北村の政治活動

 第101回(5月1日) 波紋描く反日デモ 中韓連携で国連改革阻む
 

 この春以来、中国各地で反日デモが多発し、日中関係がささくれ立ってきた。一時は「チャイナ・リスク」を恐れて株が下落、各国の株式市場にも飛び火するなど、「政冷経熱」から「政経併冷」の事態へ向かった。4月23日にインドネシアのジャカルタで開かれた日中首脳会談は「日中友好関係がアジアの安定、発展に不可欠である」とし、対話を促進することで合意した。しかし、胡錦涛国家主席は、日本のデモ被害に謝罪・補償の意を表するどころか、「日本の歴史や台湾問題のやり方が中国とアジア人民の感情を傷つけた。日本の反省に値する」と5項目の主張を繰り出し、開き直った。反日デモは、3月下旬の廬武鉉鉱韓国大統領演説に触発されたとの見方がある。背景には小泉首相の靖国参拝など歴史認識への批判をテコに、日本の国連安保理常任理事国入りを阻止する中韓両国の狙いがあるようだ。日本マスコミは、中国が急激な経済発展を遂げたものの、国内では貧富の格差が拡大、役人の腐敗など不公正、不公平への庶民の不満が充満し、そのはけ口を求めて反日感情が爆発した――と解説している。そのさなか、日本は民間開発業者に、東シナ海の天然ガス田開発の試掘権付与手続きを開始した。これがまた日中緊張の波浪を高めている。防衛政務官としては、東シナ海でトラブルが発生しないよう注視しつつ、側面から外交を支え、悲願の常任理事国入りを果たしたいと考えている。

 謝罪・賠償に応じない中国

 中国で反日デモが起きたのは、3月2日の四川省成都が皮切り。その後、深せん(1万人)、北京(1万人)、広州(2万人)、上海(数万人)、アモイ(6千人)香港(5千人)、瀋陽(1千人)など8ヶ所で瞭原の火のごとく広がった。北京の日本大使館など在外公館に石やペットボトル、インキ瓶、卵を投げ込んだほか、日本料理店、日系のスーパーなどを破壊した。上海では総領事館に石、煉瓦片などが5千個以上も散乱、日本人留学生が殴られてケガをしている。日本の進出企業は02年段階で1万6千2百社、上海だけでも4千5百社、3万4千人の日本人が働き、中国全土では7〜8万人の日本人が怯えながら暮らしている。町村信孝外相は直ちに王毅駐日大使に厳重抗議し、4月17日に北京で行われた外相会談でも謝罪と誠実、迅速な対応を求めたが、李肇星外相は謝罪・賠償には答えず、逆に小泉首相の靖国参拝や教科諸問題が中国人民の感情を傷つけていると反論した。そして国営の新華社通信は日本の謝罪要求には触れず、逆に町村外相が、日本の過去の対中侵略について、「深く心を痛めており、今一度、反省と謝罪の意を表明」したと、一方的に報じた。

 韓国大統領演説に触発?

 社会主義体制の中国では、「報道は統制されるべきもの」というのが常識のようだが、日中双方の言い分がかくも食い違って報道されたのでは、呆れて開いた口がふさがらない。日本が歴史問題で改めて謝罪したと国民に印象づけることで、対日不満を沈静化させようとする中国当局の意図がこの報道には隠されているようだ。昨年のサッカー・アジア杯での反日行動の激しさや中国原潜の日本領海侵犯事件の真相などは、正確に報道されていない。まして、日本が2千億円をピークにODA(政府開発援助)を多年供与してきたなどは一切知らせていない。だが、一般大衆は実情を知らされない情報ギャップの中で、大都市に普及したインターネットを通じ虚々実々の報道に接しているという。そのアクセス人口は1億人とも言われている。メールで情報を交換し、デモ参加を呼びかければ、たちどころに数万人動員できる態勢のようだ。一連のデモは、韓国の廬大統領が3月1日、日本に対し「過去の謝罪と賠償」に取り組むよう演説したことに、触発されたように思える。

