北村の政治活動

   第107回(8月1日)安保理拡大でG4苦戦 出来るかAU統一案


 政府は、国連創設60年の節目に安保の常任理事国入りを果たそうと外交努力を続けてきたが、アフリカ諸国の全面的支持が得られないため、7月中の安保理事会拡大決議案の採択を断念、長期作戦に切り換えることになった。原因は7月11日から始まった国連総会の審議で、日本などの「G4案」、これに反対する韓国などの「コンセンサス連合案」、アフリカ連合の「AU案」が三つどもえになって混迷を深めているからだ。日本、ドイツなど「G4」の外相とアフリカ諸国の18カ国の外相が同月25日にロンドンで会合し、決議案の統一化を話し合い、一時は良い感触を得たものの、最終合意には至らなかった。AUは8月4日に首脳会議を開いて最終態度を決定するが、8月は各国代表が夏休みに入るため、賛成票を確保することが難しく、採決は大幅に先送りせざるを得なくなった。米、中両国など現在の5常任理事国は既得権存続を目指し現状維持を望んでおり、「G4」、「AU」の「統一案」が出来ても、各国に働きかけて否決する構え。国連外交を推進し、国連予算の20%を負担する日本にとって常任理事国入りは多年の悲願だ。安保問題を担当する防衛庁長官政務官としては、郵政民営化よりも重要課題。国際平和と安全に貢献するためにも、自民党内外の世論を盛り上げ是非ともこの夢を実現したいと念願している。

 周辺諸国が反対提案

 「G4」は日本の呼びかけで04年9月、日本、ドイツ、ブラジル、インドの首脳がニューヨークで結成。安保理拡大を含む国連改革の「9月決着」を目指し、3月のアナン国連事務総長報告に沿って5月半ばに草案をまとめた。内容は@常任理事国を6カ国(内アフリカ枠2)増やし11カ国にするA非常任理事国を4カ国(内アフリカ1)増やし14カ国にするB常任理事国は拒否権を15年間凍結――の「安保理拡大枠組み決議案」で、7月6日にベルギーなど23カ国と共同で提出した。当初は春にも提出し、6月中に同決議案を国連総会で採択、7月中旬に新常任理事国を選出し、8月に必要な国連憲章の改正決議を総会で採択する日程を目指していた。これに反対する「G4」国周辺の韓国、イタリア、アルゼンチン、メキシコ、パキスタンの4カ国は「コンセンサス連合」を結成。常任理事国は5カ国の現状維持、非常任理事国は10カ国(内アフリカ3)増やし20カ国に、拒否権は現常任理事国も行使抑制――との対案を出してきた。

  非常任増やすAU独自案

 ところが総会直前になってアフリカ連合「AU」が、@常任理事国の拡大数は「G4」と同じ6カ国でよいAだが、非常任理事国は「G4」より1国多い5カ国(内アフリカ2)B拒否権は「G4」の凍結に対し、新常任理事国にも付与――の独自案を出してきた。拒否権については「時代錯誤で廃止すべきだが、現常任理事国が持っているのに新常任理事国が持たないわけにはいかない」(アルジェリア)との主張によるものだ。また、米国は@常任理事国は2カ国程度(日本を含む)増やし7カ国程度A非常任理事国は2〜3カ国増やし12〜13カ国(任期更新可能)B拒否権は新常任理事国には与えない――との考えを示している。米国の基本路線は、現状維持にあり、安保理よりも「事務局の改革や人権理事会の設置など重要な問題がある」(ブッシュ大統領)との認識で、考え方は示すものの、安保理拡大の独自案を提出する気はなさそうだ。

  G4、AU共倒れの危険性
 
 安保理改革の決議案採択には加盟国191カ国の3分の2に当たる128カ国の賛成が必要。このうち53カ国が加盟するアフリカ連合「AU」の動きが決定打となる。日本、ドイツなどは当初、7月4日からのAU首脳会議で「G4」案の支持を取り付け、採択に持ち込むつもりだった。そのため、6カ国増やす新常任理事国の内2カ国をアフリカに割り当てるなど、アフリカ票の取り込みを念頭に置いていた。小泉首相は英グレンイーグルズ・サミットで、アフリカなどへODA(政府の途上国援助)の5年間で約1兆円増額を約束、外務省もこれまで精力的に対アフリカを意識した多数派工作を展開してきた。しかし、「AU」独自案が提出されたことで、その見込みは外れた。「それぞれの決議案が別々に採択されるのは、最悪の結果になる」と町村信孝外相は危惧し、ブラジルのアモリソン外相も「アフリカと一緒にならなければG4の決議はない。アフリカも同じはずだ」と記者会見で共倒れの危険性を警告し、同17日の「AU」との合同外相会合では作業部会の設置を決め、双方の決議案の一本化を目指して協議を続けることになった。

  外相は「合意できた」と感触

 しかし、「G4」案は、「AU」独自案が求める拒否権について、妥協を重ねた結果まとめた凍結の決議案である。一方、コンセンサス連合の1員であるアルジェリアは「AU案は首脳会議で決まった。少なくとも(53カ国の)閣僚会議の承認なしに、変えること出来ないはずだ」と主張、「AU」各国が一致するのは「結束を守ることだけ」と割り切っている。このため、町村外相らはロンドンの外相会議で「G4案の拡大枠を原案より1増の26カ国(常任11,非常任15)とし、新たな非常任理事国の1はアフリカ、アジア、中近東の途上国に順に割る振る。拒否権はG4案通り15年間凍結」との妥協案を提案した。この案にはAU側から特に異論が出ず、町村外相の感触としては、「AUの大部分の国が理解を示し、合意していると思った」わけだ。ところが、アルジェリアは「何の合意もなかった」と否定、エジプトやケニアも「これからAU内で合意形成する」として、4日のAU首脳会議で検討することになった。

  憲章改正を米中拒否だが

 決議案の採決は7月末が事実上の期限とされていたが、1本化の話し合いが難航すれば今次総会での採決は望み薄となる。仮に一本化が成立し統一案が採択されても、安保理拡大に必要な国連憲章改正が発効するには、現5常任理事国の批准が必須条件。だが、米中両国は自国の議会が憲章改正の批准を了承しないと見ている。それでも、1本化が叶えば、中国の反対は薄まる可能性がある。なぜなら、対日感情の悪化と違って、資源確保を狙って南米に進出を図る中国は、ブラジルとは「戦略的同盟」を唱えてきており、「G4」には多少の弱みがあるからだ。それに加え、中国には「途上国の代表」との意識が強く「G4」案には反対できても、アフリカとの統一案には反対できないと見られている。そこで、時間をかければ憲章改正の発効は可能との楽観的な見方もある。

  統一案にも米国は反対か

 唯一、安保理拡大が実現した63年の総会では、非常任理事国を6カ国から10カ国へ拡大する決議案に、フランス、ソ連(現ロシア)が反対。米英は棄権したが、決議案が採択されると、65年までには全常任理事国が憲章改正を批准した。今回は重みの違う常任理事国を含めた拡大であり、前回と同様の判断は出来ないにしても、総会で決議が通れば「国際社会の総意」が結集されるわけで、その正当性から言っても、第2次世界大戦の戦勝国だけが常任理事国に居据わる理由はないわけで、5常任理事国もやがては賛成せざるを得なくなると「G4」は期待している。ただし、統一案が出ても米国は反対することは確実で、否決に向けての多数派工作を展開しそうだ。その米国を信頼関係にある同盟国日本がどう説得できるか、外交努力が求められている。