北村の政治活動

 第110回(10月16日)官のリストラに本腰 国家公務員削減へ


 「小さな政府」を目指すうえで残された大きな課題は、首相が所信表明で決意を表明したように、政府系金融機関の見直し、三位一体の改革、公務員制度改革の三つだ。国債、借入金など国の借金は6月末で795兆円に達し過去最高を更新、国家財政は危機的状況にある。首相は総選挙の圧勝で回復した求心力をバネに官のリストラ改革をびしびし達成する構えだ。政府は10月4日、06年度からの4年間に国家公務員を2万7681人削減する新たな「定員合理化計画」を閣議決定した。04年度末の定員から、自衛官を除く国家公務員の「10%以上削減」を明記した昨年12月の新行革大綱に基づいて総務省がまとめたもので、増員を考慮しない減員だけの計画だ。これでは、先月末の経済財政諮問会議で民間議員が提案した、「国家公務員の定員を5%以上純減する」にはほど遠いため、年末の予算編成では各省の調整が難航すると見られる。

  行政需要に対応し再配置

 合理化計画では「行政需要の変化に対応したメリハリのある定員配置を実現するため、府省を越えた定員の大胆な再配置を進め、政府全体を通じた一層の純減確保に取り組む」と基本方針に明記。自衛官を除く18府省・機関の05年度末の行政職定員33万1427人から05〜09年度で計3万3230人を削減し、新行革大綱の「10%以上」を達成するとしている。05年度は既に退職による自然減や採用抑制により、計画通り5549人を削減できる見通し。06年度の国家公務員の定員については、治安や徴税などに重点的に定員を配分する方針だ。削減目標は、省庁の人事・給与部門での事務処理の電子化やIT(情報技術)活用、出先機関の一部統合、地方支部の事務・事業の抜本的見直しなどで定員を削減、毎年度の新規採用者数を退職者数より抑えて積み上げた。

  削減目標最多は厚労省

 総務省行政管理局は「この合理化計画と各省庁が出す増員見込みをあわせ純減目標が決まってくる」と述べている。削減目標では、厚生労働省が最も多い5698人、農林水産省は3129人でいずれも05年度末の定員から10・3%減。国土交通省は5289人で8・3%、財務省は5180人で7・2%減となっている。一方、各省庁は8月の予算概算要求時に、新たな行政ニーズなどを理由に5952人の定員増を要求している。定員増がこのペースで続くと、4年間で2万3808人になる。従って差し引き純減数は3873人で、05年度の削減数5549人を足しても、5年間の純減数は定員の1〜2%に満たない。国家公務員の総人件費は、郵政職員を除いた行政職員や自衛官ら約68万7千人ベースで算定すると、05年度は5兆4410億円。地方公務員が22兆7240億円で、国と地方を合わせた公務員総人件費は約28兆円で消費税率10%強に相当する。

  小さな政府に不退転の決意

 公務員の総人件費削減は不可欠だが、削減の対象となる職員の給与にばらつきがあるため、新「定員合理化計画」でどの程度の歳出削減効果が出るかの試算は出ていない。しかも、公務員をいくら削減しても増員要求を認めていては行政のスリム化は期待できない。首相は9月26日の所信表明演説で、「政府の規模を大胆に縮減する」と述べ、小さな政府の実現に官邸主導で取り組む姿勢を強調した。具体的には、国家公務員の給与体系を「民間の給与体系に合わせる」とし、「定員の純減目標も設定する」と約束した。翌27日の経済財政諮問会議でも民間議員が純減目標の必要性を説き、@地方支分部局・地方事務所や、補助金・規制担当部局などの重点的な削減A市場化テストの全面導入による官の事務事業の民間開放――などの方針を示した。市場化テストとは、公共サービスを効率的に進めるため、官と民間が競争入札を行うものだ。

  定員純減効果は地方が大

 諮問会議では、純減目標を「5年間で5%以上」としたほか、「人件費総額の国内総生産(GDP)に対する比率を今後の10年間で半減させる」などの数値を提言している。この目標を達成するには、今後10年間で31%も人件費を削らなくてはならない。地方公務員の総数は約308万人で国家公務員の約4倍強だが、定員純減の効果は国よりも地方の方がはるかに大きい。市町村合併の効果で人員削減の余地はまだある。総務省は3月、今年度から09年度までの集中改革期間中に4・6%超純減する数値目標を地方行革指針で打ち出した。国が5%以上の純減を目指すなら、地方もそれに準じるのが当然だからだ。また、経済財政諮問会議で「純減」と区別がつきにくいとの指摘を受け、同省は今回から「定員削減計画」という通称を「合理化計画」に変え、閣議決定の文言にも反映させた。

  10年で2割純減を指示

 ポスト郵政の改革で「小さな政府」に意欲を示す首相は、さらに10月6日、自民党行政改革推進本部の衛藤征士郎本部長らと会い、国家公務員の定数削減は「今後10年間で2割の純減」を目標に具体案を作ることで合意した。この席で衛藤氏らは「15年で3割」とする党側の純減目標案を示したが、首相は「なぜ10年ではいけないのか。もっとわかりやすい目標を考えた方がよい」などと指示、「10年間で2割」に変更させた。同本部は党役員人事・内閣改造前にも具体案をまとめる方針だ。一方、人事院は8月、官民格差を是正するため、公務員の基本給を平均4・8%引き下げ、民間賃金が高い都市部などは地域手当を支給する制度改革を06年4月から5年かけて実施するよう勧告、佐藤壮郎人事院総裁は「官の序列を根底から崩し、能力主義を軸とした民間企業並みの人事制度に改める」ことを念頭に、「国家公務員の硬直的な人事区分を見直す」ことにも言及している。

  リストラに官が激しく抵抗

 財務省は、人事院勧告に基づく給与構造の見直しが完全に実施された場合は、国が1500億円、地方が5300億円、計6800億円の総人件費削減効果が出ると試算している。小さな政府は、公共サービスの生産性を高めるため、民間へのアウトソーシング(外部委託)も含め、公務の効率化を図るのが最大の目的だ。政府は11月下旬に「公務員人件費削減の基本方針」を、12月中旬にはその行動計画を策定する方針だ。しかし、人件費削減や省を超えた定員の再配置・減少を伴う官のリストラには、縦割り行政にこもってきた関係省庁の強い抵抗が予想される。また、スト権問題や身分保障が絡む公務員制度の改革には困難がつきまとう。首相は経済再生のカギとなる「聖域なき歳出削減」を断行する構えだが、これに官僚がどう刃向かうか。小泉政権最後となる予算編成は難航しそうだ。