第119回(3月1日)動き出す分権の道州制 早くも州都争奪戦
地方制度調査会(首相の諮問機関=諸井虔会長)は2月28日、47都道府県を廃止し、広域自治体に分割・再編する道州制案を答申した。答申では「国の役割を本来果たすべきものに重点化し、内政は広く地方自治体が担うことを基本とする新しい政府像を構築する」と地方分権の精神をうたっている。道州の区割りは9,11,13に分割する3案を例示、国から道州に移譲する事務・権限として1級河川の管理など21項目の具体的なリストを盛り込んでいる。リスト案をまとめた専門小委員会の松本英昭委員長は「道州制を押しつけるものではなく、あくまで国民的な議論のたたき台だ」と述べているが、関係省庁からのヒアリング抜きでまとめたため、早くも各省庁からの反発が出ている。また、州都をどこにするかの争奪戦が各県で始まっている。自民党内では道州制のモデルとして北海道道州制特区法案が検討されているが、道州制は明治4年(1871年)の廃藩置県以来の大改革。地方自治は私の専門分野でもあり、じっくり法制化と取り組む考えである。


都道府県域は郡の位置づけ
答申案には、市町村合併の急激な進展や都道府県の枠組みを超えた行政需要の増大を踏まえ、「道州制の導入が適当」との考えが明記された。移行時期については「必要な経過期間を設けたうえで、全国同時に行うことを原則とする」との表現にとどめ、導入時期を明示していないが、関係する都道府県が協議して先行実施することは容認している。先行導入は北海道が当てはまりそうだ。国の出先機関を道州に取り込み、行政組織のスリム化につなげるため、導入後の行政機関は残さないものの、120年の歴史・伝統を踏まえて、道州制移行後も従来の都道府県の区域は、「一定の位置づけ」をして存続させる。従って、都道府県代表が競う全国高校野球選手権大会などの開催に支障が来さないよう、自治体とは異なるが、例えば現在の「郡」のような形で「位置づけ」を与えて名称だけは残す方針だ。道州の首長は直接選挙で選ぶが、強大な権限を持つことになるため多選は禁止する。


1級河川などの権限移譲
導入の判断は、国民的議論の動向を見定めて行うよう求め、気運が高まった段階で、政府が具体的な移行のプロセスを盛り込んだ推進法を制定するよう提言している。導入の際は、国と地方の事務配分を抜本的に見直し、国が本来果たすべき役割を除いて道州へ移譲する。国から道州へ移すべき権限としては@【社会資本整備】国道・1級河川・第2種空港・砂防設備の管理、保安林の指定A【環境】有害化学物質・大気汚染・水質汚濁の防止対策B【産業・経済】中小企業対策、地域産業・観光振興の政策、農地転用・指定漁業の許可C【交通・通信】自動車運送・内航海運業などの許可、旅行業・ホテル・旅館の登録、自動車登録検査D【労働】職業紹介、職業訓練、労働相談E【安全・防災】危険物規制――など21項目を例示、国の出先機関を道州に取り込み、行政組織のスリム化を目指している。しかし、国土交通、農林水産、厚生労働、経済産業などの各省はそれぞれ出先機関を抱えており、大幅な権限移譲には強く反発している。


北海道が先行的に道州制
道州制の皮切りとしては北海道道州制特区の構想がある。これは03年夏、小泉首相が自民党に検討を指示したもので、今国会の施政方針演説でも「北海道が道州制に向けた先行的取り組みとなるよう支援する」と首相は述べている。公共事業の配分が手厚い北海道には40近い国の出先機関があり、これまでにも道との「二重行政」との批判があった。また、名前からして既に「道」であり、地理的特性からも府県の合併なしに単独で「道州」になりうるため、道州制のモデルとして党の公約に掲げられてきた。昨年10月には党の道州制調査会(伊吹文明会長)が中間報告で、今国会に推進法案を提出することを打ち出していた。自民党道州制推進議連(会長・杉浦正健法相)が2月1日に北海道へ権限を移譲する「試案」をまとめ、高橋はるみ北海道知事が1部修正・削除を求めたうえで同調したことから、霞が関では波紋が広がっている。


どうなる出先機関
朝日新聞によると、議連の試案では、権限移譲・廃止の対象とされるものが19項目も挙げられているが、その中には道庁が04年に内閣府に示した権限移譲案にはなかった国道、河川管理も含まれていて、これに砂防事業が加わると、国土交通省の出先機関である「北海道開発局」の職員・予算の半分が不要になるという。これでは開発局の存在意義が薄れてしまうため、本多満・北海道開発局長は「国が直轄で行う河川や国道の整備管理は、全国的な視点からの集中投資や高度な技術を要する。国の機関でないと責任を果たすことは困難だ」と反発した、と朝日は伝えている。国交省に限らず、それぞれの出先機関を抱える厚労、農水、経産など他省庁も、出先機関の職員の「受け皿探し」が難しいなどから、議連の試案に難色を示している。また、たとえば中国地方では岡山と広島のどちらを州都とするか、など縄張り争いが早くも始まっており、道州制の調整は容易ではなさそうだ。道州制は、国の仕事を道州に移し、現在の都道府県が担う仕事の多くを市町村に移すのが基本で、国の出先機関をベースに再編する。例示した3つの区割り案は次の通り。
@ 9道州=北海道、東北、北関東信越、南関東、中部、関西、中国・四国、九州、沖縄
A 11道州=@の北関東信越、中部の一部を北陸、東海に分け、中国と四国を分離
B 13道州=Aに東北、九州を南北に分離