北村の政治活動

 第111回(11月1日)シュワブ沿岸案で合意 米軍基地再編促進


 日米両政府は、最大懸案の米海兵隊普天間飛行場の移設問題が決着したため、10月29日にワシントンで外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、米軍基地再編の「中間報告」をまとめ公表した。これで自衛隊と在日米軍の連携は一段と強化されるが、米軍支援のテロ対策特別措置法の1年間再延長も改正法が成立し、日米同盟関係は盤石な体勢が整った。小泉首相は、11月15日に来日するブッシュ米大統領と日米首脳会談を開く。基地問題は「軍事的な抑止力の維持」と「地元の負担軽減」をどう解決するかが大きな課題だったが、大野功統防衛庁長官は粘り強く米側と折衝を重ね、内閣改造の直前に日本側の「シュワブ沿岸案」を実現させた。基地出身の私としても、防衛庁長官政務官の任期切れ直前に、日米の懸案事項がすべて解決され、大変喜んでいる。

 日米軍の相互運用能力強化

 米軍変革・再編問題は、01年の米同時多発テロを機に議論が起きた。米軍再編(トランス・フォーメーション)は米本土をテロの脅威から守るため、戦闘力を向上させ、全世界のどこへでも短時間に展開できるよう日米双方の「役割と任務」を再定義し、自衛隊と在日米軍の相互運用能力の強化や、基地を抱える自治体の負担軽減を目指すもの。このため、「同盟の能力向上」と「基地の融合使用」などを掲げ、編成・配備を見直しており、@キャンプ座間(神奈川)に米ワシントン州の陸軍第1軍団司令部を改編した統合作戦司令部を移し、陸自中央即応集団司令部を設置するA米軍横田基地(東京)に空自航空総隊司令部を移し、弾道ミサイル攻撃に共同対処するB米軍厚木基地(神奈川)の空母艦載機部隊60機を岩国基地(山口)に移転するCキャンプ・コートニー(沖縄)の第3海兵遠征軍司令部をグアムに移転し、沖縄駐留海兵隊の半数に当たる7千人を削減(司令部要員が中心で砲兵など実戦部隊は対象外)するD嘉手納基地(同)に駐留するF15戦闘機の訓練の一部を空自築城基地(福岡)、新田原(宮崎)など本土に移転して騒音軽減を図るE普天間飛行場をキャンプ・シュワブ沿岸部に移設し、空中給油機は海自鹿屋基地(鹿児島)へ移すF那覇(沖縄)の陸自訓練をキャンプ・ハンセン(金武町など)へ統合――などが「中間報告」の骨子。来年3月に「最終報告」をまとめる。

 陸上と海上で1ヶ月対立

 在日米軍再編の焦点だった普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設を巡る日米協議は、日本側が米海兵隊キャンプ・シュワブ内の陸上沿岸案を主張したのに対し、米側が地元財界の支持を得た辺野古沖縮小の浅瀬案に固執し、「陸上対海上」で1ヶ月近く対立したが、10月26日の土壇場になって急転直下、決着した。双方が修正案を繰り出した結果、25日深夜、都内ホテルでの大詰め折衝で大野長官が「あと200メートル、日本側にずらせないか」とシュワブ沿岸案の受け入れを強く迫り、リチャード・ローレス米国防副次官がこれに応じて合意に達した。普天間飛行場の移設は1995年の米兵による少女暴行事件がきっかけ。当時の橋本龍太郎首相とクリントン前大統領の間で96年4月、日米安保共同宣言で冷戦後の日米同盟の役割を「アジア太平洋地域の平和と安定」と再定義し、普天間返還で合意した。政府は99年、移設先を同県名護市辺野古沖に閣議決定、02年に滑走路2000メートルの代替施設を埋め立て工法で建設する基本計画が決まった。

 米は浅瀬埋め立ての海上案

 しかし、住民らの反対運動などで着工のメドが立たず、日米協議から9年間も迷走を続けてきた。昨年8月には海兵隊ヘリが墜落事故を起こし、「また事故が起きれば日米同盟を揺るがしかねない」との双方の懸念から早期移設が望まれ、日米両政府は在日米軍の再編を機に協議を開始していた。米側が強く求めた辺野古沖縮小案は、名護市辺野古沖を埋め立てる現行計画を縮小し、約1キロ沖合の陸地寄りのリーフ(環礁)内浅瀬を埋め立て、海上へリポートを造るもの。辺野古沖を埋め立てる軍民共用の現行計画より陸地に近い部分を埋め立て、滑走路を1300〜1500メートルに縮小する軍専用施設だった。浅瀬案は地元経済界が考案したが、米側は滑走路などを海上に出さなければならないと考え、沖縄配置の海兵隊を数千人規模削減する負担軽減策と抱き合わせで受け入れるよう求め、日本政府の頭越しに沖縄県へ出向いて地元関係者に「縮小案」を説明するなど積極的に動いた。

