北村の政治活動

 (平成13年5月1日) 農業者年金基金法改正 参考人に意見質す

 今国会に提出された農協改革2法案(農業協同組合法と農林中央金庫法の一部改正案)、農林・厚生両年金の統合法案、農業者年金基金法改正案は、農家にとって影響の大きい3本柱の法案である。このうち、農協改革2法案は、農業者のメリットを最大に生かして農協改革を進め、来年4月のペイオフ解禁を控えた農協系信用事業を改革する法案。年金統合法案は、両年金統合のため農業・漁業団体職員共済組合法等を廃止する法案だ。

 老後安定と近代化

 農家に最も重要なのが農業者年金基金法の改正。同法は@農業者の老後生活安定A農業経営の近代化B農地保有の合理化――を政策目的として70年に制定された。これまで98万人を対象に総額3兆7千億円の年金を支給、30歳台前半の後継者を中心に約86万件の経営移譲を実現、約157haの農地が細分化されずに後継者に継承されてきた。

 担い手農業者確保

 しかし、農業就業人口の減少、高齢社会の進展、若い担い手の不足で低下する経営移譲率、保険料負担の増高でダウンした保険料収納率などから年金財政の悪化は深刻で、農政上の大問題に直面している。このため、農林水産省が平成12年8月に決定した「農業者年金制度改革」に基づき、食料・農業・農林基本法の理念に照らし、政策目的を農業の「担い手確保」に転換する抜本的改革を行い、政策年金として再構築することにした。

 後継者に政策支援

 改正案は@加入要件を農地の権利名義者から農業従事者に改定A現役世代の保険料を引退世代の年金に充てる従来の「賦課方式」から納付保険料を積立・運用して年金を支払う「積立方式」に変更B認定農業者で青色申告者、経営参画の配偶者・後継者、35歳未満の農業後継者などの保険料は3割を基本に政策支援C受給者の年金を平均9.8%減額、老齢年金は負担ゼロDいかなる世代にも賭け損は生じない措置――などを骨子としている。

 965億5千万円

 農水省は農業者年金に20年間以上加入が見込まれ、認定農業者の用件を充たす者に対する政策支援として平成13年度予算に49億3千3百万円を計上。現行制度では、農業者年金基金の積立金を充当した残余について@改正前の経営移譲年金A改正後の年金給付B現行制度の加入者と待期者に特別脱退一時金――など、年金給付に要する費用の国庫助成として、916億1千6百万円、合計で965億4千9百万円の予算を計上している。

 民主は憲法違反と対抗

 これに対し民主党は「政府案は政策年金といえない。支給額の1割弱カットは財産権の侵害であり憲法違反。高齢者の生活は基礎年金とみどり年金の2階建て体制で確保すべきだ」と主張、国家予算で賄う所得補償政策の対案を提案して対抗した。予算関連のため同法案は国会審議を急ぎ、4月3日の衆院農水委で参考人の意見を聴取、同5日に衆院を通過した。

 参考人意見聴取で質疑

 意見聴取では鎮西みち雄・農業者年金基金理事長、戸波江二・早大法学部教授、中村裕・全農専務理事、信田邦雄・北海道農民連盟委員長の4氏が10分ずつ、所信を述べた。
これに対し、北村誠吾代議士は、民主党が年金額の引き下げを違憲と主張している点について参考人の意向を聞いたうえ、@新制度の立ち上げ方A意見集約の仕方B政策年金として再構築する意義――などをきめ細かく質した。質疑応答の要旨は次の通り。

 北村 農業者年金基金の実施機関の代表者として、これまで制度にかかわった立場から、現状に立ち至った原因と、新制度をどう立ち上げていくか、ご意見を聞きたい。

 鎮西みち雄・農業者年金基金理事長 国の制度設計と管理のもとで制度の実施機関としての責任を持つ私ども「基金」においても、農業者の信頼を基本に、業務受託機関、農業委員会、農協の協力を得て、年金への加入促進対策、保険料の収納促進対策などに最大限の努力をしてきた。しかし、今回抜本的見通しが避けられない事態になったことについては、基金業務を受託し加入促進に尽力された農業委員会、農協の担当者、加入者や受給権者が制度改正の過程で大変苦しい立場に立たされたことを厳しく受け止めている。
 法案が早期成立の暁には、農業者の信頼回復を図りつつ、新制度が円滑に実施できるよう、現行制度からの円滑な移行を中心に準備を進めるのが、私ども実施機関の「基金」、受託機関の責務と認識している。

 北村 農業者の老後所得を確保するための年金が、制度として今後とも必要であるかどうかが大きな論点のひとつだ。農家、農村、農業経営体あるいは農業法人などの意見を集約して積み上げたというが、具体的にはどのようなやり方で意見を取りまとめたか。

