北村の政治活動



  第116回(1月16日)ポスト小泉に向け増税論争 税制改正(下)

 郵政基金に4千億円優遇

 前回はサラリーマンからの不評が高かった定率減税の廃止や、たばこ増税、「第3のビール」増税などを取り上げたが、今回は住民の不安が強まっているマンションなどの耐震強度偽装問題の関連税制から入りたい。耐震改修費については、10%(最大20万円)を所得税から控除し、固定資産税も最大3年間半減。損害保険料控除に代わり、地震保険料控除を創設するなど地震対策を後押しする。また、「長者番付」で知られる高額納税者公示制度は、個人情報保護を理由に廃止することになった。一方、07年10月発足の日本郵政株式会社への税制優遇措置も導入された。過疎地のサービス維持のために設置される「社会・地域貢献基金」に積み立てる資金の損金算入を認め、法人税の課税対象額が圧縮できるようにした。最大10年で累計4千億円の法人税が軽減できる見通しだが、「競争条件が公平でなくなる」と民間金融が反発しそうだ。ただし、年間5百―1千億円の税負担と見られた、郵政グループ会社間の取引にかかる消費税の減免は見送られた。

 田中派支配潰す一般財源化

 最も注目されるのは道路特定財源の一般財源化の扱い。道路特定財源は田中角栄元首相が青年将校時代の1953年、議員立法の提案者になり臨時措置法として成立させた。田中氏が幹事長当時は「車が重いほど、道路を傷める」として自動車重量税も導入。このため、田中派は旧橋本派(現津島派)に至るまで道路予算配分に影響力を行使してきた。05年度予算で国と地方を合わせて約5兆8千億円あり、ガソリン税は2倍、自動車重量税は2・5倍に税率を一時的に引き上げる「暫定税率」もかけている。道路建設予算の抑制が続き、2002年度に初めて2247億円の剰余金が出、旧本州四国連絡橋公団の債務返済やノンストップ自動車料金システム(ETC)の整備などに回されているが、06年度には同公団の債務返済が終わり、07年度の剰余金は約5000億円に膨らむ。そこで、政界の「田中派支配」を目の敵にしてきた小泉首相は、改革の総仕上げに、暫定税率は維持したまま、当面はこの剰余金を対象に一般財源化を持ち出したわけだ。しかし、受益者負担の原則から自動車のユーザーを対象に高い暫定税率をかけている以上、全く道路と関係のない事業に充てることは難しく、自動車業界は一般財源化なら暫定税率の引き下げを要求した。もともと自民党には道路建設推進派が多く、三位一体改革で首相と提携した地方団体も道路特定財源の確保を求め陳情攻勢をかけた。

 建設国債返還も不発で先送り

 津島派の青木幹雄参院議員会長は、党の自動車議員連盟会長を務めていた綿貫民輔前衆院議長が離党した後に、首相の後見人である森喜朗前首相を会長に推挙、一般財源化にブレーキをかけようとした。首相は議連には構わず、初期の小泉チルドレンといわれた石原伸晃前国土交通相を道路調査会長に抜擢した。この人事も党内では猛反発を買い、自動車業界などが一般財源化に強く反対していることから、結局「一般財源化を図ることを前提に、来年の議論の中で具体案を得る」と方向性を示しただけで先送りとなった。党内では、地球温暖化・環境対策など道路交通と関連ある事業に配分することが検討された。例えば二酸化炭素(CO2)の排出削減を図るため、@渋滞解消に繋がる道路の立体交差化A環状道路整備B街路樹の増設C高速道路のETC利用転換――などが対象。中川政調会長は「道路建設の国債という形で投資した借金も道路特定財源の使途として広めることも検討すべきではないか」と講演で語った。具体策は建設国債の返済などが中心になりそうだ。

