北村の政治活動

 第100回(4月16日) 社会保障改革の協議開始 課題多く難航か

 社会保障見直しを協議する衆参両院合同会議が3月末に設置され、14日から実質的な改革論議がスタートした。今秋までに改革の骨格をまとめ、06年度以降の施策に反映させる。当初は衆参両院の厚生労働委に小委員会を設置する考えだったが、全党参加の「両院合同会議」は、議論を公開し、議事録も作成、関係省庁に資料提出を求めることもできるなど、常任委員会とほぼ同じ機能を持つため、すんなり設置が決まった。これで昨年5月の自民、民主、公明3党合意以来、長く店ざらしとなっていた改革論議はようやく軌道に乗った。まずは年金制度の将来について話し合うが、共産、社民両党も消費税を財源に充てることに反対の立場から議論に積極参加している。年金改革では与野党が制度の一元化、消費税の扱い、納税者番号制などを巡って対立しているうえ、それぞれの党内でも異論を多く抱えている。だが、年金問題は郵政改革以上に国民の関心が高い。私はかつて衆院厚生労働委に在籍しており、年金改革にも情熱を燃やして取り組みたいと考えている。

 秋までに改革案骨子

 社会保障制度全般の見直しに関する与野党協議は、3月9日の自民、民主、公明3党の幹事長・国会対策委員長会談で了承された。3党の一致点は、@まず年金制度の抜本改革の議論を始めるA今秋までに改革案の骨子に関する成案を得るよう取り組むB議論は国会で行うが、政党間の協議機関についても引き続き協議する――というもの。同25日には、さらに【議論の場】として<1>国民に開かれた国会の持つ機能を発揮し、全政党参加による衆参議員の一体的な議論を保障し、集中的に議論を進める<2>衆参両院本会議の決議に基づき、5党議員の参加により設置する<3>国会法に基づく会議と同様に、衆参両院の機能の提供を要請するとともに、政府行政機関の協力についても、国会に対するのと同様の協力を要請する<4>両院会派による「合同会議」とし、両院議長に設置の協力を要請する――の細目で追加合意し、「今秋に方向付け」する決議が両院本会議で採択された。

 「まず年金」首相、岡田氏合意

 昨年の年金改革の3党合意は、自民・公明の与党と民主党が、「年金制度の一元化を含めた社会保障制度の一体的見直し」を約束した。当時の幹事長だった岡田克也同党代表が合意文書にサインしたが、同党のお家の事情で与野党協議が開けないまま約10カ月が経過した。この間、岡田代表は公党の責任を感じてか、昨年秋の臨時国会で@年金制度の一元化A年金財源への消費税活用B納税者番号の検討――の3項目を提案。小泉首相も今国会冒頭の1月末、「(提案のいずれの点も)早急に検討すべきだ」と前向きに応じ、これを契機に与野党協議の展望が開けてきた。首相と岡田代表は国会の応酬を通じて3月1日、「まず年金から議論する」ことを前提に与野党が協議入りすることで一致した。これで空回りを続けていた昨年5月の3党合意は、ようやく動き出したわけだ。与党は当初「年金改革は幅広い分野にまたがるので、国会の場以外に自公民3党の政党間協議が必要」と、幹事長や実務者を加えた協議を主張したが、民主党は「現時点で責任者を入れた(政党間)協議はすぐにOKとはいかない。国会での議論を優先させるべきだ」と訴えて譲らなかった。

 国民の6割が年金優先

 だが、両院合同会議に各党から専門知識を持ったベテラン議員や党幹部が出席すれば、政党間協議の場が一応整う。このため、与党側は常任委の小委員会設置よりも、両院合同会議の方が協議の場にふさわしいとして妥協することになった。過去の両院合同の協議機関を設けた例は、90年6月に消費税見直しなどを協議するために設置した「税制問題等に関する両院合同協議会」など数例がある。与野党が社会保障見直し協議で歩み寄った背景には、最近の各紙世論調査で6割近い国民が年金改革を優先課題に挙げており、4月の衆院統一補選や7月の東京都議選を前に年金改革に消極的な印象を与えるのは良くないとの判断が民主党内で働いたことは否めない。しかし、政府・与党と民主党の主張の違いは大きい。年金制度の一元化では政府・与党が「厚生、共済年金の統合を先行させ、財源は社会保険方式を維持」と主張しているのに対し、民主党は「国民年金を含めた全ての年金を一元化。基礎年金部分は税方式に」と主張している。小泉首相は4月6日の党首討論で「国民年金を含めた一元化は時期が早い。自民党としては厚生年金と共済年金の一元化に向けた案を出したい」と釘を刺した。合同会議は同14日から岡田民主党代表、武部自民、冬柴公明両党幹事長ら各党首脳が出席して実質協議が始まったが、各党は年金一元化などを巡ってバラバラな主張を繰り広げた。

