北村の政治活動

 103回(6月1日)東シナ海漁業の危機 燃費・ガス田対策要望


 重油高騰に追い打ちをかけるガス田開発――。東シナ海の漁業は危機にさらされている。自民党の東海・黄海沖合漁業問題議員懇話会(会長=久間章生総務会長)は5月18日、党本部で総会を開き、@漁業用重油の価格引き下げなど燃油対策A流通・加工を含む漁価対策と水産物の輸出振興策B「日中暫定措置水域」の天然ガス開発対策――をまとめ、直ちに外務省、資源エネルギー庁など政府に要望した。総会は平成15年2月19日以来2年3カ月ぶり。久間会長、最高顧問の山崎拓・首相補佐官、安倍晋三・幹事長代理、鈴木俊一・元環境相、保利耕輔・元文相ら約20議員のほか、全国の遠洋・底引き網漁業関連団体、魚市場、自治体代表など約90人が出席。事務局次長の私(北村)が司会して約1時間余、活発な討論を行った。久間会長は各界の要望を聞いた後、@漁船も自動車産業と同様に低燃費の開発を進めるべきだA水産物の輸入規制よりも対中国輸出などを促進すべきだB日中ガス田は共同開発で解決するのが望ましい――などと総括した。

  制度整備必要と久間会長

 日中、日韓関係の険悪化は5月1日付のホームページに詳しく載せたので重複を避けるが、来日した中国の呉儀副首相(女性)は23日、小泉首相の靖国神社参拝発言に反発して、非礼にも、中国側の希望で設定した首相との会談をドタキャン(土壇場でキャンセル)し、帰国した。その背景には、中国が日中暫定措置水域で開発を進めている春暁、断橋のガス田での日中対立や日本の国連安保理事国入りを巡る両国の摩擦がある。これらは安全保障上の重要な問題だが、安保もさりながら、ガス田開発と重油高騰が東海・黄海沖合漁業にダブルパンチを与えていることは憂々しき事態だ。懇話会の事務局を預かる私としては早速、漁業団体とともに政府に働きかけ、抜本策を講ずることにした。総会の冒頭、久間会長は「昨年の漁獲量はまあまあで厳しさを脱したかと思っていたが、原油価格の高騰などでやはり厳しい経営環境にある。とくに東海・黄海では中国がガス田開発を始め、日本側も採掘方針を打ち出すなど、皆さんの懸念は多かろうと思う。水産、資源エネルギー庁など制度面での整備が必要と思うので皆さんの話を十分聞いて参考にしたい」と挨拶した。

  沖合漁業の壊滅的危機訴え

 山崎最高顧問は「(政界)第一線に復帰した。水産業を守るために微力を尽くしたい」と述べ、中前章水産庁次長も「厳しい状況にあるが、国民の食の安全と水産物の安定供給のため難局を乗り切りたい。漁業の体質強化を念願にやりたい」とそれぞれ挨拶した。続いて、竹内榮東海・黄海沖合漁業存続対策協議会会長が「西日本の底引き網業者や魚市場など関連団体の代表が多数出席されたが、まずは農林漁業金融公庫資金の借り換え融資制度などが実現したことにお礼を述べたい。東海・黄海沖合漁業は今、燃油高騰が直撃したうえ、中国の天然ガス開発などで壊滅的危機にある。一層の省エネをやっているが、重油が50%を超えて値上がりし、自助努力で克服することは困難だ。これは沖合漁業の崩壊を意味し、日本水産業の存続も危ぶまれ、農水産物の自給率向上も不可能だ。国民への安全・安心な水産物の安定供給は難しく、国民生活に迷惑をかける。対策を講じて欲しい」と沖合漁業の内情を切々と訴えた。

  消費者に漁業衰退のツケ回る

 この後、鳥巣光雄日本遠洋施網漁業協同組合専務理事が、燃油対策など3本柱の対策協要望書を読み上げ、満場一致で採択した。総会で述べられた主な意見は次の通りである。
山田浩一朗長崎県以西底曳網漁協会長 重油が非常に高騰し困っている。2年前の倍だ。日中暫定措置水域にガスの試掘パイプラインができると底引き漁業に支障が出る。
梅野弘幸福岡魚市場社長 3月の福岡西方沖地震で被害を受けたが、市場が50%強使えるようになった。まずお礼を言いたい。卸売り、仲卸し業界を代表するが、西日本の漁業は存続が危ぶまれている。各社は人員削減、経費節約等経営努力をしてきたが、A重油、ガス田開発で経営が圧迫されている。天然資源が乏しい国で(日本のガス田試掘計画は)やむを得ないことだが、これは(沖合漁業にとって)死活問題だ。水産物の自給率を高めることが大事で、漁業の衰退は消費者にもツケが回る。底引き網漁業は貴重で重要な産業だ。消滅させてはならない。民間企業は自助努力しかないが、食の供給の使命を持つ。市場・設備の狭隘化は危機的状況にある。公的に支えてほしい。日本漁業の55%を占める沖合漁業を衰退させてはいけない。継続を心から願っている。