 党内論争呼んだ谷垣発言

 今回の改正でもう1つ見逃せないのは消費税制の行方だ。昨年の税制大綱で「07年度をメドに実現する」と明記した「消費税を含む税体系の根本的改革」は今回、「07年度をメド」を維持したものの「実現させるべく取り組んでいく」と表現を緩め、6月の経済財政諮問会議で結論を出すよう下駄を預けた。政府与党内に消費税率引き上げを巡る激しい論争があるからだ。「税率を記さない法案はない。07年の国会に法案を提出する」――。谷垣財務相は、第三次小泉改造内閣で留任が決まった10月末深夜の記者会見でこう述べた。1カ月前のHPでも取り上げたが、ひそかにポスト小泉への意欲を燃やす谷垣氏は、消費税増税で財政再建の道筋をつけることが次期政権の最重要課題と位置づけ、積極論を展開している。今年に入っても訪米先で米国首脳に健全財政化に向けての消費税改正の意向を伝え、米側の支持を得ている。これには、政調会長当時「党財政改革研究会」を作って消費税率引き上げと社会保障目的税化を唱えた与謝野馨経済財政担当相が同調し、支援している。

 「抵抗勢力」と追い打ち

 前のHPに書いたように、消費税制は大平正芳内閣以来歴代政権が導入に苦労し、橋本龍太郎内閣が税率を引き上げた結果、参院選に敗れ、退陣したいわく付き税制。07年の通常国会に消費税率大幅引き上げの税制改正法案を提出すれば、同年春の統一地方選、同年夏の参院選で与党が大敗し、就任直後の新首相の退陣は必至だ。総裁派閥・森派で国民的人気がある安倍晋三官房長官の擁立を目論む中川秀直政調会長が谷垣氏を「拙速だ」と批判すれば、竹中平蔵総務相も「増税先行論者は形を変えた抵抗勢力だ」と追い打ちをかけた。歳出削減を優先してきた小泉首相の持論は、「在任中は消費税率を引き上げない」だが、昨秋の韓国・釜山外遊では「構造改革で谷垣さんも与謝野さんも私の意図が分からないから、ちょっと調子外れだ」と批判し、中川氏の肩を持った。中川氏はこれまで、歳出削減やデフレ脱却、政府試算の圧縮などを優先的に進めたうえで、消費税率の引き上げを判断すべきだとの考えを示してきた。

 プレ政権争奪戦展開

 党税調総会でも財政再建重視派の谷垣氏と歳出削減・小さな政府派の中川氏が火花を散らした。税調顧問の片山虎之助参院幹事長も「党税調に素人が口を出すのは慎んで欲しい」と中川政調会長を諫めるなどポスト小泉を巡るジャブの応酬が広がった。各マスコミも、積極派と慎重派の対立の背景にはポスト小泉をにらんだ思惑が複雑に絡んでいると一斉に報じた。さらに中川自民、井上義久公明の両与党政調会長は暮れのNHK番組で、07年の通常国会には関連法案の提出が間に合わないことを理由に、「07年度に消費税を引き上げることはない」と公式に断言した。この発言は小泉首相も記者会見で肯定している。中川、竹中、武部勤幹事長の“忠臣NTT”トリオは、首相の国会乗り切りをがっちり支える態勢だ。だが、消費税は将来の年金改革の財源論議にも大きく関わっている。8日のテレビ番組は、さながら政府・与党首脳による消費税増税の討論会の様相を呈した。まず、武部幹事長がNHKの討論番組で、「国民に増税をお願いする環境作りをしっかりやらなければ引き上げは出来ない。引き上げ時期は08年以降と思う」と慎重論を述べ、竹中総務相もテレビ朝日の番組で「欧州の税率は20%ぐらい。日本はデフレを克服していけば、それを半分(一〇%)ぐらいに出来る」と発言。これに対し、谷垣財務相は同番組で、「(法案提出時期は)07年に出せるか出せないか。税率は出来るだけ低く抑える努力をする」と、ややトーンダウンしながらも税率引き上げに意欲を見せた。いずれにしても国会では谷垣・与謝野VS中川・竹中の増税論争を軸に、プレ政権争奪戦が展開されるだろう。