北村の政治活動


  北村の政治活動第114回(12月16日)2年ぶり牛肉輸入再開 消費者重視農政


 米国、カナダからの牛肉輸入が2年ぶりに復活する。政府が12日、食品安全委員会の答申を受け、条件付きで輸入再開を決めたからだ。早ければクリスマスにも小売店や外食産業の店頭に輸入肉が並ぶ。牛肉の禁輸は日米間に突き刺さったトゲだったが、米加両政府は輸入再開を歓迎、「条件を守る」意向を表明している。牛海綿状脳症(BSE)は、日本の食品安全行政の欠陥をさらけ出し、生産者の保護や業者の取り締まりが中心だった行政を、消費者の視点で食生活の安全を最重視する行政へと切り換えた。同時に国際政治抜きには日本の農政を語ることが出来ない現実を浮き彫りにした。世界貿易機関(WTO)加盟の外相、経済相らが一堂に会する香港閣僚会議が13〜18日に開かれているが、最大の争点である関税の削減、農産物輸出補助金の撤廃など貿易自由化を巡り、日本は守勢に立たされている。ここでも生産者保護ばかり言ってはいられない厳しい現実がある。私は党の水産部会長代理として、燃油高騰や中国のガス油田開発などで被害を受ける漁業の税制優遇など諸対策と取り組んでいるが、鳥インフルエンザの蔓延も含め、益々国際化する農水行政に目を光らし、生産・消費者双方が満足できる施策を確立したいと考えている。


  検査官の査察など条件付き

 内閣府食品安全委員会は8日、BSEで輸入が止まっていた米・カナダ産牛肉の安全性について、「リスクの科学的同等性を評価するのは困難だが、生後20カ月以下の牛に限り、脳や脊髄など危険部位を除去するなどの条件を守れば、日本の牛肉とのリスク差は非常に小さい」とし、BSE検査無しの輸入を認めることを答申した。安全委は米国やカナダにある牛肉の処理施設への定期的な立ち入り検査を求め、「管理が不十分なときは一旦輸入を停止する必要がある」と、異例な注文をつけている。農水、厚労両省は9日、与党に答申内容を説明、輸入牛肉に添付される動物検疫などの証明書内容、輸入手続きに必要な細かな条件を米国に提示した。両省は動物検疫と食品衛生の検査官10人前後を牛肉処理場数カ所に派遣し、条件が守られているかを査察する。米国産牛肉の輸入解禁は03年12月以来2年ぶり。昨年の米大統領選前に小泉首相がブッシュ支援で輸入再開を約束しながら再開が大幅に遅れていたため、米政府や米議会の不満は強烈でいらだち続けていた。


  復活できるか米牛肉離れ
 
 それが8日というパールハーバー・メモリアルデーに、逆をいく“和解”の答申で輸入解禁である。11月16日に、京都の日米首脳会談で耳打ちされたはずのブッシュ大統領は大喜びしたに違いない。だが、空白の2年間に米国産牛肉離れが復活できるだろうか。航空便で輸送し、クリスマスに輸入再開記念第1号を店頭で祝う計画もあると聞くが、日本側の受け入れ準備や船便での輸送時間などを考えると、正月の後半になる可能性が強い。 禁輸前の02年度の輸入量は米国産が約24万トン、カナダ産が約2トンで、両国合わせた北米産牛肉は輸入量全体の45%を占めていた。04年度の牛肉輸入量は米国産の禁輸で前年度より7万トン減少したが、その分を豪州、ニュージーランド産が右肩上がりで増加。豪州産は03年度に前年度比12%増、04年度はさらに同39%も急増し、国を挙げて売り込みに力を入れている。イトーヨーカ堂の牛肉販売は現在、国内産が6割で残りの4割が豪州産だ。米国産には消費者の不安感が残っているし、年末年始は和牛の需要が高まることから、スーパー業界もいまのところ米国産を積極的に売る姿勢はなさそうだ。


  食肉業歓迎、外食業は慎重

 読売新聞によると、牛丼チェーン大手の吉野家ディー・アンド・シーは2カ月以内に牛丼を再開する方針だが、当面は必要量を確保できないため昼食時に限定販売、価格も休止前の並み盛り280円より高くなるという。食肉業界も「安全性は担保されている」(日本ハム)、「注文があれば対応する」(伊藤ハム)などと概ね歓迎し、卸売りの再開準備を進めているという。しかし、朝日新聞によると、松屋フーズは昨年10月、中国産と豪州産のブレンドで牛丼販売を再開、輸入禁止前よりも100円高い1杯390円としたが、売上高が増えたため350円に値下げし、米国産が解禁されてもすぐに使う計画はないという。「すき家」などを展開するゼンショーも「日本の消費者が求める全頭検査を経ておらず、安全性が確保されたとはいえない」と、米国産は当面使わない方針だと報じている。


