第124回(5月16日)在日米軍再編を決定 沖縄5施設全面返還
日米両政府は5月1日、外務・防衛閣僚による日米安保協議委(2プラス2)をワシントンで開き、在日米軍再編の最終報告を決定した。沖縄県宜野湾市の米海兵隊普天間飛行場を同県名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部へ移設し、在沖縄海兵隊8000人のグアム移転を2014年までに実現する。08年9月までに米軍横田基地(東京都福生市など)の一部空域の管制権を日本に返還するほか、沖縄の負担軽減策として那覇軍港、牧港補給基地など5施設を全面返還する。人口密集の県中南部に限れば米軍基地の20%強に相当する約1500ヘクタールが返還される計算。再編協議は3年半に及び、その内1年間は私も防衛庁長官政務官として参画したが、この決着により日米の防衛協力を強化する態勢が整うことは、基地出身の政治家として喜ばしい限り。今後は再編ロードマップ(行程表)に沿って法整備や財源確保に全力を挙げ、再編計画を達成したいと意欲を燃やしている。


沖縄重視の表れと県も評価
「米軍再編(の最終報告)の中に、沖縄の負担軽減の具体的な道筋が盛り込まれたのは、大きな成果だった」(麻生太郎外相)、「沖縄県の米海兵隊の半分近くの移転が実現できる」(額賀福志郎防衛長官)――。2プラス2終了後の記者会見で両相は胸を張った。最終報告「再編実施のための日米ロードマップ(行程表)」は計7頁だが、2頁以上を沖縄の基地の整理・縮小に割いており、普天間飛行場、那覇軍港、牧港補給地区(浦添市)、キャンプ桑江(北谷町)、陸軍貯油施設「第1桑江タンクファーム」(同)の5施設を全面返還するほか、キャンプ瑞慶覧(宜野湾市)を1部返還するが返還時期は明記せず、07年3月までに計画を煮詰めるとしている。稲嶺恵一沖縄県知事は、普天間飛行場代替施設の名護市移設については「内容が不十分」として反対したが、6施設の全面・1部返還という大幅な負担軽減策については、「本土よりも沖縄を重視した表れ」と見て、率直に評価している。


海兵隊移転の59%負担
 米軍再編協議の焦点とされた海兵隊のグアム移転は、総額102億7000万ドルのうち、日本が財政支出28億ドルを含む60億9000万ドル(59%)を負担することになった。麻生外相は当初、「これは言い値だ」と米の吹っかけ要求を批判し、日米協議でも「我が国が厳しい財政状況にあることを踏まえて検討する」と主張したが、ラムズフェルド米国防長官は「米国が国民総生産(GNP)の3.8%(約4千億ドル)を国防費に払っていることを考慮願いたい。思いやり予算(在日米軍駐留費の日本側負担)を今後もよろしく」と反論、日本を「核の傘」で守ってきた日米同盟の片務制を盾に日本側の財政負担を迫り、結局、同長官と額賀防衛長官が自ら移転費用の数字を詰め合う異例の折衝で決着した。横田基地の管制業務は、08年に返還する1部空域について今年10月までに特定し、09年度には空域全体の返還条件の検討を完了する。石原慎太郎都知事が希望する横田基地の軍民共同使用については、検討を始めて1年以内に結論を得ることになった。


自衛隊と米軍の連携強化
米海軍厚木基地(神奈川県大和市など)の空母艦載機の岩国基地(山口県)への移駐は、住民の反対が強いものの14年までに完了し、普天間飛行場の空中給油機12機も移駐する。一方、岩国基地の大型輸送ヘリ8機がグアムに移転する。自衛隊と米軍の連携強化策としては、10年度に航空自衛隊の航空総隊司令部を横田基地に移転し、ミサイル防衛(MD)態勢など有事の防空を担う日米の共同統合運用調整所を設置する――などが決まった。在日米軍再編は当初、陸軍第1軍団司令部(米本土)のキャンプ座間(神奈川県)移転と、横田基地の第5空軍司令部のグアム移転という米司令部の再編・配置が中核で、海兵隊の削減などは想定されていなかった。それが大きく動いたのは、04年9月に山崎拓前副総裁や守屋武昌防衛次官が小泉首相に、「米軍再編の機会を捉え、沖縄の負担を軽減させることが、日本の戦後を終わらせることになる」と進言したのが始まり。首相はその直後、ブッシュ米大統領との会談で、「米軍の抑止力の維持とともに、地元負担の軽減に取り組む」という2大目標を示して確認を得、日米協議が転がり出した。