 韓は日米中と等距離外交

 廬大統領はさらに、島根県議会が「竹島の日」制定条例を可決した後の同23日、竹島(韓国名=独島)・歴史教科書問題に対する日本の姿勢や小泉首相の靖国参拝などを批判する談話を発表した。日本では「韓流ブーム」に女性ファンが浮かれているというのに、大統領自らが日韓親善ムードに水を差し、解決済みの補償問題を再燃させるのは何故か。廬大統領は金大中前政権の北朝鮮に優しい「太陽政策」を引き継いできたが、人気が湧かず、政権基盤が揺らいでいると見られている。そこで、韓国民の心に潜在する「日本の朝鮮統治約半世紀の“怨”」を想起させようとしているのだろう。談話発表前の22日には「大韓民国は北東アジアの平和と繁栄のためのバランサー(調整者)になる」と語り、日米と距離を置きつつ中国や北朝鮮に近づく韓国中心の等距離外交に転身する姿勢を強めた。アナン国連事務総長は9月までに国連改革の決着を目指すが、韓国は、尖閣諸島など同じ領土問題を抱える中国のバックアップを得て、日本の国連安保理常任国入りを阻止することに全力を挙げている。

 立党精神の抗日思想

 一方、天安門事件で世界から人権問題を厳しく問われた中国は、江沢民時代に愛国教育に専念、中国共産党の立党の精神である“抗日思想”を徹底的に教え込み、南京事件など日本軍侵略の写真や映像を幼児教育から繰り返し洗脳してきた。その半面、平和憲法を持ち非核3原則を堅持し、戦後60年間戦争に加わらなかった日本の戦後史は一切教えていない。この結果、若者たちは、中国が経済大国へ急速に発展する過程で、日本の優れた製品やブランド、果てはコンビニ文化までがどっと流れ込んだことに反日感情を高めている。朝日新聞は企画「不信の連鎖・きしむ日中韓」を上中下で連載し、その中で中国の学生らの「中国人が日本製品を買えば、日本はその利益でミサイルを作り中国に撃ってくる」「日本はロシアからの石油パイプラインを横取りし、東海(東シナ海)のガス田まで奪おうとしている」などの会話を紹介している。これらの日本に関する生半可な知識は、恐らくインターネットを通じて若者間でメール交換され、反日気分を煽り立てているに違いない。

 「愛国無罪」で警官傍観

 中国は04年に日本を抜いて、米独に次ぐ世界3位の貿易大国にのし上がったものの、輸出の半分以上は日本など外資系企業が担う。ゆえに、外資に対するやっかみと反発が一挙に噴き出し、不買運動が起きている。同時に経済発展は都市部と農村の所得格差を拡大、党幹部の汚職がはびこり、反政府デモが起きても不思議でない情勢。これを「反日デモにすり替えてガス抜きを図った」というのが日本マスコミの指摘だ。現実に警官隊が群衆を日本大使館の方面に案内したと噂され、無法者を検挙しなかったことが、「統制されたデモ」の印象を与えている。中国では文化大革命以来、「造反有理」と「愛国無罪」(国を愛しての行動に罪はない)がデモ参加者のスローガンで、武装警官も投石行為などを傍観し検束を手控えたようだ。

 抗日関連記念日にデモ多発か

 1929年5月に軍閥政府が日本などの一方的な要求に屈したとして大学生が抗議した「5・4運動」、31年7月に日中全面戦争突入の契機となった盧溝橋事件、49年10月に中華人民共和国の成立など、抗日関連の記念日には反日デモが再現されそうだ。といっても3年後には北京五輪、5年後には上海万博の開催が決まっている。サッカー・アジア杯での争乱や反日デモが社会秩序を繰り返し乱すようでは、エントリーを取り消す国が出てくるだろう。国際世論を気にした中国共産党は4月19日、日本への謝罪・賠償を棚上げしたまま、異例の「情勢報告会」を開き、李外相が「無許可デモに参加せず、社会の安定を乱さないように」と呼びかけ、ようやく国内の引き締めを図った。問題なのは、日本が国連60周年の今秋、安保理の常任理事国入りを目指し活発な多数派工作をしているさなか、中韓両国が連携してこれを阻止しよとしていることだ。