  安全性確保が不可欠

 確かに食品安全委が「お墨付き」を与えても、米国側が輸入条件を順守できるかどうかは別問題だ。米国の2頭目の感染牛は最初の検査で見逃されている、など検査精度は低い。 米国では全ての牛に出生記録があるわけでなく、月齢は肉質や骨格で検査員が判定する。危険部位の除去についても、米農務省の調査では昨年1月から今年5月にかけて作業手順の違反が1036件も見つかった、と朝日は報じている。政府は16日までに輸入再開の方針を全国9カ所で説明したが、消費者が米国産牛肉を受け入れるには安全性の確保が不可欠だ。答申原案に対する意見募集では27日間に約8800件が寄せられ、半分以上が輸入再開に慎重だったという。現行法では生肉のような生鮮食品は原産地の表示が義務づけられ、重い罰則を科している。農水省は今年夏、外食産業などに原産地表示の指針を示したが、消費者に米国産牛肉を選択させるには表示のさらなる充実・徹底が望まれる。


  香港会議の最大課題は農業

 一方、06年末の決着に向けて、新しい貿易ルールの採択を目指す多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の公式閣僚会議が13日から香港で始まった。2年に1度の公式閣僚会議は、99年のシアトルでラウンド立ち上げに失敗し、01年のドーハで交渉開始にこぎ着けたものの、03年のカンクンでは交渉が決裂し、苦難の道を歩いている。来春以降の合意に向けた新たな交渉日程づくりが当面の焦点だ。交渉全体の最大の課題は農業で、@関税の削減方法と上限関税の是非A輸出補助金の撤廃時期B国内補助金の見直しC重要品目の扱いD貿易自由化ルールの決定時期E関税率表案の提出期限――など。各国の意見の隔たりが大きく、難航する農業分野のモダリティー(保護削減の基準)確率は既に困難で、ラミーWTO事務局長がまとめた閣僚宣言案でも明確な方向は示されなかった。日本は国内農業を守るためコメなどの上限関税反対、重要品目の十分な確保などに全力を挙げるが、関税の大幅削減を求める米国など食料輸出国とは利害が複雑に絡み合い、激突している。朝日によると、日本は「香港では新ルールの決定時期と新関税率表案を提出する期限しか決まらない」(農水省幹部)と見ていたが、争点の1つである農産物の輸出補助金の撤廃時期は、合意に達する可能性が出てきた、と報じている。


  発展途上国との貿易は促進

 食料輸入国の日本は、安い外国産農産物の洪水的輸入を防ぐため、コメなどの関税の大幅削減に強く反対しているが、発展途上国からの農林水産品の無税枠を拡大する方針だ。香港会議では後発国支援が主要テーマとなり、欧州連合(EU)が後発国からの輸入品は武器以外すべて無税とする案を提示した。小泉首相も9日、首相官邸に発展途上国(30数カ国)の駐日大使を招き、途上国の貿易を促すための支援策「開発イニシアチブ」を発表した。後発途上国の農水産品に対し、原則として関税や輸入枠を撤廃。後発途上国が新たな市場を開拓できるように、生産技術の向上や輸出産品の差別化を支援するために政府の途上国援助(ODA)を今後3年間で100億ドル拠出し、合計1万人の専門家を派遣したり、研修員を受け入れたりする。首相は主要国としての発言力強化を狙ったもので、香港会議で日本代表が表明した。ODA資金の活用先としては港湾設備、農道や灌漑、加工施設など農業生産基盤を整備。税関職員や動植物検疫の専門家などを育成する。


  二正面作戦の農水政策推進

 これにより、途上国との貿易促進で良質・安価な農水産品などが輸入されれば庶民生活も豊かになる。香港閣僚会議では、全関税を一定水準に引き下げる上限関税に反対しつつ、市場開放の程度を一般品目より小さくする「重要品目」の十分な確保を目指す。専業農家などの生産保護に重点を置くことは当然ながら,私は米国産牛肉の輸入再開で示された「食の安全」と豊かな消費生活を重視した二正面作戦の農水行政を推進する時代が到来したと感じ取っている。党の水産部会長代理としては、特に国際化の進展で打撃を受ける水産業界の振興に努力したいと考えている。