 与野党双方内に異論多発

 消費税では、政府・与党が「社会保障全体への活用を検討し、07年度に税制の抜本改革を行う」としているのに対し、民主党は「基礎年金に充てる年金目的消費税の創設」を唱えている。さらに納税者番号制では、小泉首相が「導入が望ましい」と発言しているが政府・与党内には「自営業者の所得把握が難しい」との慎重論がある。一元化の対象から国民年金を除外したのも、この慎重論が背景にあった。民主党首脳は「番号導入が必要であり一体的な方法は今後検討」と意欲的だが、同党内にも「全ての就労者の所得把握をどう実現するか」との懸念がある。肝腎の与野党協議についても、自民、民主両党内には否定的な意見が根強くある。民主党内には衆院統一選をにらみ、年金問題で与党と対決する姿勢を取るべきだとの反対論があり、小沢一郎副代表らは「選挙戦で与党との違いをアピールすべきだ。同じテーブルに着けば与党に取り込まれてしまう」と警戒感を強めている。

 協議入りでも課題山積

 3月22日の同党両院議員懇談会では、小沢氏に近い若手議員から「協議が失敗したらどう責任を取るのか」などの執行部批判が相次いだという。国民年金の保険料が低額な自営業者らに大幅な負担増を強いてよいのか、などオール年金一元化の具体化を巡っても様々な意見があるようだ。自民党内にも「野党とやれば混乱するだけ。制度改革は政府与党が一体で進めるべきだ」という消極的な厚生労働族議員と積極的グループの双方がある。消費税引き上げについても、公明党には慎重論が多く、与党内では増税の仕方に相違がある。民主党支持団体の連合は「与野党が協力しなければ、抜本改革が遅れる」と民主党の尻を叩いてきたが、このように与党と民主党の溝は深く、与党内部も必ずしも一枚岩ではない。与野党が実質協議に入っても取り組むべき課題は山積している。朝日新聞は4月3日から社会保障シリーズを始め、「07年から人口は減り始め、25年には65歳以上の人の割合が2割から3割近くになる。医療費は2倍以上、介護保険の給付費は4倍に膨らむから、現役世代の負担はぐっと重くなる」と報じた。この中では「厚生年金の保険料は年収の約14%(労使折半)から上がり、17年に18・3%で固定されるが、介護や医療に使われるお金(給付費)は増える見通しのため、20年後は収入の37%が(所得税、住民税、消費税率アップなど)税や(各種社会)保険料に消えることになる」と指摘した。

 国民年金の4割が未払い

 1960年代は現役世代9・5人で高齢者1人を支えていたが、2000年には3・6人で、2025年には1・9人で1人を支えることになる。問題なのは、自営業者や学生らが自ら保険料を支払う国民年金の空洞化だ。年金崩壊の不安もあって、対象者2270万人の4割が未払い状態にある。リストラで増えたパートタイマーや定職、学業、養成訓練に就かないニート(not on education employment training)族にも不払い傾向は目立っている。4月からフリーターなど若年層や単身者を対象に、納付の全額・半額免除や猶予制度が拡充されたが、これは小手先の納付率アップ策でしかない。特定の世代や職域に偏らず、年金を公正に広く薄く負担し、多くの高齢者に公平な給付を行う公平なシステムをどう構築するか。スウェーデンは1990年代初頭の経済危機克服のため、政党の主導で年金改革を成功させた。同国は1991年に、全7党で発足させた協議機関が「国の根幹に関わる問題で国論を二分させない」ことを確認。選挙では年金を争点にしないと約束し、各党から幹事長級の幹部を出して誠実な協議に入った。この結果、現役世代の理解と納得を得るため、「負担に応じた給付を受けることを保証する」との理念をまず固め、6つの基金に分けて運用する年金制度を構築した。

 スウェーデン方式を参考に

 このスウェーデン方式は大いに参考になるが、@所得税の減額面で公的年金等控除の縮小・見直しA国民健保と年金の保険料徴収一元化B共稼ぎや婦女子パートタイマーと専業主婦の年金給付格差是正――など取り組むべき課題は多い。政府税制調査会(石弘光会長)は3月上旬の総会で、年金の負担を税金と保険料でどのように配分するかの議論に入ったが、政府の経済財政諮問会議や財政制度等審議会も、年金関連の消費税論議に備え、税財政見直しの検討に着手した。これらは6月をメドに取りまとめる「財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太方針)」に反映させる。私はこの推移を見守りながら、少子高齢者社会の社会保障制度の在り方について提言していく考えで、目下勉強を続けているところだ。