国際テロと中国軍拡に対応
再編協議で画期的成果を挙げたとするラムズフェルド長官は「緊密で重要な日米同盟は今後も継続する。今回の合意は日米双方の国益にかなう」と大満足だ。確かに、50年に1度という世界規模の米軍再編は、国際テロの多発と中国の急速な軍事力強化など、新たな安全保障環境に効果的に対応するためのもの。キャンプ座間には、米陸軍と陸上自衛隊の司令部が併設され、横田基地でも米空軍と航空自衛隊の司令部が同居、米軍と自衛隊の連携、一体的運用による抑止力は高まる。共同作戦、情報の共有、国際平和協力活動などで同盟の実効性は益々強化され、日米安保体制は「極東の範囲」から中東までの「不安定の弧」に広がり、日本は米世界戦略立て直しの最前線に置かれることになった。日米両政府は96年の「日米安保共同宣言」で、アジア太平洋地域での日米関係の重要性を明記し、日米同盟を再定義したが、額賀防衛長官は10年を経た今回、防衛協力の「新たな枠組み」を協議するよう米側に提案した。

 政府方針転換を閣議決定
政府と名護市は4月7日、普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部移設について、滑走路2本をV字形に配置する修正案で合意している。沖縄県も@県全体の発展を見据え、個別の基地移設ではなく沖縄全体の再編案として評価できるA海兵隊8000人の削減は最上級の評価ができる――と歓迎している。だが、11月の知事選に3選出馬をしない意向の稲嶺知事は、「軍民共用で使用期間を15年に限る」とのスタンスは依然として変えずに修正案に反発、「使用期限を区切ってシュワブ陸上部に小規模なヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)を建設する」との対案を示し、代替施設の固定化を避ける方策を要求した。結局、額賀防衛長官と稲嶺知事が11日に会談し、@普天間の危険性除去A周辺住民の生活安全B自然環境の保全――などに留意する5項目の確認書を交わし、政府案を基本に対応することで合意した。小泉首相も同日夕、稲嶺知事と会い、「政府を挙げて、誠意をもって対応する」ことを確約した。政府は16日にも「軍民共用空港を念頭に辺野古沖に代替施設を建設する」と明記した99年の閣議決定の移設先を「名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部」に変更し、沖縄の地域振興策を盛り込んだ在日米軍再編に関する閣議決定を行う。

60年安保並みの論戦か
それにしても、沖縄問題に勢力を傾注した橋本、小渕両政権がなし遂げなかった「普天間返還」は、皮肉にも、さほど熱心ではないと評された小泉首相の手で実現することになった。しかし、米軍再編の予算措置は困難が伴う。とくに日本にとって海兵隊のグアム移転費負担は、国外の米軍基地への初めての支出となる。ローレス米国防副次官が、「日本側の見方」の注釈を付けて、「国内での基地移設を含めた在日米軍再編の全体経費は260億ドル(2兆8600億円)で、日本側負担は200億ドル(2兆2200億円)に上る 」と述べたことから、「途方もない金額」(安倍官房長官)で応じられないとの声が日本国内で高まった。ローレス副次官はその後、「細かく積み上げた数字ではない」と訂正し、額賀防衛長官も7日のNHK番組で「2兆円も3兆円もかかることではない」と否定したが、総額約3兆円ともなれば、来年度予算編成の大きな課題だ。米側は早速、沖縄・嘉手納基地に弾道ミサイル迎撃用のパトリオット・パック3の配備を要求してきた。こうしたミサイル防衛(MD)態勢の強化や朝鮮半島・台湾海峡有事の際の日米相互協力計画など、「不安定の弧」へ広がった米軍と自衛隊の連携、一体的運用など新たな日米安保体制は、60年安保以来の安保枠組み変更であり、国会で激しい論戦が予想される。党の国防部会副部会長として、私は今後の法整備、予算措置に向けて心を引き締めているところだ。