 中村裕・全国農業会議所専務理事 平成11年12月に農水省の大綱が出て、これは大変だと、農業委員会、農協、のうねん倶楽部(加入者、受給者の組織)の3組織がそれぞれの現場に下ろして3ヶ月にわたる意見集約をし、12年4月に持ち寄った。さらに3ヶ月かけて行政とも詰めを行ってきた。その中でも農業委員会の意見として、8割が「新しく再構築してくれ」という意見が出て、総会も開いて現場からの責任ある意見としてまとめた。

 北村 とにかく農村の現場で、新制度の実施機関として農業委員会、農業委員が全国に約6万ほど、職員がかれこれ3・5人平均というから、円滑に新制度へ移行するには相当皆さんが努力する体制を整えないとスムーズな移行も難しい。しっかり取り組んでほしい。戸波参考人に尋ねるが、年金額の引き下げは、民主党が主張するように違憲といえるのか。

 戸波江二・早稲田大学法学部教授 結論的には違憲とはいえない。財産権の性質、変更の程度、保障される公益の性質という3つの基準から考えると、基本的には今回の農業者年金の性質は政策年金と考えざるを得ない。特別な農業の保護、維持の観点から国庫助成が行われている。一般の年金と比べて非常に違う。従って政策的に投入された部分の10%について受給者に負担させる選択は政策的にはあり得る。変更の程度では、10%を多いと見るか少ないと見るかの議論があろうが、現在70%で3兆幾らの負担を求めるけれども、3,300億円の負担を受給者に要求することを考えると、それほど多いとはいえない。
昨今の住専などへの公的資金の投入に対する社会的批判を考えると、農業者年金を丸々国庫助成で維持することについての社会的批判を避けるという公益は一応認められる、ということなので,結論的には憲法違反とはいえない。ただ,政策的に,やはりこれは年金で、年金額の切り下げはよほどの合理的理由がなければ許されない。
今回は政策年金として農業の特別な経営のための保護なのだという形の年金として合憲性が辛うじて認められることで、実際の年金がこういう形で行われ、しかも10%の削減がなされるとなると、かなり憲法違反という問題は出てこよう。だから微妙は微妙だ。この農業者年金も年金と見るのか、政策的な農業経営の維持という風に見るのか、かなり大きな分かれ目ではないかと考えている。結論的には、どうもやはり違憲とまではいえない。

 北村 信田参考人は北見の方。流氷の話も聞いたが稲作の北限で長年農業に従事され、多くの仲間の皆さんと大変ご努力を重ね、指導的立場でご活躍と聞き、敬意を表します。  昨年夏以来,北海道農民連盟が、農業者年金制度を新たな政策年金として再構築し、農村地域で老後の生活を定住して営む農業者に対して、新たな定住年金法の制度を整備することを提言していると聞いていたが、直接この場でお言葉を耳に出来た。内容も簡潔に説明されたので今後勉強したい。 ただ、1つ尋ねたいのは、国民年金基金制度、すなわち「みどり年金で農業者の老後生活は十分である。農業者向けの新たな政策年金は要らない」という民主党の主張にどのような感想を持っているか。

 信田邦雄・北海道農民連盟委員長 農業者の私に温かいお言葉を頂き,お礼申し上げたい。
真摯に国民のため北国で頑張っている1人として本当にありがたい。みどり年金はもう施策として出来ており、仲間にも加入している人もいて、年金自体は必要と思っている。
みどり年金はそれなりに価値はあるが、今の農業者年金を後退させず、充実させて本来の目的を達成させて頂きたい。政党の皆さんが様々提案されることに対し、どうこう言う気持ちはさらさらありません。ただし、今日の農業は、米を作る人が8割、その他は何割とか、画一的な農業でなく、様々な形態で知恵を絞って農業を営んでいる。従って様々な年金に個人的な希望で加入する選択肢があってもいいかなと思っている。私どもは、新たな年金でなく、農業者年金として内外ともにきちっと価値のあるもの、国民と平等の受給なり、制度が充実したもので村を守ったり国民のために食糧を安定的に供給する、との意味合いのものを一貫して求めている。再構築というのか、充実というかは様々な取り方があろうかと思う。

 北村 私どもの地域の農業従事者、農業後継者ならびに農業にかかわる者も、法案が1日も早く成立し新制度がスタートすることに大変な期待を寄せている。認定農業士としての資格を得ようと一念発起をした若者もいる。今まで入ることを逡巡していた者も、今度はこれだけ国が国民的理解を得て、新しい抜本的な制度としてスタートするのだから、新規に加入しようとしてもいる。また一方、これまでの加入者がどのように自分たちは移行していくのかという不安も抱いている。政府が参考人の意見をきちっと受け止めるように、我々も訴え、1日も早く新制度がスタートするように進めたい。今日は貴重な意見を拝聴した。