北村の政治活動

   第109回(10月1日)世界一の長寿社会 難しい医療制度改革

 百歳以上は2万5千人、5人に1人が65歳以上――。9月19日の「敬老の日」に、厚生労働、総務両省は高齢者の実態を明らかにした。高齢者の割合は主要国の中で日本がトップ。生産年齢人口から見ればほぼ3人で1人の年寄りを支えている計算だという。年末に向けて06年度の予算編成に入るが、先進国の中で最悪水準にある財政の再建策として税制改正、公務員削減、医療制度改革や国と地方の税財政を巡る三位一体改革をどう進めていくか、課題は山積している。8月末に締め切った概算要求の一般会計は約88兆円だが、厚労省の要求は国土交通省の約7兆7千億円を抑え、約21兆5千億円とダントツだ。このうち、財政抑制のカギとなる社会保障関係費は、約8千億円の自然増を2200億円圧縮することを、8月の概算要求段階で決定済み。柱となるのが医療制度改革で、75歳以上を対象とする高齢者医療保険制度の創設を巡り、意見の対立が続いている。私はかつて衆院厚労委員会に籍を置いた経験から、高齢者対策には力を注ぎたいと考えている。

 百歳以上は2万5千人

 日本人の昨年の平均寿命は女性が85・59歳で世界1位、男性が78・64歳で第2位だ。老人福祉法が制定されて集計が始まった百歳以上の高齢者は、63年にはわずか153人だったが、20世紀末には1万人に達し、その後5年で2万人に増え、最近は5年連続で増加数が毎年2千人を超えている。きんさん、ぎんさんがもてはやされたのは遠い昔の物語。65歳以上の高齢者は2556万人となり、初めて総人口の20%に達したことが「敬老の日」の総務省推計で分かった。イタリアの19・2%、ドイツの18%、フランスの16・2%、イギリスの16%をしのいで世界一の長寿社会である。この高齢者2割は、20年後の2025年には3割近くになる。一方、少子化で2年後から人口が減り始め、15〜64歳の割合は60%ぐらいに減る。社会保障制度は基本的に、現代世代と企業が払う保険料と、税金で、高齢者への年金や医療・介護サービスを支える仕組みだ。

 20年後の医療費69兆円

 朝日新聞によれば、患者の窓口負担を含めた国民医療費は年3〜4%ずつ伸び、25年度には69兆円に達する見通しだ。これに年金や介護費用などを含めた社会補償費用は、20年後に1・7倍の151兆5千億円に増えると見られている。なかでも老人医療費は、困ったことに高齢化に伴って急激に伸びており、国民医療費に占める割合は、20年後に半分近くに達しそうだ。年齢が上がれば治療に時間がかかるし、入院の機会も増えてくる。1人当たりの年間医療費は02年度で見ても、70歳以上が70歳未満の5倍近いという。健保の場合では、企業と従業員から集めた保険料の約4割が老人医療費に食われて組合の財政を圧迫するとし、不満が高まっている。高齢者が増え、支え手の現役世代が減ると、今までと同じ水準のサービス提供は出来なくなる。まして今後、団塊の世代が高齢者になれば、社会保障費用は急速に膨らんでいく。仮に増加分を野党がいうように消費税で手当するなら、14〜15%の2桁に引き上げざるを得ないだろう。財務省は、医療給付費の伸び率を経済成長率以下に抑える「キャップ制」導入の検討に入っている。

 高齢者の医療制度創設

 「患者も負担が増え、病気になっていない人も保険料を負担しなくてはいけない。お医者も収入が減るかも知れない。三方一両損。全てが反対する案を作らざるを得ない」――。首相は政権発足半年後の01年11月、「痛みに耐えて」のフレーズで国民に負担増を求めた。そして「診療報酬、初のマイナス改定」(02年4月)、「70歳以上医療費窓口負担の定額廃止、原則1割に」(同年10月)、「サラリーマン窓口負担2割から3割に」(03年4月)と相次ぎ“三方一両損”施策を決定した。その際、負担増と引き替えに、「医療制度の抜本改革」を約束した。それが新たな高齢者医療制度の創設や、開業医に手厚くて、必要な分野に回らないといわれる医療費配分(診療報酬体系)の見直しをうたった「基本方針」の閣議決定だ。

 医療の地域格差解消を

 高齢者医療制度は老人医療費の半分を税金で賄い、会社員の扶養家族になって保険料を払っていない高齢者からも負担を求めることで、現役世代の負担を軽くするというもの。具体策としては@一定以上の所得がある70歳以上の窓口負担を引き上げるA長期間入院している高齢者に食住費を負担してもらう――などの案が検討されている。しかし、高齢者がどの程度負担するかなど肝心な点が決まらず、協議は進んでいない。医療には「高福祉・高負担」、「低福祉・低負担」のいずれを目指すかの問題と同時に「医療の地域格差解消」の問題がある。「国民は全国どこでも同じ質の医療を同負担で受けられる」というのが医療制度の建前だが、医師は患者が多い都市部に偏在し、地方の医師不足は深刻だ。大学病院など勤務条件が厳しい勤務医から開業医に移ることも病院の医師が不足する原因である。医療費と医療の質を同時に解決する抜本策を樹立しなければならないと考えている。