北村の政治活動

   第106回(7月16日)捕鯨の日本提案否決 反発恐れず調査捕鯨拡大


 韓国南東部の蔚山(うるさん)で6月20日から24日まで開かれた第57回国際捕鯨委員会(IWC)の年次総会は、商業捕鯨の再開、調査捕鯨の規模拡大などを求めた日本提案が否決され、相変わらず反捕鯨国との間の溝が深いことを浮き彫りにした。総会直後に米国でBSE(牛海面状脳症)感染の2例目が確認され、茨城県の採卵養鶏場でも2万5千羽が鳥インフルエンザに感染するなど、陸上では家畜の「食の安全」が脅かされている。そこへいくと鯨はヘルシーで安全だし、繁殖過剰気味の鯨を適正規模に種族保存するためにも、商業捕鯨再開に繋がる調査捕鯨の拡大は必要だ。調査捕鯨はIWC加盟国の権利であり、科学的な裏付けがあれば日本の独自判断で拡大できる。私は防衛庁の公務があるため総会には参加できなかったが、食の安全、魚類資源保護の立場から、反捕鯨国の反発がいかに強かろうとも、調査捕鯨の拡大に努め、かつての捕鯨大国へ、徐々に復活することを目指したいと考えている。

  独自判断で捕鯨拡大可能

 総会に先立つ5月15日、財団法人日本鯨類研究所主催の第4回日本伝統捕鯨地域サミットが下関市で開かれ、捕鯨再開へ向けて『下関宣言』が採択された。これをもとに総会での日本提案は、@調査捕鯨の南極海でのミンククジラの捕獲枠を05年度末から倍増させ、新たにナガスクジラなど大型鯨を追加A商業捕鯨のわが国沿岸小型捕鯨地域でのミンククジラ捕獲枠を150頭に拡大B南氷洋サンクチュアリー(保護区)の撤廃C「改訂管理制度」(RMS)の早期採用Dすべての議決に無記名投票を導入――などを要求した。これに対し、豪州が22日、日本の計画撤回を求める決議を提出、賛成30、反対27,棄権1で可決・採択された。「改訂管理制度」は厳密な捕獲頭数算定や監視体制を盛り込み、商業捕鯨再開の前提となるものだが、これも前日の21日に賛成23、反対29,棄権5で否決された。北海道の釧路など伝統捕鯨地域でのミンククジラ捕獲枠拡大提案も賛成26,反対29、棄権3で否決された。無記名投票も賛成27、反対30で否決されている。

  商業捕鯨の倍に調査捕鯨拡大

 しかし、悲観することはない。商業再開には総会で4分の3以上の国の賛成が必要だが、調査捕鯨の拡大は総会の議決に拘わらず、科学的な裏付けさえあればその国独自の判断で実施できる。日本は豪州の決議案が採択された際にも、「科学的根拠の無い政治的決議は受け入れられず、調査を予定通り実施する」と表明した。現在は反捕鯨国の勢力が上回っているが、今総会は新規加盟が9カ国あって66カ国に増え、実質的にはわが国同様の持続的利用支持国と反捕鯨国の差は縮まっている。分担金支払い問題などで不参加の国があったため投票結果は僅差で過半数に及ばなかったが、来年は持続的支持国が過半数になるのも夢ではない。捕獲枠の拡大が実現すれば、北太平洋と合わせた年間捕獲数は1315頭で、商業捕鯨を続けるノルウエーの年間枠797頭の倍近くなる。年次総会には加治屋義人農水政務官を含む衆参両院議員17人が代表団に参加した。私は公務で出席できず残念だった。06年の58総会はカリブ海の独立国セントキッツ・ネービス、07年は米国のアンカレッジで開催されるが、是非出席したいと考えている。

  調査費充当で鯨肉販売

 日本の捕鯨は最盛期だった62年、年間約22万トンの鯨肉が売り出されていたが、IWCは82年に商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)を決め、86年から実施。これで鯨肉が激減したため、日本は87年から南極海のミンククジラの調査捕鯨を始め、94年には北西太平洋のミンククジラ、00年にはニタリクジラなどに拡大した。調査費に充てるため鯨肉を市場で販売している。04年に売り出されたのは、IWCの管理外となっているツチクジラなどの小型捕鯨と調査捕鯨を合わせても約5千トンだ。供給不足でノルウエーからも輸入しているが、鯨肉1キロ当たりの平均卸売価格は国産牛肉を7割近くも上回る約2千円に達し、今や希少価値の贅沢食品。戦後間もない頃、東京・渋谷の「鯨屋」は学生、サラリーマンで賑わい、学校給食にも鯨が多く登板し、牛肉は高嶺の花だった。その牛肉に異変が起き、調査捕鯨のリカバリー・チャンスだ。

  皮肉にも米2例目BSE

 厚労、農水両省は6月24日、内閣府の食品安全委員会に、BSE問題で止まっている米国、カナダ産牛肉の輸入再開の条件を諮問したが、皮肉にもジョハンズ米農務長官は同日、2例目のBSE感染牛を確認したと発表した。03年12月に見つかった1例目の感染牛はカナダ産の輸入牛だったが、今回は米国産牛の初の感染例。これで両国からの輸入は益々難しくなっており、「輸入再開時期がさらに先送りされ、供給不足の状態が長期化する」との見方から、農水省が7月4日に発表した小売価格調査によると、輸入牛肉は上昇傾向にあった。逆に、最大産地の茨城県で鳥インフルエンザが確認されたにも拘わらず、鶏卵は夏場の気温上昇で需要が落ち込み、7週連続値下がりしている。こうした食の不安をよそに、調査捕鯨で年間60頭のミンククジラを捕獲する北海道・釧路では鯨で町おこしが盛ん。ふるさと小包の「安全で身体に優しい、昔懐かしい」赤肉、ベーコン、塩皮の鯨3点セットがよく売れている。函館ではクジラハンバーガーが人気を呼んでいるそうだ。

  鯨料理は日本固有の食文化

 欧米がランプに灯す鯨油確保のために鯨を乱獲してきたのと違って、鯨の食習慣と鯨料理の豊かさは日本古来・固有の文化だ。IWCの管理外の伝統捕鯨地域である和歌山県太地町や千葉県の房総半島などでは、鯨の食習慣が今も残っているが、最近の子供はもとより若者も鯨の嗜好とは縁遠い存在になっているのは大変不幸なことだ。調査捕鯨の拡大で供給が増えれば、価格も下がり鯨ブームが到来する。年次総会が来る度に鯨問題をホームページで取り上げてきたので詳細は省くが、調査捕鯨で鯨資源は乱獲期を上回るほど回復。IWCは南半球のミンククジラを76万1千頭と推定している。むしろ、増えた鯨がサンマ、イワシ、ニシンなど魚類を大量に補食するため、漁類資源が枯渇しつつある。太古の昔なら自然の摂理で、食物連鎖の頂点に立つ鯨と魚類とのバランスは十分に取れていただろう。だが、世界人口が64億人と増えた以上、人類の食卓に魚を提供するには、やはり商業捕鯨の復活で魚の生態系の維持・適正化を計らなければ、益々漁類資源は枯渇する。「日本人は食文化を活かして大いに鯨を食う。その代わり陸上家畜の処理は諸外国にお任せしましょう」といえば、反捕鯨国も目をつぶり、反発を多少は緩めるかも知れない。