 欧米マスコミも中国批判

 欧州連合(EU)では、いったん決めた対中武器禁輸措置の解除を先送りする公算が強まっているが、米ウォールストリート・ジャーナル紙は「先送りの背景には中国での(台湾の独立を規制する)反国家分裂法の制定と並んで反日デモの暴徒化があった」と分析し中国を批判した。仏リベラリオン紙も「中国はアジアと第3世界唯一の常任理事国である立場を維持したいために(反日デモを容認し)、『中国人民の(反日)感情は無視できない』として日本の常任理事国入りに反対する戦略をとった」と報道。英エコノミスト誌は「中国政権は国民の感情を駆り立てて、好ましからざる(常任理事国)新顔(の日本)を阻止しようとしている」と指摘している。このように欧米マスコミも中国批判を始めているが、厄介なのは東シナ海ガス田開発の問題。中国は急激な経済成長を遂げると同時に、米国に次ぐ世界第2の石油消費国に脱皮中。エネルギー不足を補うため日中中間線に近い海域で春暁、断橋の両ガス田開発を進めている。日本は海底探査の結果、両ガス田が日本側に大きく広がっていることを確認。このままではストローで吸い上げるように、日本の資源が奪われてしまうため,開発の中止とデータ提供を求めたが、中国は応じなかった。

 40年留保の試掘権与える

 やむを得ず日本は、日中中間線の日本海側海域に広がるガス田の試掘権を民間会社に与える手続きに入ったが、中国政府は直ちに、「中国の権益と国際関係ルールに対する重大な挑発」と猛反発した。国連海洋法条約は、沿岸国の経済的主権が及ぶ排他的経済水域(EEZ)を沿岸から200海里(約370キロ)と定めている。東シナ海は日中双方がEEZを主張できる海域が重なっているため、日本は同83条の「衡平な解決を達成する」ためとして、重なり合う部分の中間でEEZを分けようと主張している。これに対し中国は、同76,77条で沿岸国の主権的権利を認めている「大陸棚」が伸びている「沖縄トラフ(海底の溝)」までを中国の権利が及ぶ海域と主張している。このように東シナ海の日中境界が確定しなかったため、日本は中国を刺激しないよう民間企業の試掘権申請を約40年も留保してきた。だが、日本側の再三の中止要請に耳を貸さず、中国は「大陸棚自然延長論」を根拠に日本固有領土の尖閣諸島も含む沖縄周辺までを中国領海と主張してガス田開発を進めている。

 東シナ海の安全確保万全に

 中国こそ国際ルール違反だが、日本の海底探査の際に、中国の軍艦が日中中間線付近を航行し、探査船をけん制したという。最近は中国の原潜が日本領海を侵犯したり、調査船が沖ノ鳥島付近の海底資源を調査するなど我がもの顔に振舞っている。民間会社が試掘に入れば、日本政府は作業船の安全確保に万全を期さなければならない。その時は海保巡視船ばかりでなく、海上自衛隊の出動も予想される。民主党は海保巡視船の警備を柱とした法案骨子をまとめたというが、政府・自民党はそれより先に法整備を検討している。中国は日本が試掘手続きを開始したことで、ようやく5月から東シナ海での共同開発の協議に応ずることになった。中国とは一衣帯水の九州選出の代議士として、私は波浪の高まった東シナ海に人一倍深い関心を持つ。公務多忙ながら、日本を取り巻く経済水域の資源開発と平安維持、漁場の確保などについて、党内で積極的に発言していきたいと考えている。