 日本は沿岸の陸上案提示

 これに対し、日本側は、海上では環境破壊の問題もあり反対運動に遭うとして、米海兵隊キャンプ・シュワブ内の丘陵に移設する「陸上案」を提案した。これには米側が強く抵抗、10月下旬に東南アジア歴訪を予定したラムズフェルド国防長官が訪日日程だけを取りやめるなど、日米関係はぎくしゃくした。地元の名護市にも「住宅地の上がヘリの飛行経路となるため事故が懸念される」として、否定的な空気が漂った。このため、日本側は、辺野古崎近くのシュワブ沿岸部の兵舎地区を横断する形でヘリポートを建設し、北東側の大浦湾部分は一部を埋め立てる一方、南側のリーフ部分は桟橋方式とする複数の「沿岸案」を再提示した。これは「陸上案」と「縮小案」の中間に位置する折衷案で、現行計画を陸上側へ動かして沿岸部から浅瀬にかけてヘリポートを造る案だ。米国の「浅瀬案」では、珊瑚礁やジュゴンの餌の藻場があって、「市民団体などの海上阻止行動で頓挫した現行計画と同じ結果になる」と分析。「沿岸案」の一部埋め立て案は、珊瑚礁や藻場がほとんどない大浦湾側を埋め立てるため、「環境破壊の度合いは少なく沖縄県の埋め立て許可が比較的得やすい」と主張した。

 修正案で歩み寄り決着

 この「沿岸案」に対しても米側は、@民家が近いため事故や騒音の懸念が拭えず、飛行経路など運用上の支障が出るA兵舎の移転が必要になる――と拒否する態度を示し、協議は決裂寸前の状態に至った。だが、米側は、ヘリポートを海上に建設する方針は変えないものの、リーフ内浅瀬の埋め立て場所を辺野古崎に接する部分にまで寄せるという修正案を示し、関連施設の一部を日本側主張の陸地部分に置くことを容認する姿勢で歩み寄り、日米両案の設置場所は距離的にも接近してきた。そこで、大野長官が最終折衝の「200メートル譲歩」の一言でトドメを刺し、日米協議はようやく決着した。最終合意では、辺野古崎を横断する形で全長約1800メートル(滑走路約1500メートル)のヘリポートを建設することが決まった。当初は1500メートル(同1300メートル)規模だったが、より多様な航空機の利用を可能にしたいという米側の要請で修正し、陸上部分は全体の2割程度になった。工期は5年をメドとしており、事業費は数千億円を見込んでいる。県内移設が必要な理由には、米海兵隊の緊急事態への対応能力の維持を挙げている。

 地元調整は難航必至

 しかし、沖縄県の稲嶺恵一知事や名護市の岸本建男市長も今のところ明確な態度表明を避けている。政府は日米合意の内容について、沖縄の関係自治体に説明し理解を求めるが、公有水面の埋め立て許認可権を持つ稲嶺知事は、基地を固定化させないための「軍民共用」と「15年の使用期限」という二つの条件を満たすことが県内移設の受け入れ条件であり、現行計画を見直す場合は、県外施設を求める姿勢を崩していない。名護市では受け入れの是非を争点にした市長選が来年1月に予定されているが、沿岸案の容認派といわれた岸本氏は健康を理由に不出馬を表明している。米軍基地の移転問題は、「抑止力維持と地元負担軽減」の両にらみで作業を進めなければならないし、地元の協力なしには成就できない。首相も一年前には「沖縄の負担軽減と本土への移転は考えてしかるべきだ」と述べていたが、日米間で普天間飛行場の県外移設を協議した跡は見あたらず、地元の不信感は強まっている。一方、地元への説明が足りなかったため、米空母艦載機部隊の岩国基地移転には山口県が、座間への米陸軍司令部移転には神奈川県が反対している。横田基地を軍民共用空港としての返還を求めていた石原慎太郎都知事も不満を表明した。政府は米軍再編の事業について環境影響評価や公有水面埋め立てなどの法的手続きを早める特別措置法の検討に入ったが、今後の地元調整は難航必至で移設の実現までには相当の時間がかかりそうだ。