲嶺知事は「十分な協議が行われたとは言えない中で閣議決定がなされたのは極めて遺憾」と政府の見切り発車に不満を述べた。


国際協力、周辺対応も本来任務
 一方、防衛庁の省昇格関連法案は、秋の臨時国会での成立を目指すが、防衛庁設置法を「防衛省設置法」に改正して省に昇格させる。防衛長官は防衛相となり、防衛省の任務や所掌事務、組織などは、現行の設置法の規定を基本にする。防衛庁は内閣府から独立し、各省並びの「省」と位置づけられるが、政府行革会議で決めた「1府12省庁」体制に変わりはない。自衛隊法3条で定めている自衛隊の本来任務には、国際平和協力活動と周辺事態への対応を新たに加える。その前提として、日本防衛に「支障を生じない限度」と、「武力による威嚇、武力の行使に当たらない範囲」とを盛り込んだ。軍事大国とならないよう@シビリアンコントロールA専守防衛B節度ある防衛力の整備C海外派兵の禁止D非核3原則の堅持――の防衛政策の基本は厳守した。文民統制をより明確化するため、安全保障会議設置法を改正し、安保会議に対する首相の諮問事項に、自衛隊の国際平和協力活動と周辺事態への対応を明示。自衛隊の最高指揮監督権や防衛・治安出動を命じる権限は首相に残した。談合事件が起きた防衛施設庁を2007年度に廃止し、防衛省に統合する。自民党内に、省名を「国防省」と主張する声もあったが、公明党が当初「防衛国際平和省」「防衛国際貢献省」などとするよう求めていたこともあり、無難な「防衛省」に落ち着いた。


公明は3条件挙げ方針転換
 「長年の懸案だったが、公明党も賛成してくれていい形で国会提出が出来た」――。首相は法案の閣議決定を喜んだが、省昇格は池田勇人内閣以来の懸案。97年末の政府行革会議最終報告では見送られ、01年6月には自民・保守両党、無所属議員が共同で提出した防衛省設置法案が継続審議に、03年10月には自公保3与党提案の省昇格法案が衆院解散で廃案、05年末に自公両党が省昇格の具体化を協議で合意、それがまとまり06年6月9日国会提出――の経過をたどっている。政府・与党が次期国会で昇格法案成立を目指すのは、早期に省昇格実現を期待する自民党と、来年の統一地方選や参院選への影響を懸念し、選挙前に法案を成立させておきたいとする公明党の思惑が一致したからだ。支持基盤の創価学会に平和愛好者の多い公明党内では慎重論が強かったが、「国家の基本政策が違うのでは、連立の基盤が揺らぐ」(冬柴鐵三幹事長)との考え方から、公明党は昨年11月、消極姿勢を転換して、今国会での成立を期すとの方針を打ち出した。その条件に@自衛隊活動は憲法9条を逸脱しないA集団的自衛権の行使は認めないB防衛予算が膨張しないよう歯止めを掛ける――の3つを挙げ、支持者の不安を払拭することに努めている。

平和ボケなくす国会討論を
 しかし野党は、日米防衛一体化の在日米軍再編基本方針とセットの形で、防衛庁の機能強化を目指す省昇格法案が提出されたことに強く反発、臨時国会では徹底討議を求め、法制化に反対しようとしている。NHKはこうしたタイミングをとらえ、「日本のこれから」の番組に名護、厚木、岩国市の基地住民を多く参加させて、国民の理解を求め、世論を喚起しようとしたようだ。しかし、地元の不満を吐き出させ、基地の“ガス抜き”?を図ろうとしたNHKの思惑は裏目に出たとしか思えない。何故なら少数の筋金入りの市民団体代表が「憲法9条さえ守っていれば、他国から攻撃されないし、負担はかからない」とわめき、それを6大学在籍の教授(国際政治学者)やジャーナリストが援護する場面が多く見られたからだ。額賀長官の「戦後の繁栄は安保体制の堅持にあり、9・11同時テロ以降の安保環境の不安定をなくすためにも米軍再編は必要」との発言もヤジで妨害されるなど、公共放送を逸脱する印象すら与えた。かつてテポドンの発射実験を行った北朝鮮は、東シナ海で不審船事件を起こし、核装備を急ぎ、依然として弾道ミサイルの発射実験を計画しているようだ。今国会での安保論議は6時間程度で終わったが、私は北アジアの新たな脅威に対処し、国民の1部にある“9条神話”の平和ボケを一掃するためにも、野党の希望通り、真剣な国会論戦を展開しなければならないと思っている。