  1次産業共通「3つの何故」

 谷川弥一衆院議員 水産業界は時代の流れに対応していない。国民に本気になってもらうには、もっと効果的に(大会を頻繁に開くなど)行事を続けるしかない。何故魚が捕れないのか、何故捕れても売れないのか。何故売れても安いのか。もう1度、発想の原点に立ち返らなければならない。漁業も(私が引き継いだ)林業も1次産業の物差しは同じだ。
竹内忠正日本遠洋施網漁協組理事 谷川先生が指摘された「安く売れない」何故の理由は食生活が変わったからだ。主婦は包丁を持って刺身を作ろうとせず、回転寿司ではウニ、イクラを注文し、青物を食べなくなった。若者は外食産業に走っている。「捕れても売れない」何故には流通の問題がある。西日本の市場は停滞しているが、最近の中国マーケットは日本水産物の輸入で賑わってきた。ハマチの餌用に冷凍してあった日本のサバが(中国人の食用として)7千箱も大連に輸出された。6月に大連の視察に行くが、中国の胃袋は日本の10倍だ。7千箱はすぐ7万箱になる。漁業不振に燃費高騰のハリケーン。そこへガス田開発と危機が続くが、東シナ海を中国の漁場にしてはいけない。

  漁船に低燃費開発の立ち遅れ

 久間会長の総括 皆さんがそろって上京され、皆さんからの色々な要望を受け止めた。とくにA重油高騰で一番影響を受けるのは皆さんだが、低燃費の開発を進めているトラック、自動車産業に比べ、漁船の対応は立ち後れている。備蓄石油は無い時の備えであって使えないので、燃費の効率化を念頭に操業して欲しい。漁業資源の不足について日中韓の協議では、稚魚を保護するため、小さい目の網使用を止めようと話し合ったが、中国には農水省のような所管官庁がなく人数も少なくて、上海にあるような出先機関に任せているようだ。中国に水産物を輸出できるようになったことはよいことだ。市場経済で1万人に需要があれば日本の人口の10倍だから、やがて輸出も10倍に伸びる。水産物が入るのを拒むのではなく、輸出に切り換えるべきだ。日中ガス田は共同開発で解決するのがよい。漁業被害などが出た場合にどうするかをきちんと両国で取り決めるべきだ。
安倍幹事長代理の締めくくり挨拶  暫定措置水域は海洋法のタック(方針)をしっかり守っているが、ガス田開発は日中双方にプラスになるよう要望に添ってエネルギー庁と話していきたい。

  経営努力超える重油高騰
 
 東海・黄海沖合漁業存続対策協議会がまとめた「危機回避の緊急要望」要旨は次の通り。
【趣旨】東海・黄海の沖合漁業者は、魚市場など関連業界と一体となって地域経済を守り、国民に安全・安心な水産物の安定供給を図るため、新設の「中小漁業経営支援事業」など諸制度の活用と漁業経費の徹底した削減等により、生き残る覚悟で日夜努力を重ねている。しかし、近時の漁業用A重油価格の異常高騰と漁網・漁具等の高騰は、我々の経営努力の範囲を遙かに超えて高騰を続け、その一方でA重油の供給が不足し、日常の漁労活動にも支障が出ており、我々は壊滅の危機に晒されていると言っても過言ではない。
異常な経費増加の一方、養殖漁業の不振に伴う飼料用原漁の需要低迷と配合飼料等の導入による飼料用原漁の需要減少の影響を受け、漁価は著しく下落し、漁業経営の悪化に一段と拍車をかけている。

  ガス開発計画も漁場奪う行為

 さらに、我々の自由操業が認められている「日中暫定措置水域」で、近年、中国の一方的な天然ガス開発により、我々の漁労活動は制限を受けており、断じて許せない。また、我が国でも、天然ガス開発計画が報道されているが、これは唯でさえ厳しい漁業経営を余儀なくされている我々の漁場を奪う行為であり、断じて看過するわけには参らない。
国は水産基本計画で、自給率を10年後10%の向上を目指すことを示しているが、東海・黄海の沖合漁業なくしてその実現は不可能であり、我々東海・黄海の沖合漁業者も自給率向上に貢献すべく意欲を持って努力を重ねている。その実現のためにも、このような漁業者の自助努力だけでは解決できない大変な事態を打破するため、可及的速やかに下記要望事項の実現のため、特段のご高配を賜るようお願いする。

  燃費・漁価・ガス開発対策を
 
 【要望】1.燃油対策  漁業経営が持続できるよう漁業用A重油の価格引き下げ策を早急に講ずる  漁労活動に支障が出ないよう国家備蓄原油の放出等燃油の安定供給対策を確立する  資金繰り改善のため緊急金融措置を講ずる
2.漁価対策  漁価の安定を図るため現行調整補完制度を拡充・強化し、流通・加工も含めた総合対策とするとともに、水産物独自の輸出振興策を講ずる
3.「日中暫定措置水域」の天然ガス開発対策  日本国政府は操業の安全を確保するため、中国が一方的に進めている天然ガス開発現場の情報を早急に開示するよう中国政府に求め、もし開示しないなら事故が発生した場合の責任はすべて中国政府が取るよう交渉して頂きたい  中国が天然ガス開発を行っている海域での漁業損失は未来永劫続くものでありその金額は膨大となる。日本国政府は「日中漁業協定」の締結当事者として中国政府に対し遺失利益の損失補償を行うよう交渉して頂きたい  我が国の天然ガス開発に係る調査・採掘等については、操業安全と漁業権益が損なわれるものであり断固反対する