北村の政治活動



  第115回(1月元旦)定率減税全廃で健全財政 税制改正(上)
 
 06年度予算案は、首相の就任時と同様、新規国債発行額を「30兆円枠」内の29兆円台に抑え、一般会計規模も8年ぶりに80兆円を下回る79兆円台に抑えるなど、小泉内閣最後の予算編成に相応しく小さな政府を目指す「緊縮・抑制型」予算案となった。国債、地方債など国と地方の借金は775兆円に膨らむと見られている。少しでも景気が回復基調にあれば健全財政に取り組むのは当然で、首相の決断は高く評価されて良い。しかし、2月には税の確定申告の季節がやってくる。大手金融・銀行6グループの昨年9月中間決算は、軒並みバブル最盛期を上回る過去最高益を記録した。それなのに、庶民は長期のゼロ金利で虎の子の貯金が目減りする一方だ。それに2兆円増税の追い打ちがかかる。マスコミは「増税メニュー」「サラリーマン増税」などと批判するが、国民が最も関心を抱くのは税制改正。今回は三位一体の改革で地方への約3兆円の税源移譲、道路特定財源の一般財源化、消費税率アップへの地ならし、医療制度の改革も並行して進める――など税制改正の節目となる要素が多い。景気が回復する中で、定率減税の廃止はやむを得ないが、消費に水を差し、税収が増えないようでは元の木阿弥だ。私は景気動向や国民の負担割合など納税者の反応を十分見極めて、充実した国会審議しなければならないと考えている。来年度予算案の焦点である税制改正を上下2回で取り上げてみた。

 景気に中立型の税制

 政府税制調査会(会長=石弘光・中央大特任教授)は昨秋、「先進国中最悪の危機的財政状況の下、少子・高齢化、グローバル化など大きな構造変化に直面。一般歳出を05年度に引き続き減額し、新規国債発行額を出来るだけ30兆円に近づけるとの方針で、徹底した歳出削減や予算配分の重点化・合理化を実現し、聖域なき歳出改革が不可欠である」ことを基本的な考えに、定率減税の廃止を中心とする06年度税制改正案を答申した。自・公両党は政府税調答申を受けて昨年末、定率減税の廃止とたばこ増税など約2兆円増税の与党税制改正大綱を決定した。政府は「景気に中立型の税制」と称し、大綱に基づく関連法案を通常国会に提出する。定率減税は、小渕恵三内閣が99年に「景気対策の恒久的減税」として導入。所得税の20%(上限・年25万円)と個人住民税の15%(同4万円)を減額しており、減税額は一世帯当たり年間で最大29万円。減税総額は年3・3兆円で、赤字国債を6年間に約20兆円発行して賄ってきた。だが、景気回復を理由に06年1月から所得税を、同6月から住民税を半減することが1昨年末の改正大綱で決まっている。

 年収7百万で約10万円負担増

 景気回復が底堅いことから政府は、既定方針に沿って残り半分(減税規模約1・6兆円)についても07年1月から所得税分を、同6月から個人住民税分をそれぞれ打ち切り、定率減税は全廃、本来の税体系に戻すことにした。ただし、「経済状況に弾力的に対処する」との弾力条項を残し、景気が悪化すれば減税を継続する可能性もある。読売新聞によると減税廃止の場合、専業主婦と子ども2人を抱える世帯構成で年収700万円は年8万2千円増で、厚生年金保険料など社会保障の負担増を含めると現在より年9万7千円増加、同じ世帯構成で年収500万円でも年4万8千円(社会保障負担含む)増、1000万円なら年19万1千円(同)にも増加するという。自民党税制調査会(柳沢伯夫会長)の試算によると、税金や年金・雇用保険料など家計にかかる負担の合計は06年度に前年度比で2・1兆円余増え、定率減税を07年中に全廃すると、05年度から3年間で家計の負担増合計額は5兆円を超えることが明らかになった。いかに景気が回復基調にあっても、増税や年金保険料の引き上げで庶民の財布は堅くなりそうで、景気の先行きは不透明である。

 児童手当拡充にたばこ増税

 今年度末で期限が切れる投資減税のうち、IT投資を促す大型の法人税減税(約5100億円)は、廃止を主張する財務省と、延長を求める経済界が対立したが、単純な延長に否定的な意見が与党内で大勢を占めた。それでも経済産業省や与党の一部には「情報セキュリティー対策」などに看板を変え、規模は縮小すべきだとし、結局、規模を約5分の一に縮小して延長するものの、事実上約5千億円の増税となった。個々の世帯の負担増とはならないが、国・地方の税財政を見直す「三位一体の改革」に伴う地方への税源移譲のため、国税の所得税、地方税の住民税の税率組み替えも実施する。所得税の最低税率は10%から5%に引き下げられ、最高税率は37%から40%に引き上げられ6段階に変える形で減税。個人住民税は3段階から10%税率に一本化し増税となる。葉タバコ農家反対のたばこ税は「喫煙抑制効果が出れば、医療費抑制にもつながる」と公明党が増税を要求。谷垣財務相も「新規国債発行を30兆円に抑える財源が必要」と主張し、児童手当を現行3年生から6年生に拡充(公明党要求)する財源確保のために、3年ぶりに7月から引き上げられる。増税幅は1本1円(20本入り1箱で20円)で、約1800億円の増税だ。

 酒は分類簡素化と格差縮小

 酒税については、党税調の伊吹文明小委員長が各紙の質問に、「体系が煩雑だ。4分類ぐらいに簡素化したらいい」と答えていた。与党仲間の坂口力公明党税調会長も「安い商品を残して欲しいという国民の声がある。今までの税制改正の積み上げで、ややこしい体系になっているのも事実。アルコール課税を根本から考え直すしかない」と根本的見直しを唱えていた。そこで、酒税は庶民のささやかな楽しみである「第三のビール」を350ミリリットル3・8円、ワインを1リットル9・5円増税する一方で、ビールを350ミリリットル0・7円、清酒を1リットル20・5円減税することになった。酒税全体では僅かな減税だが、酒類区分を簡素化し、同一区分で税制を統一する仕組みを導入し、ビールとビール風飲料との税率差は今後も縮小させる方針だ。酒類はビールなどの発泡酒、ワインや日本酒などの醸造酒、ウイスキー、焼酎などの蒸留酒、リキュール、みりんなどの混成酒の4区分にした。政府税調の「酒の分類簡素化と税率格差縮小」答申を受けて、10種類ある酒税の区分を簡素化し、税率の低さではなく品質面による競争をメーカーに促す考えを示した。第三のビールが誕生した際のように、税率の差に着目してメーカーが「すき間狙い」の新商品を出した場合は、簡素後の4分類で最高の税率を適用する。

 増税が景気に水差す懸念

 増税などによって06年度の税収は46兆円台と05年度当初予算を2兆円以上上回るほか、その他収入も3兆円超見込んでいる。これで「開く一方の鰐の口」と言われた歳入と歳出の巨大ギャップは、年20兆円から11兆円の開きに縮まり、健全化の兆しが見えてきた。冒頭で述べたように、大手金融の昨年9月期中間決算は絶好調で、トップのみずほ銀は5646億円の業務純益を挙げるなど軒並み最高益を出し、景気は踊り場を脱しつつある。だが、増税が消費活動を冷やして折角の景気浮揚に水を差す恐れは多分にあり、今年の経済運営は極めて難しい。次回は一部の減税や道路財源の一般財源化と消費税率アップを巡る党内論争を取り上げる。